第119話 エリザベスとお泊まり会と恋バナ
フランのベッドは3人寝ても大丈夫なくらいの大きさ。
いつお泊まり会をしても良いように、フランは稼いだお金で思い切って買ったみたいですの。
快適なベッドで寝るのが大好きだから大満足と言ってましたわ。
さすがフランですわ。
「お泊まり会と言ったら、恋バナしませんと」
そんなわけで、私はフランのベッドの上でお布団を被りながら、いわゆる『お約束』とか『定番』の話題を持ち出しましたわ。
ちなみにみんなでお布団被ってますし、部屋の明かりは消したけど、ライトの魔法でうっすらとお互いが見えるくらいにしてあるから問題ありませんわ。
それに、なんといっても雰囲気は大事ですわ。
「ついに出たわね、定番中の定番、恋バナが。っていうか、なんで今まで無かったのかしらね」
「確かに。ありそうで無かったよね」
うふふ、それでは早速ですわ。
「フラン、貴女は意中の殿方はおりませんの?」
「むぁー!? いきなり私!?」
「エリー、アンタめっちゃ直球ね」
「そうかしら? それで、どうですの?」
やはり突然この手の話題を振ったときの彼女反応がとても可愛らしいですわ。
「べっ、別にいないよ?」
「えぇ~~~? 殿下たちから大人気じゃないのよ」
「フランは可愛らしいですもの。モテモテでも仕方ありませんわ」
「そうよ。こんな可愛い子がモテないなんてありえないわ」
「むぁ~~」
そう、ここ一年ほどはハロルド殿下たちと顔を合わせる度に勝負を挑まれてますが、そのほとんどはフランだったりしますの。
フランは薄っすらと明るいくらいでも分かるほど顔を真っ赤にすると枕に顔をうずめましたわ。
恥ずかしがる姿が可愛いですわ。ネコミミぴくぴく、お布団から出てるしっぽフリフリが可愛すぎますわ。
「それに殿下は初めて勝負した頃と今ではだいぶ変わられましたわ。柔らかくなったと思いますし。そう思いませんこと?」
実際、それまでは私のことも軽んじてたような言動でしたが、今では私を含めて良い関係を築いてますわ。
「いやまあそうだけどさあ。王子様はまだ偉そうにしてるけど確かに最近は結構頑張ってるっぽいし、マッシュ様は単純だけど友達思いだし、マイケル様はクールなわりに実は熱いし」
「エリーさん、聞いたかしら?」
「アイリさん、聞きましたわ」
「えっ!? なに!?」
「普段いやいや勝負に付き合ってあげてるのに、しっかりと良いところを見てますわ」
「で、誰が本命よ?」
「違うよ、全然違うよ!? なんて言うかね、こう、男の子が頑張ってるところ見るとね、よしよし、偉いねー、可愛いねー、って目線でだよ!? だいたい、普通な私より弱い人はやだもんっ」
う~ん、やっぱりフランには恋愛感情はなさそうですわね。
「うっは、同年代でフランより強い人とか、いないっしょ。それじゃ彼氏は永遠にできないわよ」
「獣人はやはり強い人が魅力的ですの?」
フランはあまり強さにこだわるようなタイプには見えませんが、やっぱり獣人は恋愛対象となると強さが大事なのかしら?
「ん~~、まあ、少しはそうかも? 実際のところは自分でもよく分かんないかも。でも、一応理由はあるよ。私は将来世界旅行がしたいし、好きになる人が強くないと一緒に行けないかなーって」
「あー、やっぱりそういうところがフランよね。マイペースというか何というか」
とても怖がりなフランだけど、それを上回る好奇心。
彼女にとってやりたいことは譲れない部分なのでしょうね。
「大体、そういうアイリは誰か好きな人はいないの?」
「あら、私も気になりますわ」
「アタシは、そうねぇ、好きってとこまでいってないけど気になる人はいるわね」
「ど、どなたなのかしら?」
こう言っては何ですけど、アイリに気になる人がいるって意外ですわ。
彼女はアクセ作りや魔道具作り、楽しいことばかり追及するタイプで、殿方にはあまり興味が無いと思ってましたわ。
「えっとね、前に冒険者ギルドで見かけた金髪美青年のライトさんよ」
「まあ!」
その方なら私も知ってますわ!
