表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/31

1-18 出立

 昨夜は宿に戻り安堵した表情のチファ、ウェズリー、シュラット、どこからか情報を仕入れていたのか呆れ顔のマールに顛末をざっと説明し、すぐに寝た。

 翌日、朝のうちに出立する予定だったのだが蛇の解体に少し時間がかかるということで昼過ぎにセントを出ることとなった。


「俺は買い物や素材の受け取りに行くか。……そういやウェズリー、防具は結局どうしたんだ?」

「胸当てとか軽量級の装備を買ったよ。僕は胴当てや盾も買ったからすっからかんだ」

「そうか。今回手に入った魔物の素材で防具を作ってもいいけどどうする?」

「えっ、本当に!? ……いや、でもやめておくよ」

「いいのか? 人脈や運だって実力のうちだ。使える物は使うのが合理的だと思うが」

「すごくありがたいし、貰っておくのが賢い選択だと思うけどさ。僕は実力がほしくてサイカについて行くんだ。実力不相応の良い防具を着けてたら気が抜けちゃいそうだ。防具頼りの戦闘をするようになっちゃいそうだし」

「そっか。まあ必要になったら言ってくれ」


 ウェズリーの言うことにも一理ある。自動車でも保険があるから事故っても大丈夫と考えてしまう人がいると聞いたことがある。似たような話だろう。


「それはそうと、チファとシュラットはどうしたんだ?」


 朝食を軽く食べた後、シュラットとチファの姿が見えないのだ。

 ウェズリーもマールも心配してない様子だから何か話を聞いていると思うのだが。


「シュラットは僕と違って軽装で済ませたから、ちょっとだけ収入があったんだよ。それで遊びに行ってるよ」

「ほう、それはもしやチファを誘ってかね?」

「そうそう。僕も絵の具を買いたかったな」

「ならば絵の具は買ってやるから話を続けようか。シュラットはどんな感じでチファを誘ったのかね?」

「話し方が変じゃない? どんな感じって言ってもな。……普通に『ちょっと稼いだし遊びにいかねー』って言ってたよ」

「ほうほう。ならばチファの反応はどうだったかね」

「普通に喜んでたけど。旅に必要なものを買いそろえてる時に良さそうな店を見つけたからそこに行きたいって」

「ほうほうほほう……」

「サイカ、悪魔みたいな顔になってるよ」


 自分の口角がキリキリと上がっていくのが分かる。

 シュラットがフォルトで兵士をしていた理由は家に居づらかったらしい。だが、きっかけになったのはチファが村を出たこと。そしてウェズリーと一緒にではなく二人で出かけたこと。

 尾行したい。尾行してシュラットをすごく冷やかしたい。

 いやそれはいけない。大人としていけない。組合で調べ物もしたいところだし。


「くっ、仕方ない。俺はおとなしく組合に行こう。シュラットたちに出くわすかもしれないけど、それは不慮の事故だから仕方ない」

「ここで口に出してるくらいだから不慮って言わないと思う。、あと、意図してのことを事故って言うのもおかしいと思う」


 ウェズリーの冷静なつっこみはスルー。気になるんだから仕方ない。


「あ、こっちにいたんだ」


 宿を出ようと立ち上がったところでマールがドアを開けて入ってきた。

 マールは片手に巾着をぶら下げていた。


「サイカ、これ服を買った残り。昨日は帰ってすぐに寝てたから返すの遅れちゃった」

「結構残ってるな。もっといろいろ買ってもよかったのに」

「普通は金貨一枚分も買い物なんてしないからね? 昨日だってお店の人にびっくりされたし。私だってむき身の金貨を投げ渡されて怖かったからね?」


 袋にはじゃらじゃら銀貨や銅貨が入っていた。金貨半枚分くらいだろうか。

体感的に金貨一枚と言うと日本円で十万円くらいの価値だと思っている。洋服を数着買えばそれくらい行くものかと思っていたが、そうとも限らないらしい。

 どたばたして忘れていたが、昨日はチファとマールが服選びをしていた。きっといろいろ試着したりもしたのだろう。それを見損ねたことが蛇討伐における最大の損害かもしれない。

