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異世界で村人A  作者: キリン衛門
地下世界編
28/51

第27話『俺っちの名はリッキー』

 俺っちはこの世界が大っ嫌いだ。


 体に大きい小さいがあるし、強いのかどうかも生まれつき決まる。

 強い魔法が使えるのかも、イケメンなのかどうかも生まれつきだ!


 他にも言葉が通じないし、性別はある、種族がある。


 違いだらけで、不平等だらけで、この世界が大嫌いだ。


 だから俺っちは憎んだ。


 何もくれなかった神様を。

 一人ぼっちにした皆を。

 何も出来ない俺っちを。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 俺っちの名前はリッキー。


 お家はとうの昔になくなり、両親も小さい頃に食べられちまった。

 親の記憶は曖昧だけど残ってて、とにかく優しい2人だった。


 お父さんの口癖は友達を大事にする事と、直ぐに逃げること。

 お母さんの口癖は元気でいること。


 とにかく、笑顔の毎日を、生き延びる事を教えてくれた2人だった。



 ········2人の最後はよく覚えてる。

 俺っちには、とても悲しくて、とても気に入らなかった思い出だから。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 その時は、いつもの如く3人で仲良く寝ていた。

 とても寒い時期だったけど、お父さんとお母さんが俺っちを突っ込むように寝てくれてとても暖かった。


 俺っちは幸せだった。

 決して楽な生活じゃないし、大変なことも多いけれど2人がいればなんてことは無かった。


 けれど、幸せな時間は簡単に崩れさるものだと初めて思い知らされた。


 寒い時期もあって、お腹が空いていんだと思う。

 綺麗な星空が見える世界で、唐突に大きく白い丸が覗いた。


 それは、いつもお父さんとお母さんが危ないと言っていたイタチ顔のルカーゥ種だった。


 1番近くにいたお母さんは一瞬にして引っ張りだされて、姿が見えなくなった。


 長い悲鳴が聞こえたのは今でも覚えている。


 その時、咄嗟にお父さんは俺っちに『逃げる』ように叫んだ。


 俺っちは嫌だった。


 けど、ルカーゥ種の目がまたこっちを覗く前に、俺っちは外に放り投げられた。


 落下途中で見えた景色は、自分よりも何倍も体が大きいルカーゥ種に飛びかかる父の姿。


 俺っちは気に入らなかった。


 だって、直ぐに逃げることを教えたのはお父さんだったではないか。

 あの時、一緒に逃げればよかったではないか。


 そしたら、俺っちは一人ぼっちにならなかった。



 一人ぼっちにならなかったーーーーー




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 それからは、惨めで孤独な毎日だった。

 天敵に見つからないように身を隠し、巣がないために落ち葉や木々の間に身を潜め、毎日のご飯を手に入れるだけで精一杯の毎日だった。


 だが、勿論見つかることもあるし、木の実なんかは高い位置にある上、飛行力の甘さゆえに届かないことがあった。

 その時に逃げの術で『フラッシュ』、小さな枝を折る為に『サイコキネシス』を覚えた。


 そんな日々が続いて、約3年。


 それなりに成長して、生活に余裕が出てきて巣作りを独学で行っている時、ある出会いを果たす。


 それは、大きく毛むくじゃらで、身体が自分よりも一回りも二回りも大きいモンスターとの出会いだった。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「っ!!」


