第120話 この国の恋愛事情
この世界に転生してから7年経ち、私は今年で10歳になった。
相変わらず私は王都のいろんなところを見て回ったり、お茶会したり、冒険者活動したり、冒険者ギルドで回復魔法のアルバイトしたり、資料室で本を読んだり、王子様たちの相手をしたりしてる。
ゆっくりと優しい時間が流れていく。
前世は仕事に追われて心身共に休まる間がなかった。
凄まじい仕事量をこなさなきゃいけなかったし、そんな中でやりようないの分かってるのに効率化しろだとか、工夫しろだとか、私に落ち度があるかのようにいつも言われた。
やっとの思いでこなしても、もっと仕事が増える。
今考えると、色々とおかしい。
よく精神が壊れなかったなあ。
いや、壊れかけてまともな判断力が無くなってたのかも。まあそれより先に体が壊れて過労死したっぽいけど。
なのでこういうゆったりとした時間は本当に幸せに感じる。
しかも今の私には回復魔法がある。魔法については結構自信はあるし、そもそも魔法を使える人は少ないらしい。これだけでも多分一生食べていける。
あんな思いはもうたくさん。
だらけてるだとか、向上心がないだとか、そういうのはいいんだよ。だって、私は猫獣人。猫でもあるんだもん。
お仕事はそこそこに、私は楽しく気ままに生きるんだ。
そうそう、以前うちでお泊まり会したときに話題になったアイリの体型なんだけど、アイリは気になって家系図を調べたみたい。そしたらなんと種族がドワーフの可能性が高いってことが分かった。
実はアイリの曾祖母がドワーフなようで、ごく稀にある隔世遺伝だろうという結論に落ち着いたとか。
あまりにアイリの身長が伸びないので、アイリのお母さんであるティファニー様が不貞をしたのでは、と根も葉もない噂が貴族の間で流れたらしいけど、そこはアイリのお父さんであるグレイ様が一喝。
曾祖母がドワーフであることと、ティファニー様のピンクを受け継いだことで実の娘であることは疑いようのない事実だとして噂を払拭。
アイリに弟か妹が生まれるのは近い未来ではないかというくらいラブラブらしい。
「ふ、ふふ……。私の一件からお父様とお母様の仲がさらに良くなったのは良いんだけどね、でもね、それはそれとしてもね、アタシはこれから成長期を迎えても、胸どころか身長も今とあんまり変わらないことがほぼ確定なのよね……。そうよ、身長のわりに力や体力は結構あるし、適性属性が火と土だし、考えてみたらドワーフの特徴ありまくりよね……いえ、ドワーフが嫌ってわけじゃなく、胸と背に希望が持てなくなったことがね……」
と、瞳からハイライトが消えてたけど教えてくれた。
「あぁぁぁぁああぁぁ! まさかアタシが合法ロリをいくなんてーーー!!」
ちなみにこの世界のドワーフは、耳が尖ってたり大きかったりはしないので、幼少期は普人とほとんど同じで見た目じゃ分かんない。
大人になれば確かに多少は大人っぽさが出てくるけど、それでも女性はロリ体型のままだ。
「アタシの好みは背の高いイケメンなの。でも背の低い女性まで守備範囲のイケメンっているのかしら。っていうか、アタシくらいの背の女性が好きだったとしてもそれはロリコンじゃないかしら。相手がロリコンとか不安しかないわ……」
「アイリのことを好きになるのに背の高さは関係ないよ。アイリみたいに可愛くて活発で元気な女の子ならみんなに愛されるよ」
「そうですわ。大丈夫ですわ。この国は多種族国家ですもの。種族について寛容な殿方は多いし、恋愛や婚姻は自由。不安はございませんわ。きっと素敵な殿方とめぐり会えますわ」
種族の多いこの世界の価値観は面白いなあとどこか他人事に思っていると、アイリは納得したような表情をした。
「ああ、それもそうね。よく考えたら目の前に種族の違う二人の子どもがいるものね」
「私だね。お父さんは普人でお母さんは獣人だもんね」
そう言えば私も無関係じゃなかったわ。
「そうよ、いろんな種族がいるんだもの。いろんな属性の人がいたって変じゃないし不思議じゃないわよね。っていうか、アタシはイケメンなら相手が普人だろうがエルフだろうが獣人だろうがどんとこいよ」
「アイリは種族に寛容ですのね」
「まあね~」
「あれ? ドワーフは対象じゃないの?」
「背の低い髭もじゃはちょっと……」
「ドワーフの男性の方が聞いたら泣きますわね」
アイリは転生者だし、今まで普通に普人として過ごしてきたわけだし、きっとドワーフの人を恋愛対象としてみるのは難しいのかもしれない。
じゃあ中身が普通の人な私はいったいどんな人を好きになるんだろう。
いつか分からない未来の話だろうけど、多種多様な種族のいるこの世界なら、いつかきっと好きな人ができると思う。そう信じたい。
次回更新は6/22(金) 17:00の予定です。




