第114話 アイリーンは検証したい
今回からアイリ視点でのお話です。
アタシはアイリーン。
アイリーン・ムーンライト。ムーンライト男爵令嬢よ。
アタシは公爵令嬢で金髪ツインドリルのエリーと平民だけど銀髪ネコミミ娘の超可愛いフランの親友であり、そして前世の記憶を持つ転生者でもあるわ。
前世の記憶を持つと言っても欠落がかなりあるせいで、前世の私がいったい誰だかはよく分からない。多分日本人だと思う。普通に日本語話せるし。
前世と今のお父様とお母様と比較したくないし、今の自分を否定することになるから、前世の自分や家族、身の回りの人についての記憶が無くてよかったのかもしれないわ。
不思議なことに転生してからもう何年もたっていると言うのに、前世の記憶は思い出せるものは今でもちゃんと思い出せる。
魂にでも刻まれているのかしら。それとも転生者特典?
まあいいわ。
前世の記憶によると、この世界は乙女ゲー【乙女物語 ~アナスタシアと王子様~】らしく、アタシとフランは悪役令嬢エリザベスの悪質な取り巻きのポジション。
そしてもれなくバッドエンドが待ってるらしいのよね。
でも、乙女ゲーと違って現実のエリーとフランはとても聡明で良い子。
アタシの知る限りでは、この二人の人格に悪影響を与えるような人物もいない。
アタシたちは三人とも無為に人を傷つけるようなことなんてしないから、バッドエンドフラグは折ったも同然じゃないかしら。
うーん、出会ったときから二人は良い子だったことを考えると、どうしてゲームのアタシたちはあんな酷い性格になっていたのかしら?
謎過ぎるけど考えてもしょうがない。
もし乙女ゲー通りエリーとフランが酷い性格だったら、二人を何とかしてバッドエンド回避なんてできる気がしないもの。無理。死ぬ。絶対死ぬ。
とにかく現実が優しい世界で本当に良かったわ。
ただ、端から見たらアタシとフランはいつもエリーと一緒にいるから、取り巻きと言われても仕方ない部分があるかも知れないわね。
この辺はSFとかにありそうな世界や物語の収束力なのかしら?
なんか前にも似たようなことを言ってたような気がするけど、細かいことは気にしたら負けよ。
そうそう、去年三人で開発したアイテムボックスの魔法はいまだに改良を続けてる。
・紙のサイズ以上のアイテムを収納
・紙束のように同じ種類なら収納したアイテムの一部を取り出す、追加する
なんてこともできるようになったわ。
これで最初に紙を大量に収納しておけば紙が無くて入れられないってことも防げるしね。
アタシとエリーは取り出すときはアイテムボックスの紙から直接出すような感じにしかできないけど、フランだけは魔力操作のレベルが高いこともあり、紙から少し離して取り出せる。何気に便利そうでいいわ。
他には三人でいろいろと検証をしてみたわ。
・紙を破いた後にアイテムを取り出せるか
これは絵柄が合うように繋げれば問題なかったわ。
でも、酷くずれて繋げたり、紙の欠損度合いによっては、取り出せなかったり、取り出せても壊れた状態で出てきた。
ちょっとでも破れたものがダメだったら使い勝手が悪いから良かったわ。
・紙が濡れたり汚れたり、しわくちゃな状態でも出し入れ可能か
問題なく出し入れできたわ。
面白いことにアイテムを入れたあとに水洗いしてみると、汚れは落ちるけどアイテムの絵の色落ちは無かったのよね。
でもこの世界の紙は前世ほど品質は良くなく、すぐにボロボロになるので洗えないも同然だけど。っていうか、そもそも紙を洗っても仕方ないんだけどさ。
もちろん、紙がボロボロ過ぎると取り出せなかったり、取り出せても壊れた状態で出てきたわ。
・異なるアイテムを追加で収納できるか
イメージと必要魔力次第だったわ。
紙束みたいに同じものなら難なく追加で出し入れできたけど、異なるものは少なくともアタシとエリーにはできなかったわ。
フランはできるにはできたけど、イメージが複雑で頭がパンクしそうになるし、やたら魔力が必要だからやりたくないって。苦労に見合わないしそりゃそうよね。
・入れたアイテムを分離、分解できるか
ものによってはできたわ。消費魔力は大きかったけど。
例えばティーカップに入れた紅茶だけ分けて取り出せたけど、紅茶の成分と水分に分けて取り出すと言うことは無理だったわ。
まあ後者ができたら溶き卵を分離させられる、なんてこともできちゃうから、できないのは仕方ないわ。
逆に言うと、汚れとかくっついてるものならイメージ次第でなんとかなりそうって分かったのが大きな収穫ね。これ、絶対に重宝するわ。
・運動エネルギーも一緒に出し入れできるか
分かりにくいと思うけど、要は物体を勢いごと出し入れできないか、と言うことよ。
例えば石ころを落としながら入れると、取り出したときに落としたときの勢いのまま出てくる、という感じね。
これはフランだけができたわ。
アタシやエリーは手で持つものに関しては問題なくても、動いてるものや手を離したものまでは無理。
やるにはフランほどの魔力操作のスキルレベルと魔力量が必要そうだということでファイナルアンサーよ。
普通に手で押し込んだり、紙の上に乗せて魔法を使えば入るから運用に問題ないわ。
ちなみにだけど、一度フランに石ころを思いっきり投げて収納させ、そのあと収納した石ころを離れた木に向かって指向性を付けて取り出すもとい射出させてみたわ。
そしたら木に当たった石ころは「ぱぁん!」と音を立てて砕け散り、木は抉られてたのよね。
子どもと言えどもさすが獣人。フランの腕力すげえ。
投げた本人もまさかこんな威力があるとは思ってなかったらしく、「むぁー!?」って悲鳴(?)をあげて超ビビってた。
正直言って私もかなりビビったけど、そんなことよりもフランが可愛い過ぎる。
彼女がビビってるところから復活する前にエリーと一緒によしよしと撫でまくったわ。当然もふもふもセットよ。正当な理由で撫でられるの最高。
でも庭師のおじさま、木に酷いことをしちゃってごめんなさい。
それにしてもこれって武器でやったらなんちゃってゲート オブ……えっと、ゲート オブ アイテムボックスよね。
それといつかフランに武器の貯蔵は十分かって言わせてみたい。すごく言わせてみたい。
んふふんってどや顔で言わせても、恥ずかしがりながら言わせても、絶対どっちも可愛いはずだし。アタシって天才ね。
まあそれは置いといて、とにかく、勢いをつけて収納したアイテムのページには危険マークや余白にメモを書き込むなどして事故防止するようフランには言い含めたわ。
普通の勉強は好き好んでやろうとは思わないけど、魔法や魔術などファンタジーなことになると話は別。
こんな風に遊びながらやれる実験や検証ってホント楽しいわ。
次は何しようかしら?
アイリはフランに言わせたい言葉ややってほしいことがたくさんありますが、なんとか自重してます。
次回更新は5/29(火) 17:00の予定です。