 リッキーは即座にフラッシュを使った。

 それは、思考よりも先に行った防衛本能。


 今までの経験と恐怖が形となって現れた瞬間だった。


 お得意の目くらましは毛むくじゃらのモンスターに命中。

 悲鳴をあげて、もがいてる辺り目の前が真っ白になる不思議体験中だろう。


 逃げるチャンスは今。

 そう思い立ってリッキーは、即座に翼を広げて飛び立つ為の構えをする。


 だが、その時に今までに聞いたことない悲鳴が聞こえた。

 その声に生気がないというか、迫力がないというか、なんというか········


「うわぁぁあぁあぁっ?!? なんだこれぇ、なんだこれぇ!! 何も見えない、見えないよぅ!!」


 あまりに卑屈すぎて、恐れよりも驚きが増した。


 リッキーにとって初めての体験だった。

 何倍もの巨躯を持つものが自分に対して恐れをなしている。

 まるで、擬似的にもねじ伏せている、見下ろしている気分。


 その事実にリッキーは腹の奥底でなんとも言えない充足感を味わった。


「オ、オイ········っ」


 自ら久しぶりに声を発した。


 ちょっと、喉の奥が詰まった気がするが伝わる程度には聞こえているはず。


 その理由として、そのモンスターは体をビクッとさせて頭を抱えだしていた。


「何、なになになに!? だれぇ!? ヤダヤダほんと怖いよぅ! 今誰が喋ってるのぉ!」


「オ、オマエヒトリカ······? ナカマハ? カゾクハチカクニイナイノカ?」


 静かに問いかけるリッキーに少しだけ落ち着きを取り戻したモンスターはゆっくりと答える。


「い、いないよ······。ボ、ボク生まれた時から一人ぼっちなんだ。最近までは住処があったんだけど、別の奴に追い出されちゃって········」


 ーーー同じだ。

 境遇は少しばかり違うが、似たような育ち。

 俺っちも小さい頃に両親を亡くして、住処を追い出されて一人ぼっちで生きてた。


 こんなに、大きくて強そうな奴でも追い出されることがあるのか·······。


「サ、サビシクナイノカ?」


「さ、寂しいよ。けど頼れる人居ないし、この見た目でみんな逃げちゃうし·······」


 そう言って、軽く両手を広げる。


「イイノカ。イマ、メッチャスキダラケダゾ」


「はっ!! 良くない、良くないよ! ·····けど、何だろう。君の声聞いてると落ち着くって言うか、ホワホワするって言うか、危ないって思えないんだよね·······」


「オカシナヤツダ」


 リッキーは軽く笑って、少しの間黙る。

 それから、何時まで目を閉じてるんだ? と、声をかけた。

 自分の能力くらい把握しているため、どのぐらいの効果時間かよくわかってる。


 そう言われて、不思議そうに両目をしばたくモンスターは視力が戻っていることに気付いて、周囲を見渡して声の主を探しだした。


 何度か周囲を見渡して、自分の膝下より小さい彼を見つけた時は心底驚いた表情をする。


「ハハッ、イガイダッタカ? コンナヤツガアイテデ」


「う、うん。けど、ちょっと安心した」


「? ナニガ?」


 モンスターは、ギラつく牙を剥き出しにして笑う。


「君は怖くない見た目の奴だなって」


「ハッ、ヘンナヤツ」


 リッキーも口端を釣りあげて笑うと、二人の間に静寂が流れる。

 一間置いて、あのっ、と声をかけたのはなんと二人同時。


「あっ······」


「アッ······」


「さ、先に言っていいよ」


「イヤ、ソッチガイエヨ」


 2人は目を見合わせると、軽く笑いあった。


「もしかして同じこと考えてるかなぁ?」


「カモナ」


「それじゃあ、一緒に言ってみる?」


 リッキーはそれに頷くと、モンスターの合図に合わせて、口を揃えた。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「オモエバアレカラ、1ネンカァ·······」


「ん? 何が?」


 リッキーは空を眺めながら呟く。


「ン、イヤナニ。アノデアイガナケリャ、コンナ凸凹コンビデキナカッタロウナッテ」


「あーー·····ククッ、確かに」


 モンスターはそう言って、1つの果実を齧って笑う。

 が、どうやら味が落ちてたようで、顔をしかめた。


「懐かしいなぁ。あの時は本当に死ぬかと思ったし、怖かったけど、とても嬉しかったね」


「ハハッ、イマデコソマシニナッタケド、クッソナサケナカッタモンナ、ガロール」


「うっ、ボクも何とかしたいよ······、今でもたまにビクビクしちゃうし、舐められるからなぁ」


 ガロールは足元の水面に映る自分の顔を眺めながら眉をひそめる。

 それに対して、リッキーはため息を零しながら応える。


「オマエハ、ジシンガネェカラナァ。······ソウダ! ジャア、ハナシカタカエタライインジャネェカ?」


「? 話し方?」


 そうっ! と、リッキーは嬉しそうに応える。


「『ボク』ヲ『オレ』二。アトハモットイカツクシャベッテ········ソウダナ。ワライカタモカエチマオウ!」


「い、厳つく······わ、笑い方?」


「グァゥハッハッハッハァ! ·····チゲェナ。ジャェイアハハハハッ!! ······コレデモネェナ。ドゥルェェエッハッハッハッハ!!」


「········リッキー?」


 口を大きく開いたり、下を伸ばしながら発したり、目を見開きながら叫んだり、色々と試しながら発狂する。


「ンーナンカ、ピントコネェナ。ナンカアルカ?」


「えぇ?! い、いきなり振らないでよ。え、えーー? んーそうだなぁ、できれば僕の特徴も残しておきたいよなぁ」


 んー、と顎に手を置いて喉を鳴らせるガロール。それに、声高らかにそれだっ! と、叫んだのはリッキー。


「ど、どうしたの?」


「グルルルゥ、ッテイイジャネェカ! ソレニワライゴエイレテ『グゥルアハッハッハ』ッテドウヨ!?」


「『グゥルアハッハッハ』·····イイね。それ、いいね!」


「ハハッ、イイダロ!」


 2人とも声高らかに笑って、ガロールは嬉しそうに何度も何度も吠えた。

 その遠吠えは遠くの山の麓までも聞こえ、その晩のガロールの喉は何も発せないほど潰れていた。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 それから、数えられないほど夕陽が沈んで朝日が昇ると毎日の生活サイクルが始まった。


