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異世界で村人A  作者: キリン衛門
地下世界編
24/51

第23話《·······マジ?》

物語の佳境と言った感じのところだったので、切るところがなく9000字まで行ってしまいました。

大変かと思われますが、最後まで読んでいただけると幸いです(꒪˙꒳˙꒪ )

 大穴から地面までそこそこの高さがあったが、小さい頃からパルクール鬼ごっこをしてた自分にとっては、そこそこってぐらいの高さ。


 大体2階分ぐらいだろうか。

 変な降り方さえしなきゃ大した怪我はしない。

 現に、降り立った時に地面に着いた手で軽く床を擦るぐらいで済んだのが証左となるだろう。


【さて、と。この世とお別れする前に遺言でも残すかい?】


「あ、アンタ誰だ? ······いや、待て。見たことがあるぞ。そう、結構昔に」


【私にとっては昨日のようだけどね。『ユグドラシル』そう名乗った覚えがあるけど、どうだい?】


 地面に降り立った時には杉山さんとユグドラシルさんがいがみ合っていた。

 健吾の後からリッキー、チビと続いて降りてきたがそんな事を気にしてる余裕が無いくらいの緊張が迸る。


「っ! あの時に会ったここの主かっ! ······ん?、だが、あんた曰く目覚めることは暫く無いって言ってなかったか·····?」


【そりゃあ、後数十年眠る予定だったさ。けど、こんな騒音出されちゃ·······ねぇ?】


 ユグドラシルの表情がかつてないほど凍てつい。

 息をする度に緊張が走り、背筋を伸ばして立っていられない。


 この視線が自分へと向けられているものだったら、マトモに言葉を話せることが出来ないだろう。何処かで言葉が詰まる。


 それほど、ユグドラシルは静かに、冷徹に、憤怒していたのだ。


 地下の地下にあったのは、小さなラボ見たいな部屋だった。

 備品などは一切なく、中央に柱状の木の根の集合体があり、後はその真ん中が光ってるってことぐらい。


 後、驚かされたことと言えば·······


「ベステイア夫婦!」


 彼らの生存が確認できたこと。


 2人とも元気そうに鳴き声を上げている。

 彼らが杉山さんの足をやっていたのだ。現に今もずっと木板を持っている。


 これは杉山さんが助けてたと見るべきか、利用していたと見るべきか、それともーーー


【······人質のつもりか? 卑しいな】


「ま、待て。一体全体どういうことだ?」


 ユグドラシルが苦虫を噛み潰したような表情をする。


【白々しいっ! 元凶はお前だと割れているのだぞ? 現にエターナルに手をかけようとしてるのが何よりの証拠じゃないか】


「?! ······どういうこと?」


 健吾は困惑した。

 だって、エターナルは今止まっているのに、手にかけようとしてるって······。

 え? 既に手をかけたのではなかったのか?


