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そんなことしてたのって言われたね

 死体の吊り上げは試行錯誤の末に成功した。

 やってみれば割合と簡単だった。


 まずは一本のロープの端と端に死体を縛る。

 そのロープは電柱のぶら下げる位置に一巻きだけして巻いたところにもう一本の輪にしたロープをひっかけておくのだ。


 車で引っ張るのはこの輪のロープの方だ。

 死体が上がりきったら死体のある辺りを別のロープで縛って固定だ。

 現場は死体を針金で固定してあったそうなので、ロープを固定した後は針金の無駄な長さの部分を切って固定場所に括りつけてお終いだろう。


「一人じゃ無理だし、女じゃ無理だね。」


 固定作業は一人で出来たが、レスキュー隊員のような高い所での作業が出来る人でなければ、自分が落ちないで縄を固定することは難しいと解った。

 一応水野が試した上での結果である。


「みっちゃんが上がるのですか。」


「当たり前じゃん。さっちゃん高いところ駄目な子でしょ。何のために私がこんな格好をしていると思っていたの。」


 フリーダムな人だから、なんて、口が裂けても言えない。

 水野はささっと登って行ったが、実際にポール上で自分の体重を支えながらの作業は危険極まりなかった。

 水野をフォローするレスキュー隊員二人と高所が平気な彼女は楽しんでいたが、上を見上げる僕と佐藤は手を握り合って怯えていた。


「わかったから、みっちゃん降りて。君はそこまで!」


 楊はさっさと水野に白旗を揚げた。


「それじゃあ、友君!」


 水野の代りにカメラを回していたスーツ姿の葉山は目に見えてがっくりして、それでも登って、彼は事件現場と同じ針金を使用して括りつけに成功した。


「かなり力が要りますね。」


 その結果から最低でも男は犯罪現場にいただろうと結論づけた。


「ですが、あの時間は明るかったから、よく人に見咎められなかったですよね。こんな事をしていれば、簡単に見つかって大騒ぎでしたでしょうに。」


 当たり前の佐藤の言葉に、葉山も楊も「あぁ。」と頭を押さえて座り込んだ。


「そういえばあったじゃん、書類に電気会社の工事で通行止めって。俺読んだよ、その報告。」


「ありました、近隣の聞き込みで電気会社の工事があそこであったってありました。」


 二人に対して勲小隊長がつっこんだ。


「もしかして、この実験意味なくない?」


 はしご車使って上に上げればお終いだ。


「あぁ、葉山のせいで無駄な時間を使っちゃったよ。四回も試行錯誤の上でのコレよ!」

「かわさんだってノリノリだったじゃないですか!」


 楊と葉山は嘆きながらもお互いを責めあって、水野がニヤニヤしながら馬鹿二人をビデオに納めていた。

 やっぱり最強フリーダムだと僕は彼女を再認識した次第である。



「え?みなさんそんな事をしていたのですか?」


 新人マッキーは僕達から実験の話を聞いて、かなり呆れ返っていた。

 彼は地道に電力会社の工事記録を漁っていたそうである。


「凄いじゃん。マッキーはさすがのホープね。」


 水野の本性をまだ知らない加瀬は、癒し系の美女に褒められてぽっと頬を赤く染めた。


「近隣の電力会社はどれも工事発注がなかったので、近隣の高所工事用車両を保有している会社のレンタル記録か盗難届けを漁りましたら、事件の一番近場にある会社の高所工事用車両が盗まれていた事がわかりました。」


「盗難届けはなかったんだよね。」


 葉山の言葉に加瀬はスマートフォンの画像を葉山に見せた。


「気づかないうちにってよくあるじゃないですか。勝手に使われた可能性を見て、訪問した会社の高所作業車を全部見せてもらったんですよ。それで、これです。」


 加瀬がさらした画像には、バケットの汚れた高所作業車が写っていた。


「土曜日に会社に入った人の名簿が此方で、監視カメラ映像のデータが此方です。それで、この車両は今現在警察にて鑑識が作業中です。」


 凄いな。

 加瀬はなぜこんなところに来ているのだろう。

 ここは島流れ署の掃き溜めらしいぞ。

 そして、一般人の僕がここに居座っても誰も文句を言わないのはなぜだろう。


「え、どうしてオカマがここにいるの?あんた一般人でしょ。」


 ありがとう、やっぱり僕はあなたを嫌いになれない。

 だが、一日で全員に嫌われるを実行成功したらしい猛者の藤枝の登場に、良い人ばかりだった楊の課の空気がトゲトゲしいものに変わった。


「今さ、事件の報告会なんだけど、あんたは何か報告あるの?それからクロはうちのちびで事件被害者だから警護中なんだよ。」


 姐さん水野が先鋒に立った。

 藤枝はハっと鼻で笑うとドンと仁王立ちした。


「パクリって犯罪って知っている?」


「何よ、急に。」


「ここに、コピー商品をばら撒いて喜んでいる馬鹿がいます!」


 藤枝は芝居がかったポーズを取って、僕を弾劾すべく指さした。

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