 寝床から2人で起き上がって大きく伸びをする。

 それから、2人で起き上がって近くの川辺で顔を洗って、水を飲む。

 そのまま、川辺に飛び込んで体毛をびしょびしょにすると体を振り回して水気を飛ばす。


 その後朝食はいつもの木の実で済ませ、昼食もまた同じ木の実で済ませ、夕食もまた·······


「·······ソロソロ、アキネェ?」


「ん? どうしたリッキー」


「イヤ、ドウシタモコウシタモ、マイニチマイニチ、キノミキノミ·······アキネェカ?」


 リッキーは何百回と食らった木の実を眺めて、微妙な表情を浮かべて尋ねる。

 それもそうだろう。味に文句ないが、似たようなものを1年食い続ければ流石に飽きる。


 一人の時は色んなところを歩き回って、たまに余り物を頂いてたから飽きはしなかった。

 だが、2人になって住処が落ち着いて、全く移動しなくなった。

 このままでは、死にはしないが辛くて心が麻痺しそうだ。


「んー、肉を食うよりはマシだから、俺は何も不思議に思わないが」


「ツウカ、シャベリカタオレッチニニテキタナ」


「む、そうか? ……いわれてみればそうだな。話し相手がリッキーしかいねえから写ったんかな」


 ガロールは嬉しそうにのどを鳴らせ、にっこり笑うとそうだな、と一息ついて答える。



「ま、良い機会だからそろそろ移動するか……」


「オッ! アテガアルノカ!?」


 流石。知らぬところでそんな下積みはしていたのか。と、感激するリッキー。

 その反応にガロールは静かに笑うと人差し指を立てて答える。


「この前、散歩途中にある噂を聞いてだな······なんでも争いの無い平和な隔離世界が存在するらしい」


「アラソイガナイ!?」


 これは、リッキーにとっても願ってもない話だった。

 これ以上戦いを望んでいない2人は残りの人生を静かに暮らしたいと思っていた。

 誰にも狙われず、誰にも襲われない。そんな平和な世界を。


 そんな世界が本当に実在するのなら喉の奥から手が出るほど欲しい。


「デ、デ、デッ! ソレハドコニアルンダ?」


「いやぁ、実は詳しい場所が分からねぇんだよな。話をしているヤツらも知らない雰囲気だったし、何処にあるのか当の本人達も知らないらしい。ただ唯一分かるのは、まるで地上と変わらぬ環境で静かで平和な地下世界ってだけだ」


「チ、チカ?」


 そんな所にあるなら、入口を見つけるのに骨が折れそうだ。

 何せ、地上と違って分かりにくいだろうし、地下ということは入口が不明瞭だということ。


「······ハァ。ミツカルカネ」


「まぁ、当面目的も無かったしいい機会じゃねぇか。話によればこの近くらしいし、案外ひょんな事から見つけるかもしれねぇよ」


 ガロールは声高らかにグゥルアハッハッハ、と腕を組んで笑う。


 対してリッキーは、軽くため息をついてあまり期待しないでおく気持ちで、一応自分なりに別の居住地探しておこうと考えていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お、おい!!?? リ、リッキー!大丈夫か!?」


 遠方からガロールの声がする。

 上を見上げたら奥に向かって縮む天井が見える。

 これは、落下したのか?


 はっ、鳥種の癖に落下するとは。

 最近歩いてばっかで飛ぶことを怠けてたせいか。


 さて、と。ここは木の幹の穴かなにかか?

 それとも人間がしかけた罠かなにかか?

 兎にも角にも早めに状況把握して、逃げなきゃーーー


 と、その時隣で大きな物音がして、近くの木の葉が宙を舞った。

 その内の1枚がくちばし先に落ちたところで、眉を落としながらその元凶に語りかける。


「オマエ、バカカ······? ココガテキノワナダッタラドウスンダヨ」


「えっ、あ! そうか!! やべぇ·····!! いや、だったら尚更リッキー置いて置くわけにはいかねぇじゃんか!!」


 ガロールの不意打ちの攻撃にリッキーの嘴は歪む。

 元々、思ったことをすぐに言ってしてまうのはリッキーもガロールも同じだったが、そうだしてもちょっとは考えてから発言して欲しい·······


 もし、性別が雌だったら落ちてんぞ。


「ん、どうした!? なんか、仕掛けでもあったか!? 表情が可笑しいぞ。なんでにやけてんだ?」


「ウ、ウッセー! トニカク、ココカラハナレルゾ! オマエモオチチマッタカラ、ウエニハニゲランネェ!」


 リッキーはガロールの発言を振り払って、近くの横穴へと飛び込んだ。

 その後を追うようにガロール。


 まるで、転がり続けるように走り続けた。

 実は、その道が2人の求めてる地下世界へ目指しているものだと梅雨知らずに。


本編には書いてませんが、リッキーがイントネーション可笑しいのは、小さい頃に親がなくなって正しい教育を受けないまま育ったからです。

ですが、隠密が上手なリッキーは周りのモンスターの会話などを聞いてだんだんと言葉を覚えますが、人によって癖がある為、それが混ざって現状に至ります。

口調が生意気なのも、聞いた会話が荒っぽかったのかもしれませんね。

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