 ……そのうち、旅用じゃない服を買いに連れて行って選んでもらおう。そうしよう。


「ちなみにマール、今日は何か予定とかある?」

「? ないけど」

「じゃあ、絵の具売ってるお店とか知ってる?」

「買ったことはないけど、売ってそうなお店に心当たりならあるよ」

「よし、そしたらウェズリーの案内を頼みたい。報酬は絵の具の購入資金含めてこれ全部で。どう?」

「ヒっ、サイカ!?」

「私はいいけど、ちょっと昨日から大盤振る舞い過ぎない?」


 受け取った巾着をそのまま返すとウェズリーはびっくりし、マールにたしなめられた。

 俺自身、日本にいた頃ならこんなにほいほい金なんて使わなかった。気持ちは分かる。

 だが、ここは日本ではないし俺は学生でもないのである。


「金には困ってないし、ウェズリーにはなんだかんだ世話になってるからな。ちょっとした礼だと思ってくれ」

「い、いや、正直ありがたいけど、サイカが悪目立ちしたりする気がするんだけど!?」

「そこは気にしなくて良い。蛇の討伐報酬めっちゃよかったから」


 蛇の討伐報酬は金貨で三十枚であった。半分をリニッドが持っていくといっても俺の手元に十五枚残る。

 そして俺は装備の損耗ゼロ。蛇を探す時間も交通費もかかっていない。消耗品も使わなかった。つまり金貨十五枚は純収入である。この上さらに蛇の素材を売却して得る利益もある。

 多少羽振りをよくした程度で怪しまれることはない。


「マールにも世話になってるし、ついでに二人でお茶でもするのがいいんじゃないかな」

「……って言ってるけどどうする? ウェズリー君」

「…………ありがとうサイカ。練習したいし、画材買うよ。でもいつか返すから」


 ウェズリーは歯を食いしばって考え込んでいたが、最終的に受け取った。


「じゃあ絵で成功したらなんかうまい物でもおごってくれよ」

「うん、絶対だ」


 言ってから気付いた。

 さすがに一年もしないうちにウェズリーが大成するなんて考えづらい。

 ウェズリーの夢が叶う頃にはもう、俺はこの世界にいないつもりなわけで。うまい物をおごってもらうということは俺が帰れていない状況なわけで。

 約束が叶っても叶わなくても切ないことになる。

 ひとりだけちょっとしんみりして、素材を受け取るべく宿を出た。


―――


「これが蛇の背側の表皮だ。鱗が頑丈だし皮鎧にはもってこいだろう。こっちが腹側の表皮な。強度は落ちるがその分柔軟で加工しやすい。鎧にするには心許ないが、服とかに使うならこっちだろうな」


 さっそく皮職人の加工場へ向かうと、目をぎらぎらと血走らせた男が案内をしてくれた。

 皮の加工だけでなく獲物の解体まで請け負っているそうで、昨日持ち込んだばかりの黒刃蛇をもうバラしてくれたらしい。おそろく徹夜したのだろうが、本人は珍しいものをさばけたとご満悦なので問題はないと思う。目つき怖いけど。

 皮や牙を解体した上に防腐処理までしてくれているのだから恐れ入る。報酬は蛇の素材をいくらか融通すればいいとのことだったので安上がりだ。作業を急いでくれたお礼を兼ねて素材は大目に譲ろうと思う。

 解体の結果、得られた素材は牙と皮、骨と刃尾の四種類だった。

 牙は鏃、皮と刃尾は言うに及ばず、骨は軽量かつ頑丈なので盾の骨組みなどに使えるそうだ。

内臓は食性などを調べるらしく組合が買っていった。肉はくさみがひどい上に細かい骨が入っているため食用には適さない。組合に内臓の代金をそのまま返す代わりに肉の処分を依頼した。