「やはり、これが本体か」


 杉山のモヤが山吹色に変化した。


【そうだ。だが、今はそんなことどうでもいい。どうやって動きを停止させた? 見るに本体は動いてるが連結が解除されているではないか】


 ユグドラシルの口調が荒くなっていく。

 これが彼の本性か、それとも同胞の無残な姿を見ての怒りか。またはその両方か。


 何はともあれ、彼の作る握りこぶしが痛々しくくい込んでるのを見るに、後者の方が強そうだ。


「わからん。俺が来た時にはもう止まってたし、そもそも原因を調べるために来たって感じだし」


【戯言を······っ。ここに入れるのは施錠を解かない限り私以外ありえない。となるとここに居るお前以外、停止させた奴が他に居る訳がない!】


「おいおい、責任転嫁もいいとこだぜ。俺以外にアンタも入れるってことは、アンタが犯人なんじゃないか?」


 ユグドラシルが声を荒らげて全否定。


【皆を苦しめることを私がする訳なかろうが!!】


 呼吸が荒い。ここまで取り乱したユグドラシルを見るのは初めてだ(会って大した時間も経ってないが)。

 だが、それに対して杉山は冷静沈着。こういった修羅場に場馴れしているようだった。


 そんな荒れ狂うユグドラシルにため息をついて、健吾の方を見やると彼は救済を求めた。


「ケンゴよぉ。こりゃあどういうことだ? とりあえず俺への嫌疑を晴らしてくれよ。このままじゃ話が全く前に進まねぇ」


「俺だって信じたいすけど·········」


 今まで、大した発言をしてこなかった健吾だが、杉山に聞きたいことは山ほどあった。

 だが、ユグドラシルの怒りを見て身を引いてたのは事実だし、機会を貰えるなら是非聞きたかった。

心が痛むのはユグドラシルだけじゃない。


「本当に杉山さんじゃないんすか? あんな酷いことをしたの」


「酷いも何も、俺にとっちゃサッパリだ。なんでこんなに重っ苦しい雰囲気なんだ? 自分の知らない嫌悪感ほど不快なものないんだが」


「ーーーガロールとツェーリンが死んだんですよ?」


 杉山の軽口がピタリと止まる。

 その反応は、予想外だったのか。それとも演技か。健吾は問わずにはいられなかった。


「正直に答えてください。自分としては、知り合いのああいった光景見たことがないんで、本当に辛かったです。ええ、本当に。········ですから、答えてくれませんか? 何故、こんなことをしでかしたのかを」


 声がうわずっている。語りながら、彼らのことを思うと鮮明に彼らの姿を想像してしまうからだ。

 辞めたくても、辞められない。

 そんな、強固な意思で問い詰めているが、本音は今すぐに子供のように泣き出してこの場を去りたい。


 だが、彼の返答は相変わらずだった。


「ガロールとツェーリン······何でだ? 何が起こったんだ? 誰にやられたんだ?」


 もういい! っと、遮るようにユグドラシルが叫んだ。

 健吾としては一刻も早く真意を知りたかったが、これ以上声が出なかった。

 脳が、事実を知ることを恐れ、これ以上の負荷を受け入れなかったのだ。


【それよりも、何故エターナルの存在に気付けた? 証拠を残さぬよう隠蔽したし、隠し場所の上に隠蔽魔法もかけてたんだぞ!?】


 ユグドラシルの問いに一度黙るが、一息つけてから返答を始めた。


「別に詮索してたって訳では無いが·····皆と話している時に何回か違和感を感じたんだ。決めつけはリッキーが言ってた温度の話だな」


「オ、オレッチ?」


 リッキーが戸惑いながら俺を見つめるが、そんな目で見られても俺も困る。

 俺だって、今すぐ逃げ出したいし事実が上手くまとまらず混乱しているのだ。


「俺らは上にある大きな鉱石をエターナルだと思っていた。だが、そう考えると幾つか不自然な話が浮上してきてその1つは温度に着眼点を置いた。もし、上空のエターナルが太陽と同じ役割をしているのだったら、上空に行けば行くほど熱が増してしまう。けど、空を軽々しく飛んでいる鳥達がいる。と」


 杉山はモヤの形を器用に変化させて、熱の動きや気流の動きを表現する。

 その最中でベステイア夫婦が、鳥の真似や熱の暑さで倒れていて再現度は抜群。


「だとしたら上空を暑く感じない上、地上は過ごしやすい環境なんて便利なものがあると思うか? いいや、無いね。と、なると考えるはその逆」


【·······この気温はエターナルの降り注ぐ熱ではなく、地面から発せられる地熱のようなもの】


「ビンゴ」


 杉山は嬉しそうにモヤを桃色がからせながら、指を鳴らそうとしたが、モヤの指では音がならなかった。


 その後、小さな沈黙の後で一度咳払いをしてユグドラシルが割って入る。


【それを見抜いたのは見事。だが、何故この地下に入った? それを知ってエターナルをどうするつもりだったのだ?】


 少し黙り込んだあと、杉山さんが話し始める。


「ここに来た経緯もそうだが、まず聞きたい。何故、この柱を作った? その説明がなきゃ心を許して語れない」


【質問をしているのはコチラだ。お前は私の問に答だけよこせば良いのだ】


 杉山のモヤが薄暗い黒色に変化する。

 この色に変化したモヤを見るのは健吾にとって初めてだった。


「俺もアンタもよくわかってると思うが、エターナルの存在は脅威だ。それをこんな地下世界で燻らせた上、鍵を掛けた隠し部屋。そして、それを隠すための隠蔽。私物化。そんな事をする奴を警戒するなって言う方が無茶だ」


