表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/135

39、順調な日々(ノリコSide)

『紫陽花ブルース』はレコードの売り上げがぐんぐん伸びて、信じられないことに私はデビュー1ヶ月にして、トップ10入りを果たしてしまった。

また予想外に、B面に収録した『I was born』の評判が良く、有線のリクエスト数を伸ばしていた。

『I was born』はアメリカの曲で、私が気に入ってカバーしたものを店で歌っていたのだけれど、今回結城プロデューサーの意向でB面にアレンジした形のものを収録したのだった。

アレンジしたといっても、伴奏がピアノだけのシンプルなものに変えただけのことで。

でも、思い入れのある曲なので気持ちを込めて歌ったから、リクエストが多いと聞いてとても嬉しかった。



「リノ!やったぞ、『ミッドナイトスペシャルショー』の出演が決まった!『I was born』を歌ってくれって。新人で、あの番組から声がかかるなんて、聞いたことないぞっ!」


南川社長が電話を切るなり興奮した声で、そう捲し立てた。

打ち合わせの為事務所に来ていた私は、真矢さんと2人でお茶を淹れていて、驚きで思わず2人顔を見合わせてしまった。


『サザンリバー』は芸能プロダクションだと聞いていたが、蓋をあけてみたら所属歌手は私1人で、後の所属は政治評論家や芸術家、学者といった文化人しかいない。

六本木にあるスタイリッシュなビルの1フロアに事務所を構えていて、手掛けている仕事は主に講演やイベント、個展など・・・正にアカデミックな雰囲気のプロダクションだった。

なので、どうして私をこのプロダクションに?と疑問に思ったのだけれど、完全にミッチーの圧によるものらしい。

レコード会社からは大手の芸能プロダクションを勧められたらしいが、既に私に対して兄の感覚になってしまったミッチーは、自分の意見が通るプロダクションでなければ安心できないと、自分の意見が通る後輩のうちがやっている『サザンリバー』に私を頼んだ。

南川社長も元々ジャズヤブルースといった洋楽が好きだったので、慣れないながら一生懸命私のために頑張ってくれているけれど・・・。

いや、私、プロダクションどこにするとか聞かれていないよね?確か、ミッチーからプロダクションは『サザンリバー』だから、って決定事項で言われただけだよね。

まぁ、南川社長も真矢さんも穏やかでいい人だし、事務所の雰囲気もとてもいいから文句はないのだけれど。


「へぇ、ノリコ凄いじゃん。まぁ、俺の曲じゃないのがちょっとシャクだけど。でも、『ミッドナイトスペシャルショー』なら、『I was born』の方がしっくりくるか・・・なら、衣裳とか・・・雰囲気も変えた方がいいかなぁ?」


ミッチーが私からお茶を受け取り一口ゴクリと飲むと、少し考えながらそう言った。

私はまだ信じられない気持ちで、思わず手の甲を抓ってみたけれど、やはり痛い。

ということは現実という事で。

でも、『ミッドナイトスペシャルショー』って、売れているのは勿論実力も伴っている人じゃないと出演できないっていう、歌手にとってはあこがれの番組で―――


「ええええええっ!?」


今頃、症状が現れた。

そんな私にギョッとする真矢さんと、ほんとびっくりだよねとほほ笑む南川社長。





濃紺の光沢のあるシンプルな生地。

しかも、全体的に体にフィットする細身のラインのドレス。

骨太の私には似合わないと思っていたのに、何故かバストとヒップのボリュームが程よく見え———


「うん。似合うよ。最近顔つきも体つきも締まってきたから、こういうドレス着こなせるようになったじゃない。顔、体型がプロになったってことだよ。まぁ、顏は眉とつけまつげとアイシャドウで別人メイクだから、ファニーフェィスでもクールで個性的なイイ女系に仕上がってるし。『I was born』の曲とマッチしてるかも。」


別人メイク、ファニーフェイスって・・・ミッチー遠慮なしだな。

まぁ、確かにそうなんだけれど。


六本木にある、トシキ・エムラというブランドの滅茶苦茶洒落たアトリエに連れてこられた。

トシキ・エムラというのは、パリコレでも人気のある日本人デザイナーだそうだ。

聞けばいつもエミ姉が店で着ているドレスもここのもので・・・と、驚いていたら。

トシキ・エムラとは月に2~3度『Chicago』に飲みに来る、50代の常連さんだった。


「えぇっ!?江村のおじちゃんの店っ!?って、六本木からわざわざ鎌倉まで飲みに来てたの!?えええっ!?こっちの方がもっと洒落た店あるのに、何でっ!?」


人はいいけど、黒ずくめで良くわからないファッションのひげ面の小汚いおじさんだと思っていた人が、有名なファッションデザイナーだったとは。

そういえばこの人叔母ちゃんの事大好きで、叔母ちゃんが東京の店で働いていたの頃からのお客さんだったって言っていたな。

江村のおじちゃんが駆け出しのデザイナーだった頃、気に入った叔母ちゃんが店で江村のおじちゃんのドレスを着て宣伝したんだそうだ。

その流れでエミ姉もドレスを着ているそうで。


「僕の方こそ、びっくりだよ。あのノリコちゃんがこんなに綺麗になって、歌手なんて。史子ママには売れない頃から本当に世話になったんだ。応援するから、よかったら『紫陽花ブルース』のスーツの衣装も、僕に作らせてよ。今の衣装、テーラーで作ってるでしょ?もっとラインを絞れば垢抜けるから、是非まかせてくれない?」


ということで、ありがたいことに一流デザイナーの先生(といっても江村のおじちゃんだけど)が、衣装担当になってしまった。



ご存じない方が多いでしょうが、レコードはCDと異なりA面・B面といって両面に曲が収録されていました。EP版レコードは、A面がそのレコードの題名となる曲で、B面がサブの曲となっていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