「……それにしても多いな、特に皮」

「獲物がでかかったからな。その上魔法で焼かれてもいないからほぼ全身綺麗な状態だった。これほどバラしがいのある獲物は久しぶりだったぜ」


 牙と骨はいい。素材として使えそうなサイズのものはさほど多くない。

 問題は皮と刃尾だ。体が長いだけあって皮も多い。そして刃尾はでかい、硬い、重いとシンプルに邪魔。

 リニッドに渡すことになっている素材は皮と骨。必要な分は確保している。あとは俺の取り分をどれだけ持って、どれだけ売るか。

 刃尾は売っ払っちまうか。研ぎ出して剣にすれば即ち業物、みたいな話を聞いたが太刀より鋭い訳でもない。討伐者サイカとして手に入れた武器ならおおっぴらに使えるというメリットはあるが、そもそも他の討伐者と組んで戦うつもりはない。

 皮はリニッドに渡す分、自分用にいくらかとっておけばあとは売却でいいだろう。ウェズリーとシュラットの防具を作る分も、自分用を大目にとっておけば足りるはずだ。

 結局素材の大半は売却した。持ち歩くには量が多過ぎたのだ。皮は予備を考えるともう少し持っていきたかったが、売る量があまり少ないと魔法の袋を持っていると露見してしまう危険がある。そのうち荷車でも買うか。


「ところでこの皮ってどういう防具にするのがいいんだ?」

「調べてなかったのか?」

「なにぶん狙って討伐した獲物じゃないもので。鎧とかに使えるって話は聞いてるんだけど、他の用途は知らないんだ」

「なるほどな。見たとこお前さん、重装備は使わないな? 手甲、腕甲くらいなら動きの邪魔にもならないだろう。なんなら一式作って試しに使ってみればいいんじゃねえか? 鎧っつっても実際は胴当てや胸当ての集合体くらいに考えればいい。いらない部位は売却ってのもありだ」


 確かに鎧と言うと頭から足まで覆うものを想像してしまうが、頭なら兜とかの装備品の集合体なのだろう。

 とりあえず作ってみて試すのもいいか。


「なるほど。ちなみに旅するのにあったらいい装備とかある?」

「おれは旅したことはないからな……防具とは違うがクロークとかは旅人によく売れるな」

「クロークか」


 確か袖のない足先まで覆うマントみたいなもののはず。マントとの具体的な違いは知らない。

 柔軟性があり頑丈な黒刃蛇の皮は素材として適していそうだ。


「防具はともかくクロークならウチでも作ってやれるぞ?」

「マジか。……でも悪い、もうセントを出る予定なんだ」

「そりゃ残念だ」

「ちなみに知ってたらでいいんだけどさ。次はヒュレの街へ行く予定なんだけど、そこに知り合いの職人とかいない?」

「いるな、魔物の素材を扱う専門家がいる。テイニンってやつだ」

「……図々しい話だけど、紹介状とか書いてもらえません?」

「紹介状とか無くても普通に依頼すれば普通に引き受けるやつだよ。どうしても気になるなら納品書を皮と一緒に持ってけ。まあ、持ってったところで加工した店が分かるだけだろうが」


 ファンタジーのお約束『依頼人を選ぶ頑固職人』ではないらしい。

 礼を言って提示された報酬より大目に素材を譲り渡したところ「分かってるじゃねえか」と肩を叩かれ、テイニンという職人のいる工房の地図を簡単に書いてくれた。


―――


「つーわけでこれがお前の取り分な」


 組合で待ち合わせていたリニッドに蛇の骨と皮を渡す。

 どしゃっと渡した革袋は大人の一抱えほどの大きさがあった。


「お、おう……本当にこれ全部もらっていいんだな? あとで返せって言っても返さないからな?」

「いいよ。素材はそれこそ売るほどあったし」


 リニッドに渡した素材は全体の二割程度。三割ほど俺が貰ってあとは売り払った。

 蛇一匹で一財産。これじゃあ討伐者はろくに働かなくなるんじゃないかと思ったが、普通は攻撃魔法で焼いたり凍らせたり、全身刻んで失血させたりするので素材として使える部分が少ないらしい。