【·······私はお前を信用してない。例え、この話を続けたところでお前への嫌疑は晴れないんだぞ?】


「今、俺は俺への嫌疑だとか罪だとかを話しているんじゃない。アンタ、ユグドラシルが何を考えてこのエターナルを用いてたかっていうことについて言及してんだ」


 一転攻勢。

 ここに来る前のユグドラシルの気迫はいつからか消え、何故か杉山の方が優勢に。


 これは、杉山の発言の強さ故か。それとも、まだユグドラシルの中で揺らぐ何かがあったのか。

 それは、当人たちにしかわからない。


 が、根負けし、口を割って話しを始めたのはユグドラシルの方だった。


【······エターナルは触れるだけで力を発揮する危険な代物。それが誰にでも手の届く位置にあったら·····不味いだろう】


「勿論だ」


 杉山の声のトーンが優しく、落ち着いていた。


【独占していいかどうかの悩みはあった。が、この力を私が管理下において置かなければ危険が起こるという不安があった。故に、誰も触らぬ部屋へ。そして、その力を無駄にすることなく新たな命を紡ぐのに過ごしやすい環境へと、変化させていったんだ······】


 ユグドラシルは、口を紡いで眉をひそめて話し始めた。


【仕方がなかったのだ。ココで私が責任を伴わなければ、皆の幸せが崩れる。例え、永き眠りについて自由を奪われようともエターナルの力を押さえ込んで活用するには。···········仕方がなかったのだ】


「······良かった。アンタがマトモな人で」


 2人の雰囲気に柔らかみが混ざる。

 が、そんな温和な空気も一変。だが、と否定しつつユグドラシルの表情が険しくなって言った。


【それとこれとは話しは別だ。確かに私がエターナルを管理するというの力不足かもしれない。だが、だからといって死者を愚弄しエターナルを我がものとするというのは違うだろう屍の王よ!!】


 話は起点へと戻った。

 本題はこれだ。エターナルの謎ではなく、杉山の本当の真意を探るのが今回の目的だ。


 だが、その問答に対しての杉山の反応は動揺を誘った。


「何の話だ?? まさか、さっきから話してる奴ってその事だったのか? 俺が屍の王だと」


【そうだっ! 死者を操るのは1部を覗いてモンスターには出来ん! 有り得るならばお前が一番有説だろうが!】


 杉山のモヤは以前として灰色。

 これは、疑念と困惑の色か。


「待て待て待て待て、なんでここで屍の王の話が出る?? 確かに、ケンゴは有り得ねえから必然的にそうなってもおかしくないが······エターナルの話から突拍子が無さすぎねぇか? 訳が分からねぇよ」


 ユグドラシルの表情が曇った。杉山の考えていることが分からないのだ。

 嘘をつくには下手すぎる。こんな状況になっておきながら、そんな否定をしたってなんの意味もない。

 時間稼ぎ? 何の? 誰ために? どんな意味が?


 彼には、杉山の思考が読めなかった。


「杉山さん。俺は、貴方を少なからずは信じています。だから、理由があると思ってるんです。ですから、その·······あまり無意味な嘘は辞めてくれませんか·······?·」


「いや、だーかーら。なんで屍の王の話が出てくんの? 今までの流れで全く関係なくない? 俺は単純に少し用があってベステイア夫婦と散歩してたら、たまたまここを見つけただけだぜ?」


 気の抜けた杉山の回答に声を荒らげてユグドラシルが突っ込む。


【たまたま!? そんな訳なかろうが!! 私の全人生を注いで作った錠前だぞ!? 中身を弄らなければ解けないし、強引に開こうとすれば反撃カウンター行為と、強制ロックまで施しているんだぞ!!】


「そんな事言われても。たまたま目の前に人が通れそうなくらいの穴があったんだからしょうがないだろ」


 2人の論争がドッチボール状態になって繰り広げられる。

 杉山さんの発言に対して、明らかに食い違うユグドラシルさんの発言。


 だが、どちらも嘘をついてるように見えない。


「というか、そんなことより屍の王の話だろ。なんでその話になってる」


【そんなことではないっ! 私が全神経注いで·····っ! ········いや、そうだな。そんなことを言い争う前に従者の措置の方が優先だな。今、上で起きてる惨状をどうにかしろ屍の王。抵抗しても無駄だというのは十二分に分かるだろう?】


