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聖徒会 その後

作者: 麻生弘樹

ご無沙汰しております。

今回は以前、書き終えた聖徒会のその後の話です。

舞台は夏祭りとなっています。

見事、カップルになった蓮と希。

向かった夏祭りで不思議な出来事を体験します。

読んでいただけたら幸いです。

神島蓮と、女神希が付き合い始めてから、数カ月が経った。

季節は夏。

蓮達も学校は夏休みに入っていた。

ちょうど蓮は近所のスーパーから帰宅する所だった。

「ん?」

すると蓮の家の前に女性が立っていた。

間違いない、希だ。

自然と嬉しくなる。

「希!」

声をかけるとやっぱり希だった。

「蓮君、こんにちは。」

頭を下げる希。

「実は蓮君にお話が合って来たのですが、よろしかったですか?」

それに対し、蓮は

「もちろん、入りなよ。」

と家の中に招き入れた。


希をソファに座らせ、蓮は冷たいジュースを淹れてあげた。

「はい、これ。」

「ありがとうございます。」

微笑む希。

「それで、話って?」

蓮が尋ねると、希はバッグから一枚のチラシを取り出した。

「夏祭りかあ。」

それは近所の神社で毎年開かれるお祭りの案内だった。

なかなかの規模で毎年大勢の客で賑わう。

「はい。

 良かったら、蓮君と一緒に行きたいなと思いまして……。」

そこで希は少し顔を俯かせた。

「最近、蓮君と過ごす時間がないなって思ってて……。

 少し、寂しかったです……。」

「あ……。」

その言葉を聞いて蓮は罪悪感を覚える。

蓮は夏休みに入る前に行われた試験の結果が悪く、補習を受けるはめになっていた。

そのため、希と過ごす時間がなかなか取れなかったのである。

「ごめんな。

 でも、もう補習は終わったから、これからは好きなだけ一緒に過ごせるよ。」

「もう、普段から勉強しとかないからですよ。」

少し呆れ顔になる希だったが、すぐに嬉しそうな表情になる。

「でも、それなら良かったです。」

「うん。

 だから一緒に行こうよ、夏祭り。」

「はい!」


その後、話し合った結果、お祭りと言えば浴衣ということになり、二人でデパートへ買いに行く事になった。

デパートに入り、浴衣売り場に足を踏み入れる。

蓮はこれまで浴衣など着たことがなかったため、希に選んでもらうことにした。

しばらく悩んだ結果、蓮は黒、希は薄い桃色の浴衣に決まった。

「ありがとうございました。」

店員から渡された紙袋を笑顔で受け取る希。

やっぱり希は笑顔が似合ってる……。

蓮は改めて実感した。


お祭り当日。

蓮と希は待ち合わせをし、蓮は先に集合場所に居た。

初めての浴衣のため、違和感があるが気にしない事にした。

その後、希の姿が目に入った瞬間、蓮は思わずドキッとした。

薄い桃色の浴衣姿の希はこれまで以上に可愛かった。

「お待たせしてごめんなさい。」

「あ、ああ……。」

上手く言葉が出てこない。

それを見た希は

「あの、やっぱり変ですか……?」

と、不安げな表情になった。

蓮は首を思いっきり横に振ってそれを否定した。

「いや、全然!!」

そして本音を口にした。

「可愛いよ。」

そして蓮と希はお互い、顔を赤面させた。


その後、二人は色々なお店を回った。

はぐれないようにと、手を繋ぎながら、かき氷やりんご飴などを一緒に食べる。

二人は楽しさで一杯だった。

しかし、あまりにも人混みが激しいため、蓮が気付いた時には希の姿が消えていた。

「参ったなあ……。」

辺りを探し回るが、希の姿は見当たらなかった。

携帯にも何回かかけてみたが、人混みのせいか繋がらなかった。

いつの間にか蓮は神社のはずれにいた。

「さすがにここにはいないよな……。」

辺りを見回しても、ここには人影がほとんどなかった。

戻ろうとしたその時、蓮の耳にある声が聞こえた。

「ん?」

どうやら奥の方から聞こえる。

奥へ進んでいくと、どうやら誰かが泣いているらしい。

泣き声が聞こえた。

そして蓮の目に映ったのは、大きな声で泣いている男の子だった。

親とはぐれたのかな?

そう思った蓮はそのまま男の子に近付いていくと、声をかけた。

「よ、どうした?