「あー……あのね、アイリ?」
「な、なによ」
「実はね、えっと、ライト君はルビーお姉さんと付き合ってるよ?」
「なん……だと……?」
アイリに無慈悲な宣告でしたわ。
「始まる前からオワタ……オワタ……」
「アイリ、婚約者はおりませんの?」
「いないわよ。アタシのこの身長は知られてるわけだし、何より変わり者令嬢として広まってるアタシに申し込んでくる相手なんていないわ。逆に最初からアタシの外見が好きだとかいう人がいたら、その人はロリコンよ。お断りだわ。……って、自分で言ってしまったー! ちっちゃくないよ!」
何やらアイリは喜怒哀楽で忙しそうですわね。
「あれ? もしかしてエリーって婚約者いたりするの?」
「ええ、おりますわ」
「な、なんだってー!」
アイリも貴族令嬢ならよくある話だと分かってますのに。
「わあ、すごい! 本当に婚約なんてあるんだね! ということは、相手がいるんだよね! だれだれ!?」
さっきまであんなに真っ赤になってたフランは私のことになったら急に目を輝かせて興味津々で聞いてきましたわ。
「ハロルド殿下ですわ」
「ん? あれ? ハロルド殿下って聞こえたけど、私の聞き間違いかな?」
「ハロルド殿下ですわ」
「うそー!! え? アイリは知ってたの!? っていうか、いつから!?」
フランは目を丸くし、ネコミミをぴんと立て、信じられないとばかりに目を白黒させてますわ。
「あー、そういえばフランは平民だから知らなくて当然だったわね。貴族の間では割と有名な話なのよ」
「アイリの言う通りですわ。そもそも、婚約者でもなければ殿下が特に用もなく暇だからと私に会いに来ることは無いと思いますわ。もっとも、フランに負けてからはフランに勝ちたくてよく来ていますけど」
「そ、そうだったんだ。ん? あれ? っていうか、王子様がエリーの婚約者なら、最初に私に好きな人がいるかって話を振ってきたとき、私が王子様のことが好きだって言ったらどうしてたの?」
「フランが本気で殿下のことが愛していて妃になるつもりがあるなら、全力でお手伝いしましたわ。例えば形だけでもファーレンハイト公爵家の養子になり、家格が釣り合うようにする。そのうえで、理由を付けて私が婚約破棄し、新たにフランと婚約すれば政治的なお話も解決でしょう。あ、養子になった場合は、私とフランは姉妹ということになりますわね」
「むぁー、そ、それはっ」
「ちょっ! エリー、アンタ何言いだすのよ」
おろおろするフランに、珍しくアイリが本気で焦ったような声をあげましたが、心配ご無用ですわ。
「もちろん冗談ですわ。前々からフランは世界旅行に行きたいって言ってますもの。妃になりたいなんてあり得ないのではなくて?」
「うん、エリーの言う通りだよ。王子様のお妃様にはなりたくないなあ。そもそも王子様がいくらかっこよくても恋愛感情は無いし。むしろ私の好みはお父さんみたいな人かなあ」
「ですよねー。ふー、びっくりした。どえらい超展開になるところだったわ」
「私もフランと一緒に世界旅行に行きたいけど、お父様たちが決めたこの婚約が枷ですの。どうしたものかしら」
「そうよねえ、こればっかりは政治的な話だから難しいわよねえ。……ん? あ、もしかしたら……」
「アイリ? どうしましたの?」
「ああ、な、何でもないわ。それよりもうそろそろ遅いし、早く寝ましょう。胸が育つには睡眠時間が必要だし」
「アイリ、切実だね」
「うるさいわよ、フラン。マリアンナ先生みたいに大きくなる可能性が激高のアンタにはこうしてやるっ」
「むぁー!」
こうしてフランをもふもふしながら夜の恋バナは終わりましたわ。
次回更新は6/18(月) 17:00の予定です。




