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異世界で村人A  作者: キリン衛門
地下世界編
20/51

第19話《ガロールとツェーリン》

 え···?どういう事····?


 今目の前にあるのが、え?



 ちょとまてちょとまてちょっとまてまてまてまてて


 だって、え? さっきまで普通に話してたじゃん。

 一緒に笑ってたじゃん。

 一緒に喋ってたじゃん。

 一緒に散歩しようって言ってたじゃん。

 一緒に池の酒飲もうつってたじゃん。

 ツェーリンの秘密教えてくれるって言ってたじゃん。

 みんなで初恋の話してて、明日はガロールの番つってたじゃん。

 楽しみにしてたんだぞ。お前みたいなやつが恋する相手がどんな奴か。



 楽しみだったんだぞ······················。



 目の前の事実を到底受け入れられず瞳にたっぷりと雫を浮かばして右往左往してると、たまたま視線を向けてしまった上半身と下半身の境目。


 何か食い荒らされたような見た目の境い目が無修正で飛び込んできて、一瞬にしてつま先から憎悪が駆け上がり、気がついた時には昨日の夕飯をぶちまけていた。


 口が臭くて酸っぱい。

 この人生手前まで来ることはあっても超えることはなかった為、初めて味わう胃液の味。

 だが、そんな苦しさよりも目の前の悲しみが上回った。


 仲良くしたのは3日程度だったが、とても気が良くてムードメーカーみたいな男だった。

 見た目は厳ついが犬のような男で優しさと親しみやすさがあった。


 3日だ。たった3日だけの付き合いだったが、されど3日、心を許して語った仲だった。


 健吾は基本涙を流さない。

 大好きだった祖父が死んでも、日に日に弱っていく姿を眺めていただけあって、いざ亡くなっても涙が零れなかった。


 きっと、死ぬと分かりきっていたから。例え死んだ事実を知ったとしても心構えができていたんだと思う。


 よく、その点を大人だね。と褒められるがそうでは無い。

 ただ、死んでしまう事実を受けいれるのが他人より早いだけだ。

 立ち直るのが早いんじゃない。別に褒められる人間じゃない。


 じゃなきゃ、こうして目の前のガロールを見て直ぐに行動できるはずなんだーーーー


 健吾は無意識に流れる涙と嗚咽を己の力で止めることができなかった。

 まるで堰き止められていたダムに穴が空いたように封じる術健吾は持っていなかったのだ。


 その時、背後から物音がした。

 いつもの健吾だったら防ぎきれないかもしれないが対処はできた。

 けれど、人生でかつてないほど隙だらけだった健吾は瞬く間に取り押さえられて、勢よく肺を押さえつけられた。


「っ!!! ツェー···っ、がはっ、リン?」


 呼吸が不安定になりながら、横目で見えたのは健吾をとりおさえるツェーリンの姿。

 だが、その半顔は無く健吾と目が合うと首を2.3回ふるわせて聞いたことも無い奇声を発する。


「ぅっ、はあぁ、·····ぐぅっ····」


 胸を圧迫されて上手く呼吸ができない。

 咄嗟にツェーリンの足を肘で殴るがビクともしない。ごぼう並みの細さしかないのにこれがモンスターとの核の差。

 ただの人間である健吾にとっては抵抗すら許されない。


 なんだよこれ。なんなんだよコレ。

 どうなってんだよ、ガロールもツェーリンも一体どうしちまったって言うんだよ。

 ガロールは何者かに殺られてるし、ツェーリンは半分顔ねぇし、でも生きてるし。


 何故かわかんねぇけど俺を襲ってるし、何でだよ。どういうことだよ。

 ふざけんなよ、マジで、本当に!! 何で昨日までみんなで楽しい日々過ごしてたのに急にこんなことになってんだよ!!!!


