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20、爆弾投下(ノリコSide)

「うーん、どうしようか・・・ブルースだから、ドレスかな?うーん・・・。」


会議室で結城プロデューサーが、人気のファッション雑誌と私を見比べながら、ピンとこない顔でつぶやいた。


「私、ドレスとかって似合わないんじゃ・・・。」


エミ姉がいつも店で着ているようなシンプルだけどラインの綺麗なドレスに憧れるけど、スタイルのいいエミ姉とちがって、骨太の私じゃ女らしいラインはでないし、自信もない。


今日は私の衣装決めもかねて、どういった雰囲気でデビューするか、いわゆるコンセプト決めの会議だ。

会議メンバーは、結城プロデューサーとミッチー。

と、何故か最近よく連れていかれる六本木の美容院のオーナーの金子さん。

金子さんはミッチーと同年代と思われる、無精ひげがお似合いのワイルドな男性だ。

そして、ミッチーの知り合いだという私が所属するプロダクション、サザンリバーのダンディな南川社長と、マネージャーを担当してもらうその息子さんの真矢まやさん。

真矢さんは、ミッチーの学校の後輩なのか、ミッチーには絶対服従な感じだ。

でも、真矢さんは柔道かプロレスの選手かと思うような頑丈そうな巨体に、細くて鋭い眼光の強面で。

どう見ても長身だけどやせ型、甘い顔立ちのハンサムなミッチーの方が、真矢さんより弱そうに思えるけど・・・でも、ミッチーはあり得ないくらいバカ力だし、六本木なんとかっていうところの、『タランチュラ』とか呼ばれてるって聞いたし。

タランチュラって、この前テレビで放映された『世界の脅威特集』という番組で見た、メッチャ大きくて肉厚な恐ろしい毒蜘蛛のことだよね。

まぁ、ミッチーが自分は確かに六本木なんとかで『タランチュラ』って呼ばれてるって肯定していたし、恐ろしい毒蜘蛛って異名をつけられるくらいなんだから、強いんだろうけど。

普段のエミ姉に甘えるミッチーみてるとそれがピンとこないし、だから何だって話で・・・結果、ミッチーもそれ以上話さないから、聞くこともないかってそのままなんだけど。


いや、それより・・・一応女である私の衣装を決めるのに、何でこの会議には女性スタッフがいないのだろうか。


そんなことをつらつらと考えていたらミッチーが私の顔をジッと見つめて、とんでもないことを言った。


「俺、BB・キング好きなんだよね・・・ノリコも好きだって言ってたよねぇ。そうだ、ノリコ、ドレスじゃなくて。紳士用のダブルスーツで歌おうか。もちろん、ノリコに合わせて仕立てたスーツだよ。ノリコは背が高いし、肩幅もしっかりしてるし・・・あ、斜めにボルサリーノとか被ったら格好いいと思うよ?」


「はい?・・・あの、BB・キングって・・・男性じゃ――「あっ、それいいなぁ!ナイスアイディア!じゃあ、男装するなら・・・個性的なメイクの方がインパクトあるんじゃないか?アイライン切れ長に引いて、つけまつげをしっかりつけて、真っ赤なマッドタイプのルージュで・・・そうだな、ヘアスタイルは横髪をなでつけて、リーゼント風にして・・・普段のノリコちゃんとは違った顔を作ろう!」


性別を無視した信じられないコンセプト案をミッチーが提案すると、私の戸惑う言葉を無視して、金子さんが興奮したようにアイデアを連発した。


もう口を挟めず、オロオロする私を置き去りにし、話はどんどん進められて行って。


「スーツなら、私のお勧めのテーラーを紹介しますよ?」


と言い出した南川社長もこの案に乗り気の様で。

結果、ミッチーの案が私以外賛成で通り、そのまま南川社長お勧めのテーラーへ連れていかれた。





「ノリコ、似合うな!いやー、やっぱりスタイリスト頼まないで正解だったよ。満がスタイリストはいらないって言うから、頼まなかったけど、ノリコの長身の体型もあるんだろうけど、ドレス着るより逆に女っぽいっていうか・・・満、作詞作曲だけじゃなくて、スタイリストもできるんじゃないか?」


メイクとか髪形のバランスを見るため、取り合えず調整してもらったイージーオーダーのスーツを身に着けた私を見て、結城プロデューサーが手放しでほめた。

確かに、最近筋トレやランニングで少しは引き締まったけど、それでもあまり女性的とは言えない体型の私が、何故かスーツを着ると逆に女っぽく見える・・・?

そんな鏡の中の自分を見ながら首をひねる私に、ミッチーが理由を教えてくれた。


「やっぱり、紳士用スーツって男性用なんだよ。だから、いくらノリコが肩幅があるって言っても、それは女性にしてはってことで、男性用につくられたスーツを着ると逆に華奢に見えるんだよ。それに、女性なのに男性用を着るっていうタブー感覚?・・・それが、背徳的に色っぽく見える効果もあるかな?」


何でもないことのように淡々と説明してくれるミッチーだけど、改めて彼のセンスは凄いと私は尊敬のまなざしを向けたのだけれど。

まさか、次の瞬間・・・爆弾を落とされるなんて。


「でもさー、スーツの力だけじゃないと思うんだよねー。ノリコここ最近急に色っぽくなったけど?ヤスシ君と何かあったー?」


思いもよらない鋭い突っ込みに、熱が顔に集中しているのを意識しながら、ニヤリと嗤うミッチーから必死で私は目を反らした。




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