仲間との出会い
旅のお供に
旅は思ったより順調だった。
鬼ヶ島をめざし、歩いていく。
途中いくつかの村に立ち寄ったが、どこも僕の住んでいた村と同じようなものだった。
「やっぱり、年寄りしかいない……」
どの村にも、気力の無いような年寄りしかいなかった。
誰も仲間になってくれそうにない。
と言うか、この人たちもたぶん被害者だ。
そうなると、無理は言えない。
「とりあえず、進もう」
僕はひとり歩いていく。
鬼ヶ島を目指して、どんどん歩いて行った。
*
しばらくすると、向こうから犬がやってきた。
「やあ、君が桃太郎さんだね」
当たり前のように話してくる犬に驚いてしまった。
そんな僕の心を見抜いたように、また犬が話し始めた。
「普段はしないさ、念話と言うんだよ。今、君の頭の直接話しかけている。一応、秘密にしておいてくれると助かる」
なるほど、どおりで口が動いていないわけだ……。
「その、僕のことを桃太郎だとわかる、あなたは一体?」
とりあえず、僕のことを知って声をかけてきた。
しかも、『君が』と言ってきたあたり、何だか僕の知らないと事で有名になっているのかな?
「まあ、君のことは動物たちの中で噂になっているからね。鬼ヶ島に、人間の宝物を取り返しに行くんだろう?」
犬はじっと僕の目を見て話してくる。
そう言えば、まだ名前を聞いていなかった。
「そうだよ。あと、君の名前を教えてくれるとうれしいな」
しゃがみこんで、お願いをする。
人にものを頼むのに、見下ろしたままじゃ申し訳ない。
犬だけど……。
「ああ、礼儀正しいんだね、桃太郎さん。僕の名前はポチ。先に名乗らなかったことを詫びるよ。僕は、ここからそう遠くないところで、正直なお爺さんとお婆さんと暮らしている」
ポチは座りながら、話している。
まだ続きがありそうなので、僕も腰かけることにした。
「君に話しかけたのは、ほかでもない。僕も鬼ヶ島に行く。理由は君と同じさ。だから一緒に行こうと思ってね」
そう言ってさし出すポチの手を、僕はゆっくりとつかんでいた。
「うん。じゃあ、よろしく」
一人仲間が増えた。
理由は同じ、大切なものを取り返すため。
だから、僕らは仲間になれた。
「じゃあ、行こう! 鬼ヶ島へ」
改めて、二人で歩いていく。
「ああ、そうだ……。ポチ、一緒に来てくれるのなら、お礼がしたいんだけど……」
腰の袋に手を当てながら、歩いているポチに尋ねてみた。
何が入っているかわからないけど、食べ物には違いない。
袋をしばらく見ていたポチは、少し残念そうな感じだった。
「桃太郎さん。僕が君についていくのは、僕自身の為だよ。感謝はもらうけど、お礼はいらないよ。ありがたいけど、遠慮しておく。それに、それは大事にとっておいた方がいい」
前を見ながら話しかけてくるポチの言葉は、僕の心を突き刺していた。
ここでお礼をする気持ちは、ポチへの感謝にちがいない。
でも、仲間ならそれは気持ちだけでいい。
目的が同じで仲間になった。
そんなポチに感謝はしても、お礼を渡すというのは、ポチの心を台無しにする行為だろう。
「ごめんなさい……。僕が間違っていたよ。そして、仲間になってくれてありがとう」
間違ったなら、謝る。
感謝は、言葉で伝える。
お爺さんとお婆さんから教わった、基本的なことだ。
「いいさ、僕こそ申し訳ない。でも、僕らは仲間になった。なら、喜びも悲しみも分かち合う事が出来る」
立ち止まって、僕を見るポチの顔は、なんだかうれしそうだった。
そんな顔を見ると、僕もなんだかうれしくなった。
なるほど、そういうものか。
一緒にいるから感じられる。
お爺さんとお婆さんとも、そうやって過ごしてきたんだった。
それを一方的に奪った鬼。
改めて、許せなかった。
「よし、行こう」
再び僕らは歩き出す。
なんだか、前よりポチが近くに感じられた。
これ以降は修正次第投稿します。