 健吾は理解のできない現状と納得の行かない惨状に苛まれて、悔しさのあまり涙を流す。


 健吾の怒りをそっちのけで非情に現実は歩みを進めて、ツェーリンの足に更なる力が入る。

 みるみる力が入り、ポキッと軽い音ともに身体中に電撃が走った。


 多分肋骨が折れた。折れた試しがないため、確証は無いが音と位置的にそうだと思う。

 嫌な軋む音ともに軽い吐血をし、叫ぼうとするが肺が圧迫されてどうしようも出来ない。


 声も出なければ、動くことも出来ず、肘で殴ろうにも、もうつ伏せで押さえつけられて身動きが出来ない。


 その時、声が聞こえた。

 小さな掠れた声だったが、こんな状況下では誰が来ても女神だ。


 例え、チビだとしても涙を流して感動しよう。べスティア夫婦なら来たとしても、実力面で心配を覚えるがそんなことはどうでもいい。

 とにかくこの窮地から助けてくれれば誰でもいい。


 そんな希望を胸に前方から聞こえるのはなにかのスレる音。

 腕だけで這い寄るようにして進み、スマホのライトの上に顔が写る。


 ガロールだ。下半身を失ったままのガロールが這いずりながら向かってきたのだ。

 口から血液が零れ落ち、口を何度かパクパクさせているが、泡立って音になっていない。


 それから、此方を見るなり白目を剥き口を限界まで開いて、ツェーリンと同じ音を奏でだした。


 直感で察した。俺はココで死ぬ、と。


 きっとガロールは助けるために這いずってでもこっちに来てくれたなんて思えない。

 その姿形、反応を見たからもあるが、直感がガロールを味方でないと認識した。

 もう、ガロールは健吾との記憶が無い。きっと自我がない。ツェーリン同様「襲う」という単純理念の元に動いている、と。


 だが、そんなことに気がついたって、今の健吾にとってはどうしようも無いこと。

 背中は押さえつけられて動けず、前からはガロール。体格差では圧倒的差がある上、そもそもモンスターと人間という時点で勝ち目ゼロ。


 棺桶に片足を突っ込んでいる。視界ももう霞んでいる。

 だが、本人も驚いた事だが人間の生への執着とは恐ろしいもので、当人が全く動けずに居る中でも身体は生存へと足掻くようだった。


 健吾の両手は何かをしようと周りを手探りで探し、何度も何度も暴れのたうち回りながら、1つの固形物に手を当てる。


 それは、腰部分の投げナイフの柄だった。


 体勢は最悪。例え、掴めたとしても足を切りつけるほどの振りはできない。


 だから、健吾は切るのでは無く刺すことにした。


 柄を握って眼前まで運び、残った半顔に向けてナイフを突き立てる。


 ツェーリンの顔は奇怪な声を上げながら顔を近づけていたため、短い振りしか出来なかったが届かない訳じゃない。


 だが、ここで発生するのはまたしてもモンスターと人間との差。

 勢いよく振ったナイフは頬に当たると激しい金属音を立てて、弾け飛んだ。


 止められた様子はない。つまり、単純明快ツェーリンの頬が振るった健吾のナイフよりも硬かったということだ。


 焦燥がさらに増し、即座に手を後方へと回そうとするがガロールの到着の方が早かった。

 滴る血が鼻先をかすり、赤と白で彩られたコントラストがスポットライトに煽られて牙を覗かせる。


 その光景に絶望に染った健吾の脳は、手が止まり幾つもの記憶が水流の如く流れ始めた。

 激流の勢いで駆け抜けていく記憶を、何故か健吾はスロー再生のように見えた。


 数多の記憶に脳内を殴られ、周りの世界がゆっくりと進む中で健吾はこれを『走馬灯』であると理解する。


 そう、脳内ではその命を絶命と断定していたのだ。


 視界が暗い。

 背中が軽い。

 一時の騒音の後、音はもう聞こえない。


 もう何もーーー


 ん、音? と、不思議に思って健吾が目をゆっくりと開くと眼前に大きな足の裏。


 それが、暫くすると小さく縮んでソレの本体が姿を現した。


「チビ!!!!」


 これ程感動したのはいつぶりか。

 というか、チビに感激したのは初めてだ。

 こんな土壇場で来られると思ってなかったし、さっき涙が流すとか適当言ってたし、見捨てられると···ええい、もうなんでもいい!! とにかく助かった。


 健吾はゆっくり体を起こして肋骨の痛みに口端を歪める。