「抵抗もくそも襲われる理由に見当もつかねぇよ」


 だっかっら! と、腹の底から煮えたぎるような声で再度吠える。


【ふざけるのもいい加減にしろ!!!! さっきから暴れている従者を止めること位、王であるお前ならば容易であろう!? これ以上私の民を苦しませるな!!】


「······何だって?」


 杉山のモヤが一気に黒みがかった。

 その気迫は初めのユグドラシルに引けを取らない。

 だが、その時の矛先は誰となくではなく、何処か別のところへ向けていた気がした。


 その時、頭上から声が聞こえた。更に複数の足音。

 間違いない、奴らがここを嗅ぎ付けて来たのだ。

 ユグドラシルは舌打ちをして、入口を塞ぐと念入りにツタを伸ばして頑丈なものとしていく。


 光は中央の柱にあるエターナルが補給してくれていたため、全員が視界に写っている。


「おい、どういうことだ。上はどうなっている」


【いちいちふざけた事を抜かすなっ! さっさとこの惨状を止めーーー】


 ユグドラシルが力強く近づいて、杉山に指を指しながら進んでいたが、突然ピタリと止まった。


【ーーーそうだ。主がいなければ従者は動けまい】


 静かに、ゆっくりと呟いたそのセリフに杉山は誰よりも早く、敏感に察す。


 瞬間、地面から複数の蔦が噛み合わさり杉山の木版目掛けて飛び込んだ。

 だが、事前に察知していた杉山も構えていて、向かってくる複数の蔦をモヤでつかみ、空中で留める。


「何を!?」


【従者は屍の王によって操られている。つまり、本体さえ倒してしまえば奴らはもう動けまい!!】


「ばっかを言うな、俺じゃねぇつってんだろ!!」


 杉山はそう叫んで、モヤを赤く燃え上がらせ蔦の中間を切断した。

 切断された蔦はぐったりとしたが、ユグドラシルの手元から放たれている方の蔦は引き、地面へと戻っていく。


 そして、間髪入れずに死角から蔦を3本飛び出させ、スキをつこうとするが、常に警戒心を解かなかった杉山にまたも止められる。


【くっ·······!】


「一度神経はりめぐせたらスキはないぞ。それより一旦落ち着け、絶対誤解がある」


【そんなことを言ってる場合か!! こんなことをしている間に皆が襲われてるんだぞ!】


 ユグドラシルの手は止まらない。勢いよく地面叩い

今度は先程の2倍ほどの太さはある蔦を用意して発射。

 だが、これもあえなく静止。

かと思われたが、今までの停止位置の手前から分裂をして左右から飛びかかった。


 流石に予想外の攻撃だったようで、右の蔦は止められても左の蔦は止めきれなかった。

 勢いよく飛んでくる蔦はまさに銃弾のよう。

 木板でしかない杉山はいとも簡単に貫かれてしまうだろう。


 もう一瞬きで到達。と言ったところで突如進路が変更。後方の壁に突き刺さった。

 本当なら、真っ直ぐ飛ぶはずのでずれることは無いのだが、それはチビがずらさなければの話だった。


【着いてきたベステイアの·······】


「チビィ!」


 ふんぞり返って満足気に鼻息を立てるチビ。

 俺の時は魅せなかった癖に、杉山さんに褒められた時はすごい満足気じゃないか。


【邪魔をするのか? お前も】


「まぁ、元々チビは俺の相棒だし。それで? 小手先の争いはもういいか?」


 杉山のモヤが満足気にオレンジ色に変わる。


【くっ、そんなことをしてる場合では無いと言ってろうに!】


「いえ、やはり話し合いませんか?」


 ココで割って入ったのは健吾だった。

 健吾は悩んでいた。杉山が屍の王であるかどうか。

 だが、あまりの白々しさ。嘘をつくほど器用には見えない性格。

 それと、今までの接した時間がものを言った。


 彼を、一旦信じようと。


 だが実力がない健吾は発言権がない。

 発言権がないなら、その時を待つしかない。

 そして、その中実力が均衡した今でならここの独占者はいない。

 先に発言したもん勝ちだ。


【いいや! そんなことより、倒してしまえば万事解決!】


「落ち着いて下さい。貴方らしくありません。そんなに無鉄砲に行動するほど馬鹿な人ではないでしょう?」


 健吾の挑発的な発言に、自分を見失っていたユグドラシルはハッとさせられる。

 そして、健吾は杉山の方へ向き直ると眉をひそめたまま、上を指さして尋ねた。


「まず、杉山さんは何故上の騒動を知らないのですか? そんなに何もしないでココで待っていたのですか?」


「何もしないで、って言うか。何も出来ないって言うか。この柱を解こうにも魔法で開ける訳じゃないみたいだったし、地上に出ようとしたら何故か閉まってたんだよな。行きは開いてたくせに」


【·······何?】


 先程まで、ずっと不機嫌だったユグドラシルの表情が変わる。今までで話をしてこなかったからこそ、確信に迫る回答がでて驚いているのだ。


【確かに、この柱に施錠をかけている。だが、それは見た目的な話だ。この柱にかけているのは魔法探知に引っかからぬよう、不探知魔法。それに、力づくで開けようとする輩に対する反発魔法の2つしかかけてない。つまり、これは逆に引っ張ると簡単に開くように出来ているのだ】