「そうか。それにしてもうらやましいな」

「うらやましい?」

「ああ、黒刃蛇の刃尾もかなり綺麗な状態で手に入っただろ? そうそう出回る素材じゃないし、刃尾から研ぎ出した剣なんてそれこそ上位の討伐者しか――」

「売ったけど」

「は?」

「刃尾ならまるごと売ったけど」

「はああああああああああああああああああ!?」


 リニッドの絶叫が組合に響き渡った。普通に飲み食いしていた探索者たちも組合の職員も揃ってこっちを見た。

 しかし当のリニッドは気付いた様子もなく気色ばんで身を乗り出してきた。


「売った!? ほぼ完品の刃尾を売った!? 正気かおまえ!?」

「いやだってでかくて重くて邪魔だし。リニッドもほしいって言わなかったし」

「お前が取ると思ったからだよ! つうか邪魔ってはあああああ!?」

「声でかいツバ飛んでる……」


 具現化錬気でそっとツバをガードしていると討伐者の男がわりとダッシュで組合を飛び出すのが見えた。


「刃尾を買いにいったのかな」

「!?」


 リニッドが殺気立って組合の出入り口を睨んだ。


「落ち着け。解体を依頼した店はこれだから。今なら総当たりの連中よりお前のが早く買いに行けるだろ」

「そっ、そうだな。サイカ、いろいろありがとうな。じゃあな!」


 袋に書いてあった解体した店の名前を見せると別れの挨拶もそこそこにリニッドは全力ダッシュで組合を飛び出した。蛇の皮も置きっ放しだ。

 そういえばセントを出ることも話していない。だからこんな雑なお別れだったのだ。そういうことにしておこう。そうじゃないとちょっと切ないし。

 リニッドが置いていった素材はどうしよう。このままほったらかしておけば盗まれる気がする。組合の人に預けておこうか。


「ようサイカ、いきなり活躍しているみたいだな」


 ついでに組合関係者の人らに挨拶でもしておこうかと思って一息ついていると、聞き覚えのある声がした。

 レナードだ。組合に紹介してもらって以降は話す機会がなかった。最後に話して一週間ほどしか経っていないはずだが、妙に懐かしく感じる。


「レナード、ひさしぶり」

「おう、久々だな。調子が良さそうでなによりだ」

「おかげさまで。レナードの方はどうだ?」

「おれはぼちぼちだな。ひとまずの住処も決まって家具見繕って軍の手続きも済ませて、ようやく人心地ついたところだ。書類がどうこう契約がなんだって慣れないことをすると疲れるな、やっぱ。……それはそうと昨日は強い魔物を仕留めたんだって? この袋はその素材か?」