 それから、起き上がる時には1度軽い吐血をして、後ろを振り向くと、暗がりの中で固まる塊を目にした。


 あまり、体に負担がかからないようにゆっくりと引きずるように進み、彼らの元に辿り着くとガロールの下敷きになるツェーリンを見つけた。


 ガロールの身体は縦に切れ目が走り、もうピクリとも動いていない。

 ツェーリンも、生きてはいるものの動けないだろう。

 巨躯のガロールの体重に押しつぶされて、手もないため払い除けられず、首を震わせてバタバタしている。


「ごめんな···ごめんな····幾ら怖かったからって、焦ってたからって····ナイフ刺しちまってさぁ」


 正確には刺せていないのだが、ナイフを他人に向けたのは人生で初めてだったし、正当防衛したつもりではある。

 だが、友人に突き立ててしまったという事実はどうも心を曇らせる。


 命の危機だったから仕方ないと言うばそれでおしまいだが、それで片付けてしまうにはこの事象はとても悲しい。

 本当ならガロールを埋めて埋葬したい所だが、どうやら現実それをしてる場合じゃないようだ。


 結局、2人はどうして急に襲ってきたのか。

 どうして外が暗いのか、他の皆はどうなったのか、べスティア夫婦は? 残りのリッキーは? それに、杉山さんは何してるんだ····?


「チビ、チビ···杉山さんは? 何か分かって無いのか?」


 健吾は言葉は伝わらずとも目を見合わせて尋ねた。

 この状況下で真剣な姿を見せれば、伝わらずとも言いたいことはわかるはずだ。


 だが、チビは相変わらず態度が変わらず、すぐに目を逸らした。

 いつもなら「こんな状況下でそんなことやってる場合か!!」と、叱るところだが、如何せん2人の死と不安で心が沈んでる。


 到底怒れる気持ちになれなかった。


 そんな落ち込んでいる時、玄関の方から扉を背にスポットライトのように影が伸びる鳥を見つける。


 ぴょこぴょこと跳ねるように進む動物。見覚えがあった。


「リッキーーーーーっ!!!!!」


「ケ、ケンゴォ。イ、イキテタノカァ」


「お前っ、お前こそ····!!」


「オレッチァ、ニゲタンダ···イヤ、ニガシテモラッタンダ····ウッ、ウゥッ····フタリガミヲテイシテ、オレッチォヲ····『トベルオマエジャナキャムリダ』っッテ、アイツラァ····カッコツケヤガッテェェーーー」


「あぁ、あいつ等はカッコイイさ、かっけええよ! ···それで、何が起きたんだ? 俺今何が起こってるか全然わかんねぇんだよ」


「ギュリエスシュノヤツラダ···、アイツラオレラガイツモノネドコデ、ネヨウトシテイルトオソッテキヤガッテ····ヨウスガオカシカッタ。カイワハデキネェシ、シセンガオカシイシ、キズツケテモイッサイドウジナカッタ」


「····まるでガロールとツェーリンみてぇだな。ガロールもツェーリンも、大怪我してんのにまるで何ともねぇみてぇだった」


 健吾は、深呼吸をしながら痛みを意識の外に追い出すよう気をつけながら話を聞いている。

 気にしとかないと意識を持っていかれそうだし、気にしすぎると激痛が伴うから、絶妙な狭間に意識を置くのはとてつもなく神経を使う。


「ソレデ、ガロールガオソワレタアト、ツェーリンガニゲロッテイッテ、スギヤマサンニコノジョウキョウヲツタエルヨウタノマレタ。ケド····」


「けど? どうしたんだ?」


「スギヤマサン、ドコサガシテモゼンゼンミツカラナインダ」


「?! ···どういうことだ?」


 あの人がこの現状を放っておくわけがない。

 最悪、まだ分かってないとしても周りが薄暗いことに気づいて対処する筈だ。

 それなのに、何処にもいない···どういうことだ??


「本当にしっかり探したか···!? 木板で見にくいかも知んねぇが、お前らの方が付き合いが長い。何処に行くかの検討ぐらい····」


「ゼンブイッタ! ゼンブイッタ! ケド···ミアタラネェンダ。ソレニ、アノヒトナラ手紙メッセージヲトバス!! ソレガナイッテオカシクナイカ?」


 確かに、あの人ならどこ居ても俺らに手紙を飛ばすはずだ。

 それがないって、なんでだ? 言わないことによるメリットってなんだ? 俺らが死んでもいいってことか···!?


