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髙はほら、あの性癖持ちだからさ

 ああ、髙を潰してやりたい。

 俺の気持ちが通じたか、髙は首を振りながら自分のデスクへと歩いていった。

 くすくす笑いの声が漏れているところから、俺の殺気は完全に彼にいなされているようだ、畜生。


「俺の子供だ。親が子供を愛して可愛がるのは当たり前だろう。」


 当たり前の事に一々どうしてこいつらは大騒ぎをするのだろうと、むかつく髙の背に投げつけるように叫ぶと、楊がハハハっと俺を笑い飛ばしてふざけた事ぬかした。


「俺はお前のそういうところが好きだよ。」


「気持ち悪いよ。」


「俺の気持ちを黙って受け取れよ。拒否られた俺が可哀相だろ。」


「いらねぇのを押し付けるなよ。押し付けられた俺が可哀相だろ。」


 俺達の応酬に打ち震えて笑っているらしき男に俺は再び振り返った。

 彼は自分の椅子の背に寄りかかって俺達を楽しそうに眺めているのだ。


「それで、俺をここに引き止めているって、何か俺に話すことがあるのですか?」


 髙は自分の椅子を楊のデスク傍まで引き摺り座ると、俺と楊に耳を貸せという風に手で合図をした。

 犯罪対策課で一番年長で一番経験値の高い髙は、この課でのフィクサーなのだ。


「加瀬に洗わせた九十九つくもの事情が分かりましてね、九十九の作ったオブジェは犯罪に関係なしと完全に破棄されました。表向きはね。」


「表向きに、完全破棄で犯罪に関係なし、としなければならない程の案件だったのか?」


「呪いには刑罰がありませんから仕方が無いでしょう。そう公表しないと面倒が増えそうですしね。九十九は幼少時から霊感少女として有名で、芸能人の主宰する宗教団体とまでもいかないグループで重宝されていた過去があったのですよ。綺麗な子でしたから、子役でドラマにも数本か出演していましたね。彼女の呪いは確実だったとマスコミに流れたら大変でしょう。大騒ぎで報道されて、あの壁に貼られていた写真でまだ死んでいない人物まで恐怖で死んでしまう。」


「全員亡くなっていたのでは?」


「数人生き残っていました。写真の人物特定が面倒でね、かなり損傷があったでしょう。鑑識が写真を復元したら玄人君と彼の親友の早川萌はやかわもえのものもあったのですよ。」


 俺は楊に振り向いた。


「早川萌の結婚が急遽決まったのはそういうことか?」


「それは違うし、結婚が決まったのは八月の話でしょう。時系列を無視するなよ。」


 楊が俺を小馬鹿にするように首を振っているが、「それは」というならば別の理由は確実にあるのだろう。

 判ってはいたが、俺は楊をからかいたい気持ちのほうが大きかった。


「いや、お前を見ていると結婚は罠か呪いなのかねって。」


 残念な事に楊は俺に乗ってこず、そして楊が乗れないほどに早川の結婚の理由は重かったようで、それは髙によってもたらされた。


「可哀相に、彼女の名前を検索ワードに入れると妹の暴行画像が出てくるのですよ。ずいぶん消したのですがね、なかなか。」


「それでクロは親友の結婚話に落ち込んでいたのか。」


「それは違う。」


「お前は知っているのか?」


「うん。ちびに怒られたもの。」


「あいつがお前を?体たらくだと?」


「違ぇよ。っていうか、てめぇが俺をそう思ってんじゃねぇか。さっきからチクチクと嫌がらせしやがって。いじわる姑かよ。表に出ろ、この野郎。」


「かわさん。」


 仕事のある俺はこのまま喧嘩腰の楊と外に出たかったのだが、察しのいい髙によって楊が窘められてしまっただけだった。

 俺は髙に聞こえるような大きな舌打ちをした。


「玄人君は結婚相手の鯰江なまずえが、かわさんの友達だから怒っただけですよ。初恋の相手が奪われたっていうただの焼き餅ですが、涙目で怒る姿が可愛らしかったですね。それで、話を戻しますが。」


「戻さなくていいですよ。」


 俺の思わずの言葉に俺の意図にようやく気が付いたか、楊が嫌らしい笑顔を顔に貼り付けた。

 ああ、ちくしょう!

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