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武本のばあさんに、……俺が馬鹿だった

 玄人の祖父の白波周吉にお伺いを立ててみたが、時間の方が勿体無いという、帰って俺が混乱するだけの電話にしかならなかった。

 そこで俺は玄人の武本の方の祖母、武本咲子へと電話をかけていた。


「え?花房の総力を挙げて錦織を潰せばいいの?」


 相談しようと考えた俺が馬鹿だった。

 俺は咲子にした自分の説明の仕方が悪かったのかと、すぐに自分のコール内容を振り返ったが、電話をかけてしまった自分を責めるべきだと振り返りを止めた。


 日本で五本の指に入る財閥の一つである花房家の令嬢だったババアだ。

 武本物産そのものよりも大金持ちの女なのである。

 力も金も持ったこの人は、単なるデストロイヤーでしかない。


「違います。錦織家と白波家の関係が知りたかっただけです。ご存知ですか?」


 チっと舌打ちして「残念。」という声が聞こえた気がするが、俺は聞こえなかった振りをして流した。


「錦織は応仁の乱も上手く乗り越えて京にずっと居座った一族で、白波はその頃に失敗してヘビ神様の祠と一緒に越後に逃げた一族。一方的に白波家が錦織家を嫌っているわね。」


「今、西暦何年でしたっけ?」


 咲子はウフフと楽しそうに笑い、私が行きましょうか、とまで言い出した。


「今回はお気持ちだけ戴きます。」


 咲子が来たら玄人が海外に連れて行かれる可能性が大である。

 アメリカに連れ込まれて山口と結婚式を挙げさせて喜びそうだと俺は思い立ち、そんな咲子との通話をいそいで終了させた。

 そう、俺は通話を切って、気が付けば膝から崩れ落ちていた。


「玄人の親族はどうしてあんな馬鹿ばっかりなんだ!」


 俺は拳を床に叩き付けた。

 頑張れ俺。

 頑張っている自分へのご褒美と思わず購入した新車に、楊によってゲロ臭い山口を放り込まれた事を思い出して、俺は悲しさが込み上げて涙が零れ落ちそうにもなった。

 新車になんて事をするのだ!

 俺のまっさらなイヴォークに!

 くそう、男の嫉妬は陰湿すぎる。


「百目鬼、ちびの爺さん達はどうだって?」


 楊は建設会社の担当者とモデルハウスの別室にいたが、俺のところに来たということは事情聴取が済んだらしい。

 期待に目を輝かせる男に期待通りの情報を与えた。


「なんの役にも立たなかったさ。」


 ぶふっと噴出した楊はひとしきりむせるほどに笑った後に、彼は真面目な顔をつくり、俺と同じ事を考えていた事を窺がわせた。


「呪いは大丈夫なのか?」


「無いってさ。白波の爺さんによると、クロへの呪いなど無いからこっちで踏ん張れとさ。クロに任せれば良いともね。」


「錦織がニシキヘビってのは。」


「武本の婆さんによると、錦織と白波は応仁の乱からの確執があるだけだと。それも、白波の方が一方的に恨んでいるんだってさ。イギリス人がフランス人をカエルって罵っていたのと同じだろ。白波が自分達を白蛇一族と自称しているからこそのニシキヘビ、なのかね。今度はお前が電話してくれよ。なんだか宇宙人と交信している気がしてくるからね。」


「白波の周吉さんは、皺が少なくてつるっとして目が大きいからさ、確かに宇宙人みたいだよね。」


 楊の茶々に俺も一緒に笑い返す。


「それで、おまえらの事件はどうなんだ?」


「遺体への殴り方や切り口から、英明の犯人と一緒かね。純然たる衝動殺人。ちゃんと照合した鑑定結果はまだ出ていないけどね。俺の刑事の目ではたぶん同一犯だ。被害者同士は繋がりはなさそうだけど、お前達という繋ぎが入ると繋がってしまう。身辺に気をつけろよ。」

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