「うーむ。ここの生態系崩したくないし、部外者が立ち入る話じゃねぇと思うんだわ」


 突然、あの時の会話が脳内をよぎる。



 まさか、冗談だろ? まさか、ここの生き物全員見棄てるつもりなのか···!?

 じゃあ、チビが杉山さんのことについて尋ねて答えられないのも、答えないのではなく何もわからないから···?


 その時、後ろで物が揺れる音がした。ツェーリンだ。大人しくしていたが、また動き出したのだ。

 けど、あの姿をリッキーに見せたくなかった健吾はリッキーとツェーリンの間に入るようにして視界を隠した。


「ナァ、ケンゴォ···ダイジョウブダヨナァ、オレラ。ダイジョウブダヨナァ?」


「········。おいおい、俺より強いリッキーが弱音吐くなよー? 心配すんな、今頑張って杉山さんが何とかしてくれてるに決まってるさ」


 大粒の涙を浮かべているリッキーに励ましを与えるが、多分痩せ我慢を見抜かれている。

 その証拠に健吾の足の痙攣が先程から一切止まっていない。


 だが、リッキーは「ソウダヨ、ソウダヨナ!!」と目を瞬いて涙を落とし、扉の外へと顔を覗かせている。


 健吾も、胸を抑えながら深呼吸を続けつつ外を覗いた。


 元々静かな場所だったが、薄暗さも相まって薄気味悪く感じる。

 流れる水流が静寂の中に響くのもそれを強調させた。


「·········行こう」


「アイヨ」


 小声で囁きながら、チビとリッキーに合図を出す。


 体を落としながら壁伝いに進んでいると、元々小さいのに自分を真似て身を低くしているのが可愛くて、不謹慎であるがほくそ笑んでしまう。

 ちなみに、チビは相も変わらず堂々と歩いている。


 周りが明るいのは壁に生えた水晶が光ってるからみたいだ。

 今までそんなことを知らなかったが、エターナルがなくなった今だからこそ暗闇の中で美しく輝いている。


 皮肉な話に聞こえるけど。



 何個か家の壁を通った時点でまたも吐血した。

 死にそうって感じはまだないが、とにかく辛い。先程から立ち止まってみんなの足を引っ張ってるし、正直呼吸するだけで痛い。


 こんな中で敵にでもあったら一溜りもない。間違いなく全力疾走できないし、そもそも逃げ切れる自信が----


 瞬間、自分たちの次の壁から強烈な破裂音と共に、瓦礫が吹き飛んだ。

 壁にできた大きな穴から大きな手が1本。ゆっくりと顔を出して壁を掴む。

 が、どうやら彼にとっては脆すぎたようであっという間に握りつぶされてボロボロとこぼれ落ちた。


「····走馬灯って1日に2回見るもんだと思う?」


「ナニイッテルカヨクワカンネェケド、トリアエズヤベェノハマチガイネェナ」


 壁を握りつぶす右手の後に、左手が地をつき顔を覗かせる。

 見たことない顔だが、大きさで言うなら2〜3Mあり、頭部が人の顔の形に近いが目が三つあり、鼻が西洋人ビックリするほど高く、口が無い。

 髪はロン毛の馬のように頭部の頂点から腰にかけて流れており、身体はやせ細って肋骨がくっきりと見える。

そして、特徴的なのは背骨から等間隔で骨が突き出て、骨の尾が生えていることだった。


 それと、頭部から尾てい骨までに流れる毛以外は何も生えていない。


「ううぅぅううううぅぅううううぅぅうううう」


 本来口のある部分から、幾つもの点が浮かび上がり楽器のような抜ける風音が聞こえる。


 彼は正常なのか。2人と一緒か。確かめる方法が無いため、近づくことも出来なければ走って逃げることも出来ない。


 そんな状況を見定める中、驚かされた事象がひとつ。

 一瞬きの間にそのモンスターの元に何かが飛び込み、当たり前のように足を巨大化させて蹴り飛ばした。

盛り上がり部分は書いてて楽しくてスラスラ行けますね!

ただその点、誤字脱字、文章力の無さが垣間見えて一応最後に目を通しているんですが如何せん取りこぼしがありますね。


これからも頑張って書き進めますのでよろしくお願いします!

話のだらけている所や、マハトへの変更は時間が空いた時にでも変えていきたいです。

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