 親とはぐれちゃったのか?」

尋ねると男の子は首を横に振った。

「じゃあ……転んで怪我でもしたとか?」

すると男の子は

「お化け……。」

とだけ言った。

「お化け?」

頷く男の子。

「僕、お化けに襲われたんだ。」

蓮は困惑した。

その時である。

突如、周りが暗い闇のオーラに包まれているのに気付いた。

「この気配、まさか!?」

次の瞬間、二匹の狼魔物が姿を現した。

「お化けってまさか?」

男の子は頷く。

「そういう事か……。」

「お兄ちゃん、怖いよ……!」

怯える男の子。

蓮は頭を撫でてやると

「下がってな。

 俺がお化けを退治してやるからな。」

そう言われた男の子は後ろへ下がった。

蓮は浴衣のポケットから赤い石を取り出し、強く握る。

瞬時に身体が変化し、炎の剣士へとなった。

「はあっ!」

勢いよく、狼魔物に斬りかかる。

素早い狼魔物はそれをかわし、飛び掛かろうとする。

それを剣でガードし、再び斬りかかる。

「素早いな、だったら!」

蓮は再び飛び掛かってくる狼魔物の隙を狙い、強烈な一撃をお見舞いする。

二匹の狼魔物は苦しそうな声を上げ、消滅した。

「ふう。」

戦闘が終わり、元の姿へと蓮は戻った。

ふと後ろを振り返ると、男の子が木の陰から蓮をじーっと見ていた。

「もう大丈夫だぞ。」

と、手招きする。

男の子は安堵の表情を浮かべ、蓮の元へ来た。

「ありがとう、お兄ちゃん!」

男の子は礼を述べた。

「どういたしまして。」

さてと、蓮はこの後どうするか考えた。

とにかく、この子の親を探さないと……。

「なあ、迷子じゃないなら親はどこにいるんだ?」

すると男の子は

「僕、パパもママもいないんだ……。」

と呟いた。

「いない……?」

だとすれば、こんな小さいのに一人で来たのか……?

どうするか考えていたその時、蓮の携帯が鳴った。


無事に希と合流した蓮は事情を話した。

すると希は男の子に優しく話しかける。

「あなたのお名前は?」

「僕、勇斗。」

と名乗った。

「勇斗君ですね。

 私は希、こちらは蓮君です。

 よろしくね。」

と微笑む。

そして希は蓮の方を向き、せっかく来たんだからと、三人でお祭りを楽しむことにした。

それを聞いた勇斗は嬉しさで一杯だった。


蓮と希の間に勇斗が入り、はぐれないようにと手を繋ぐ。

お祭りを楽しみにしていた勇斗は色々なお店に興味津々だった。

すると勇斗があるお店を指差す。

「あれ、何?」

見ると女の子が並べられた景品に向かって輪っかを投げていた。

投げられた輪っかは見事、くまのぬいぐるみに入り、女の子は嬉しそうな表情を見せる。

「あれは輪投げですよ。」

と、希が教えてあげた。

「ああやって輪っかを投げて、景品を取るんだ。」

「へえ~!」

すると蓮が

「せっかくだからやってみるか?」

と尋ねた。

勇斗は頷いた。

お店の人にお金を払い、輪っかを5個もらう。

勇斗はやる気満々な様子で景品に狙いを定め、輪っかを投げた。

投げた輪っかは狙っていた景品のずれた所に落ちた。

落ち込む勇斗。

そんな勇斗を二人が応援する。

「頑張れ~!」

「勇斗君、落ち着いて!」

しかしその後も輪っかは狙った所とずれた場所に落ち、いよいよ最後の一個となった。

蓮は希に

「希の風の能力で助けてあげたら?」

と聞いた。

しかし希は

「こういうのは自分一人の力でやらないと駄目なんですよ?」

と言われてしまった。

結局、勇斗は景品を手に入れることが出来ず、がっかりしていた。

そんな勇斗に二人はお面を買ってあげた。

いくらか元気を戻す勇斗。

しばらくお店を周るうちに勇斗はますます笑顔になっていった。

「勇斗、お祭りはどう?」

すると勇斗は満面の笑みで

「僕、こんなに楽しいの初めてだよっ!」

答えた。

それを聞いた二人もつい嬉しくなる。

その後三人は神社の長い階段の手前に来ていた。

階段を降りようとすると、勇斗の足が止まった。

「ん?

 どうしたの?」

「どうしましたか?

 勇斗君。」

すると勇斗は

「この階段、怖い……。」

と声を震わせた。

見るとその階段は急な階段になっており、子供が下るには確かに怖いかもしれない。

すると二人は、だったら別の道を使おう。と、その階段から離れた。

楽しいお祭りもそろそろ終わりに近付いてきていた。

最後は壮大な打ち上げ花火が行われる。

「いよいよ花火かあ。」

「はい。

 楽しみですね!」

と、そこで勇斗の方を見ると、勇斗は俯いていた。

「勇斗、今度はどうした?」

すると勇斗は口を開く。

「お祭り終わっちゃうの……?

 そんなの嫌だ。」

「勇斗君……?」

勇斗は続ける。

「だって、お祭りが終わったらお兄ちゃんとお姉ちゃんとお別れになっちゃうんでしょ?