「えええええぇ!? そんな簡単に開くんか!? めっちゃ悩んでたのによ·······」


 杉山が驚きのあまり声を上げる。


【それが狙いよ。そもそも入口を開けられた時点で負けのようなものだが、そんな頭脳明晰な奴ほど簡単なことに騙される。逆転の発想さ】


 ユグドラシルは、自身のトラップに満足気に声を上げる。

 今まで誰にも共有することがなかったのだろう。

 先程のピリピリした空気が一転。また暖かな雰囲気が少しだけ漂った。


 ーーーにしても、不可解なことが多い。

 結局、屍の王はいないって事か?

 それじゃあ、なんでエターナルは止まっているんだ?

 杉山さんが言うにはたまたま入口を見つけたと言っている。

 胡散臭いこの上ないが、逆にエターナルを欲す理由はなんだ?


 ·······体が治るとかか? 半永久機関だから有り得なくは無さそうだが、取り込むのは木板じゃ不可能なのではないだろうか。

 取り込むための体がないし。


 と、なると悪用。屍の王の力を使用するため?

 それなら、従者を使う理由がない。混乱を招くためと言ったって、ユグドラシルさんが目覚める可能性くらい頭にあったはずだ。

 1度会ったことある杉山さんなら、それぐらいの考えは及ぶはず。

 こんな大がりな事に挑むのにそんな簡単なミスを犯すのか?


 それに、それならこの時期に起こした理由がやはり見当たらない。


「だが、施錠をしていても時間をかければ分かるんじゃねぇの? ふとした時に力入れず開けたりしたら·······」


【それは問題ない。入口を強引に開けた時点で警告がくる。そしたら、強制的に目覚めるようにしてたしあくまで時間稼ぎでしかない】


「俺ん時は警告無かったみたいだが?」


【·······】


 黙りこんだ。

 確かに杉山さん、あっさり侵入してたもんな。というか、開いてたし·········案外おっちょこちょいなのか?


「おい、ユグドラシル。ケンゴがお前のことおっちょこちょいって思ってるぞ」


 ユグドラシルの冷たい視線を横目に感じた。


「い、いやいやっ! なんか自信満々に語っていた割には拍子抜けだと······」


【正直に言うねぇ健吾君?! だが確かに落ち度があるのは私。ぐうの音もでない】


「あ? 俺の時より素直に謝罪するじゃん」


 杉山がご立腹そうに答えて、モヤを赤くさせる。


【そりゃまだ君をまだ信じてないからね。健吾君の顔に免じて話し合いをしているけど、屍の王であると言う可能性を完全否定する材料を提示しない限り嫌疑は張晴れない】


「俺の顔って、そんなに価値あった······?」


 ユグドラシルの視線はいまだ厳しい。

 だが、武力で埒が明かないのと未だ行動を起こしていない杉山を見定めている、と言ったところか?


 にしても、なんださっきから感じるこの違和感。

 何かが分かってる筈なんだが、上手くまとまりきっていないこの感覚。

 歯車は全部揃っているが、まだ噛み合ってないこの感覚。


 考えろ、考えろ······。

 謎解きゲームだけは得意だったじゃないか。


 こういう時に大事な発想は有り得ない思考だ。

 まさか、そんなわけない。と言った固定概念が簡単な回答をねじ曲げて混乱させる。

 一度考え直せ。頭を柔らかくさせろ。


 無茶な回答を絞りだせ。

 ベステイア夫婦が黒幕で屍の王。

 杉山さんが実はユグドラシルさんで、このユグドラシルさんは偽物。

 リッキーが実は鳥ではなく人間。

 ユグドラシルさんが元々ーーーー


「だから、そうなるとーーー。 ? 健吾何考えてたんだ?」


「········」


 健吾の返答はない。それほどに集中して周りの声が入ってこないのと、歯車の音がやかましかったのだ。

 1個、また1個と歯車が絡み出していく。

 虚実が真実に、迷いが正解に、犯人が真犯人にーーー


「······マジ?」


 直後だった。誰かの声を聞いて皆の視線が集中したところで、何も見えなくなった。

 この時に聞こえた声ほど不気味なものは無い。

 そいつの声は、嘲笑い、高笑いし、皆の視界を奪って声高らかに語り始めたのだ。

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