知らない事、知っている事
鬼に何かを見せられる桃太郎
桃から取り上げてくれたお婆さん。
お爺さんとお婆さんはとても優しかった。
でも、世間はそんなお爺さんとお婆さんに冷たかった、厳しかった。
貧しいながらも、一生懸命お爺さんとお婆さんは僕を育ててくれていた。
そんなお爺さんとお婆さんは、本当に疲れていた。
僕は不思議に思っていた。
なぜ、お爺さんとお婆さんの家は、あんなに村はずれにあるのかを。
なぜ、村に行くと、僕は大人たちに変な目で見られるのかを。
その理由がようやくわかった。
全部、僕のせいだった。
お爺さんとお婆さんは僕のせいで、こんなに苦しくて悲しい思いをしてたんだ……。
ちっとも知らなかった。
サトルの言うとおりだ。
僕は、僕のためにお爺さんとお婆さんの記憶を取り戻したかった。
それはきっとお爺さんとお婆さんもそうだと勝手に思っていた。
でも、こんな苦しい記憶なら……。
目の前に、真っ暗な闇が広がっていく。
体は重く、どんどん沈んでいくようだった。
どんどん、どんどん沈んでいく。
その時、何かが聞こえた気がした。
なんだろう……。
どうでもいいと思うけど、どうしても気になる声が聞こえた。
「桃太郎さん!」
暗い闇の中に落ち込む僕の手を必死にくわえるポチがいた。
「思い出して、桃太郎さん! 君の中にはいろんなお爺さんとお婆さんがいたはずだ!」
いろんなお爺さん……。
いろんなお婆さん……。
僕の目の前には、いつもお爺さんとお婆さんの笑顔があった。
その背中は疲れていたかもしれない。
でも、僕に向けてくれる顔は……。
笑顔だ!
ポチは優しくかんでます。
たぶん。