 そしたら僕また、一人ぼっちになっちゃう……。」

勇斗は泣いているようだった。

それを聞いた希はだったらと、ある事を思いつく。

「だったら、また来年も一緒に行きましょう。」

と提案した。

「そうだな。

 勇斗、約束する。

 また来年も三人でお祭りに行こう。」

それを聞いた勇斗は顔を上げる。

「本当?」

二人は頷く。

「約束!」

と指切りをした。

そこで蓮がふと思いつき、携帯のカメラで記念写真を撮る事にした。

三人で並び、笑顔の表情でシャッターを押す。

勇斗はいつの間にか笑顔だった。

それを見て二人も笑顔になる。

その時、三人のいる場所が再び闇のオーラに包まれた。

「これは、魔物の気配……!」

「ち、またかよ……!」

二人は勇斗に下がってるように伝える。

蓮は再び炎の剣士へと変身し、剣を構える。

そして獅子の姿をした魔物と、またもや狼魔物が姿を現した。

蓮はすぐさま斬りかかり、希は両手の平から風の波動を繰り出す。

吹き飛ばされた狼魔物が隠れていた勇斗に気付く。

「勇斗君!!」

勇斗に向かって襲い掛かる狼魔物。

しかし、突如放たれた氷と光の波動によって狼魔物は消滅した。

見るとそこに立っていたのは、同じく聖徒会メンバーの氷神敬介と神山仁だった。

「敬介!会長!」

「やあ。

 この付近で異様な気配を感じてね、それでやってきたという訳さ。」

集合した聖徒会メンバー。

「あとはあいつだけだ。

 一気に決めようっ!」

「ああ!!」

四人がそれぞれ属性の技を繰り出す。

放たれた技は一つになり獅子魔物を直撃した。

そのまま悲鳴を上げ消滅した。


「ありがとな、敬介、会長。」

「おかげで助かりました。」

蓮と希が二人にお礼を言う。

「当然の事をしたまでさ。」

それに対し、敬介は微笑んだだけだった。

「さてと、そろそろ花火大会が始まるんだろう?

 向かわなくていいのかい?」

と仁が言うと、二人は思い出したかのように

「そうだった!」

「では、参りましょうか。」

と花火大会の場所へと向かおうとする。

と、そこへ勇斗が姿を現す。

「勇斗君……、無事でよかったです。」

「怪我はないか?勇斗。」

すると勇斗は

「お兄ちゃん、お姉ちゃんありがとう。

僕、今日はとても楽しかった。

幸せだよ。」

次の瞬間、勇斗の身体が消えかかっているのを目にした。

「勇斗!?」

驚く蓮達に対し、勇斗は全てを話す。

勇斗は去年、親とこのお祭りへ来た。

途中、神社の階段から転げ落ち、そのまま勇斗は亡くなった。

しかしお祭りをどうしても楽しみたいという気持ちがこの世に未練を残したのだ。

そして、お祭りを楽しんだ勇斗はこれで成仏できるという。

「僕、今日の事、絶対に忘れない。

 お兄ちゃんや、お姉ちゃんの事も絶対忘れないから。」

そして

「さようなら。」

そう言うと勇斗の身体は光となって空高く昇って行った。

「勇斗……。」

「勇斗君……。」

二人はそれを見つめるだけだった。


さっき撮った写真を見て二人は驚いた。

勇斗の足が映っていないのだ。

勇斗は本当に幽霊だったのか……。


「勇斗、楽しんでくれたみたいだね。」

蓮が言うと希も

「勇斗君にとって大切な思い出になるはずです。」

と言った。

そこへ仁がやってきた。

敬介は妹の薫と花火を見るということで、蓮達と別れていた。

三人で撮った写真を仁はしげしげと眺め、こんなことを言った。

「何だか、君達……、家族みたいだね。」

「……え!?」

仁のいきなりの発言。

二人は顔が一気に赤くなるのを感じた。

「ん?

 僕、何か余計なこと言ったかな?」

などと、とぼけた挙句、

「それじゃ、あとは二人でごゆっくり。」

そう言い残すと、仁はどこかへ去って行った。


「……。」

「……。」

お互い、終始無言のままだった。

やがて沈黙に耐え切れず、蓮が口を開いた。

「花火、まだかな……。」

「そうですね……。」

そして再び沈黙。

すると今度は先に希が口を開いた。

「私、嬉しかったです……。

 さっきの会長の言葉……。」

「え?」

そこまで言うと、希は覚悟を決めて、話す。

「このまま蓮君と大切なパートナーになって、それでいつか、二人だけの子供を産んで……、幸せな家族になれたらなって。」

そこまで言うとさすがに恥ずかしかったのか、顔を俯かせる。

蓮はしばらく無言だったが、やがて希の名前を呼んだ。

名前を呼ばれた希が顔を上げると、すぐさま蓮は希の唇にキスをした。

「!!」

蓮は笑みを浮かべながらこう続けた。

「なろうよ。

 幸せな家族に。

 それで、その幸せを俺が必ず、守って見せるからさ。」

「蓮君……。」

そのまま二人は抱き合い、もう一度キスをかわす。

その瞬間、夜空に花火が上がった。

それはまるで二人の幸せを祝うかのように盛大な花火だった。


いかがでしたでしょうか?

ちょうど今の時期が夏なので、こんな話を書いてみました。

暑い日が続きますね……。

どうか、皆さん熱中症には十分、ご注意を!!

水分こまめにとりましょう。

それではまた!

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