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第50話
丘の向こうから降りてくる人型の人物が目に留まった。
距離としては、性別がどちらか分からないぐらいで親指サイズの大きさ。だったのだが、そのサイズの肥大化スピードが信じられないことから獣人であることだけは間違いなかった。
その少年か少女か、定かではない者が発した言葉は健吾には微かにしか捉えることができず、確実に明瞭にとらえた2人は険しい表情をしたままその一点を見つめる。
その瞳に映る事実が分からぬ健吾はとにかく息を止めて、張り詰めた緊張に付きそうことしかできなかった。
そして、その声は精一杯の声量を乗せて届けられた。
「ダメだ…っ! お―――」
不自然なまでに、音が途切れた。
瞬間、黒い霧がそのものの周りに立ち込めて、明らか100m以上ある距離からも鮮明に聞こえる嫌な金切り音とともに体を包みこむ。
その霧が現れたのは突然。だが、消えるのも誰かの吐息が吹きかけられたかのように消え去った。
「―――…」
突然の事象に言葉も出ない健吾は、ただただ正面の景色から視線を動かせなかった。
それは、あまりに自分の見解の中で見たことない光景であったのと、人が突然消えるという現象に背筋が凍る。
「――――あれは、ポン…だったよな?」
「う、うん…。ただ―――」