「黒刃蛇の皮とかだよ」

「ほう、黒刃蛇。また大物を狩ったもんだ。……まさかひとりで?」

「仕留めた時はリニッドとふたりだった。トドメを刺したのだってリニッドだ」

「あいつもやるようになったんだなァ」


 レナードが遠い目をしながらしみじみとつぶやいた。知り合いらしい。

 飲み物を頼んでしばらく益体もない話をした。揃って飲み終えたところで雑談が途切れた。


「今日までお世話になりました。ありがとうございました」


 座りながらではあるが、深く頭を下げた。

 思えばフォルトの街でも俺と兵士の潤滑油のようなことをしてくれていた。ウェズリーとシュラットに目をかけてくれた。セントでは組合に紹介してくれた。

 目立たないところで結構助けてもらっていた。きっと気付かないところでも助けられていたりするのだろう。


「頭ぁ上げてくれ。おれだって借りを返すつもりでやったことだ。そんな大仰に感謝されるようなこと、しちゃいない」

「俺、レナードに貸しなんてあったっけ?」

「あるよ。最初にシノミヤと戦った時とか、フォルトから逃げる時間稼ぎをしてくれたこととか」

「あー」


 心当たりがないこともない。とはいえレナードが借りと思っていることはいずれも俺が自分の都合でやったことなので、こちらこそ借りと思われることに違和感がある。

 それを言い出すとお互い終わらない頭の下げっこをすることになりそうなので言わないが。


「……そんなことを言い出すってことはそろそろセントから出て行くのか?」

「今日出て行くつもり」

「そうか。紹介した身としては、もっといろいろ世話焼くべきだったんだが……悪いな」

「気にしないでください。リニッドにいろいろ教わったし。レナードも忙しかっただろ。俺だって分からないことを自分で調べることもできないほどガキじゃないっすよ」

「ま、そうだな。お前ならたいがいどこでもうまくやれるだろうな。その本も何か調べているのか?」


 リニッドが来るより早く組合に到着したので、支部長に挨拶したり資料室で本を借りて調べ物をしたりしていたのである。レナードはその小さな図鑑をめざとく見つけていた。


「ええ、少し薬草について」

「……あんまり毒物に手を出すのは勧められんぞ?」

「薬草って言ったでしょう。なんで真っ先に毒物のことを注意するんだよ」

「いやまあ……サイカだし」


 俺だからとは何なのか。問い詰めたい気分になった。


「まあ、ちょうどいいか。知ってたら教えてほしいんだけど。希少性が高くてセントの魔物の領域の奥でしか採れないような植物って何かある?」

「……密猟は駄目だぞ」

「おい待てアンタ俺をなんだと思ってるんだ」


 毒草やら密猟やらいったいどんなイメージを持たれているのか。

 問い詰めようとするとレナードは慌てた様子で植物に心当たりがあると言った。

 ……明らかに誤魔化そうとしているが、情報が優先だ。


「セントの森で採れる薬草と言えばシラユキソウが有名だな。皮膚の炎症とかに効くんだが、美容にもいいとかで貴族が大量に買ってくから品薄だ。あとは深層に生えてるメイジュの種だな。飲むと疲労や魔力が回復して、病気も治しちまうらしい。こっちは量が少ない上に採取難度も高いからなおのこと珍しい」

「へえ……」


 どちらも図鑑を探すと載っていた。シラユキソウはセインから貰って売った薬草のリストに入っていたはずだ。


「最近じゃトウカあたりも品薄だ。そこまで珍しい植物でもないんだが、戦争関係で需要が上がっててあんまり見なくなった。深層に行けばまだ生えてるかもしれない」

「単純に珍しいだけじゃなくて、需要があるから珍しくなるものもあるんだな」

「おれが知ってるのはこんなところだ。詳しいことなら摘み師か組合の買い取り担当に聞くといい」

「分かった。助かったよ」


 レナードと話していると思っていたより時間が経ってしまっていた。そろそろ出発の時間だ。


「それじゃあ俺はそろそろ出るよ。レナードも元気で。奥さんとお子さんの体調にも気を付けてな」

「お前こそ元気にやれよ。お前は必要と判断したら無茶も平気でするけど、失敗したって生きてりゃわりと取り戻せる。あんまり思い切りよくなりすぎないようにな」

「肝に銘じとくよ」


 笑って席を立つ。

 いつの間にか手近な椅子の上に追いやられていた蛇の皮が目に付いた。


「悪いけどさ、知り合いならリニッドに素材を渡しておいてもらないかな」

「お安いご用だ」

「ありがとう。それじゃあまた」

「おう、またな」


 笑って手を振るレナードに見送られ、組合を出た。

 さて、次行く街はどんなところだろうか。

 便りが無いのは良い便りと言う。レナードに便りを出せるほど話題になりそうな事態に直面しないで済むといい。サイカの推薦者がレナードになっている以上、俺がもめ事を起こせばレナードに累が及んでしまうだろうし。

 やばそうなことになったら――いや、なりそうな気配を感じたら即刻ケツまくって逃げよう。

 これはレナードが言ったような悪い方の思い切りの良さではないはずだ。

 わりと後ろ向きな決意と共に普通の手続きを踏んで俺たちはセントをあとにした。









 ……余談ではあるが。

 組合から出ると同時に、資料室で借りた本を持ち出してしまったことに気付き慌てて組合に戻ったことは言うまでもない。

 レナードにめっちゃ笑われた。


ひとまず第一章、説明編はおしまいです。あとストックが尽きました。

今後、おまけを2話くらいあげる予定です。

そこから先は未定です。二月中旬くらいから時間が取れるようになると思うので、二章以降は三月くらいから上げ始めることができたらいいなーと思います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