第106話 休憩と薬草採取開始
門から出てすぐにはしゃいでしまったためか、パーティメンバーだけでなく、門番のおじさんやお兄さん、たまたま居合わせた他の年上の冒険者たちや行商人たちにもとても優しく温かい視線をもらってしまった。
それ以外、西の森までの道のりは特に問題となるようなことはなく順調だ。
時々、遠くの草むらから音がするので注意深く見ると、角ウサギを見かけたりした。
資料室で読んだ本のとおり、不用意に近寄らなければ問答無用で襲いかかってくる訳じゃないことに少し安心だ。
前世と比べると明らかにでかいけど、遠くから見る分にはいくら角がついていても案外可愛い。
案外可愛いけど、お肉が美味しいんだよね……とちょっと思いながら眺めてたら角ウサギはなぜか逃げていった。失礼な。
そんなこんなで体感1時間くらいで森の入り口にたどり着いた。
西の森は王都から南に伸びる街道を途中で曲がった先にある。
「さて、ここで一旦休憩だ」
「あ~、ようやく着いたわ。それにしても入り口付近でも思ったよりも少し肌寒いわね」
「そうですわね。それに領地にある森とは全然違いますのね」
「なんかホントに森って感じがするよね。薬草の森なんて言われてるけど、すぐに見つけれるかなあ」
お父さんの休憩の合図とともに、私たちは思い思いの感想を口にする。
いつの間にか毒舌美少年執事のスチュアートさんが大きなリュックを下ろし、誰かが使った焚き火の跡を利用して火を起こしポットを温めてる。
この辺りは冒険者や行商人たちがよく利用する広場になっていた。
森に続く道は馬車が通れる程度に開けてるとは言え、街道と違ってほとんど轍のような道だ。
そんな道から少し入ったところに私たちはいる。
「さて、休憩場所に着いたら試したい魔法があるのよね」
アイリは焚き火から少し離れたところにくるとおもむろに腕を上げ、胸の辺りで掌を合わせてぺちんと叩き、しゃがんで地面に手をついた。
するとみるみる間に土が寄せ集まって盛り上がり、土はだんだんと長方形の形になっていった。そして最後には石の簡易ベンチが出来上がった。
「ベンチを作ったわ。これで休みましょうよ」
「まあ、ありがとう、アイリ」
「アイリーン様、ありがとうございます」
スチュアートさんが布を取り出してベンチに敷いていく。
「アイリ、すごい魔法だね」
「アンタ程じゃないわよ。ホントは表面を大理石みたいなきれいな石にしたかったけど、そこまでやるとしんどいし、こんなものでいいわよね」
「休憩するだけだし十分だと思うよ」
「アイリ、直前に手を合わせてたのは、なにか意味がありまして?」
「よくぞ聞いてくれました! もちろんあるわよ。魔力を手に集めることと、使う魔法のイメージになるのよ」
ドヤ顔でアイリは説明した。
「それにしてもアタシに土属性に適性があって良かったわ。魔術は燃費が良いけど決まったことしかできないから、こういう使い方ができる魔法ってホント便利よね~。ま、贅沢言えば光る演出が欲しかったけど」
やっぱりこれって前世にあった鋼の義手と義足が主人公のマンガ、それに出てくる錬金術に似せた魔法だよね。
ベンチの足元の土が素材に使われたのか地面が少し低くなってたり、所々に四角い材質で張り合わせたような錬成跡の特徴っぽさまでご丁寧に再現されてる。まあ魔法はイメージだし、あるものを利用する方が効率いいからそうなるのかも。
私も魔法が使えるし、いつかマンガやアニメにあった魔法を再現してみようかな?
休憩中、私たちはミィさんに話しかけていた。
道中必要なこと以外はほとんど話さず背景に溶け込んでたし。
ちなみに彼女は話すのが苦手なだけで、嫌いということはない。何年も見てきたので分かる。
「ミスティ先生、アタシの魔法はどうだったかしら?」
「……話には聞いていたけど魔法が使えたことに驚愕……それだけじゃなく、素材を無駄なく使えている点も素晴らしい……」
「聞いた? アタシ、ミスリルのミスティ先生に誉められたわ!」
「ええ、私も素晴らしいと思いますわ」
ミィさんの方がお姉さんだけど、アイリを撫でてるところを見ると、やっぱり子供好きの可愛いらしい人だと思う。
ついでなので私もこのゆるふわピンク頭のちっちゃい子を撫でた。いつも私が撫でられるので、たまにはこっちが撫でておこう。
そんなこんな体感30分ほどでの憩を終え、私たちは森に入っていった。
森と言っても浅い場所なので、前世の学生時代のオリエンテーリングで歩きそうな感じだ。
歩きにくいということもない。
今日、私たちが採取する目的の薬草は、ポーションの材料となる薬草と、風邪薬の材料になる薬草だ。
薬草の採取は、葉など必要な部分だけナイフで刈り取っていく。
種類によっては一見すると雑草の様にも見えるけど、薬草の特徴は座学でちゃんと学んでる。
ちなみに薬草を根っこごと引っこ抜くのは厳禁だ。次が生えなくなっちゃうし。
前世にあったミントみたいに繁殖力がヤバいものならいざ知らず、みんながそんなことしたら遠からず薬草が無くなってしまう。
なので冒険者ギルドでは厳重注意としてこれらのことを周知徹底してる。もちろん他の売却先である商業ギルドとも連携済みだ。
「それじゃあさっそく取りかかってくれ」
お父さんの合図と共に私たちは薬草を探し始める。
見つかるのかちょっと不安だったけど杞憂だった。あっという間に見つかった。さすが薬草の森。
「なんか拍子抜けするほどあっさり見つけられたね」
「ですわ。では、さっそく採取しましょう」
「りょーかいよ」
「じゃあ最初は私が見張りするね」
「ええ、お願いしますわ」
私たちは事前に話していたとおり二人が採取し、その間は私が見張り役だ。
採取に夢中になって、魔物に気づかず不意打ちを受けるだとか、お互いバラバラの所に行ってしまうのを防ぐためだ。
少し離れたところにお父さんとミィさんがいるけど、基本的には何もせず見守る方針となっている。
スチュアートさんも同じだ。こっちはすごく手伝いたそうなオーラ出しまくってるけど。
私が採取する順番になるのが楽しみだ。
次回更新は5/1(火) 17:00の予定です。




