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10、一番懐いたのは(ノリコSide)

今更ですが、このお話はブルーシリーズのノリオとヤスオの両親の話ですので、時代背景が携帯もコンビニもない昭和の時代です。とは言ってもその時代も雰囲気で描いていますので、そんな感じなんだーとゆるく思いながら読んでいただけると助かります。また、今回、ノリコサイドが山場で長くなりすぎて3話くらい続きそうです。この後キリのいいところまでUPできればと思いますが・・・どうでしょうか。よろしくお願いいたします。

玄関のドアを開けたら、幼馴染のマサルが制服姿で泣きそうな顔で立っていた。


「マサル、学校行かなくていいのかい?用事があったんなら、チャイム鳴らしなよ。」


朝の7時半。


マサルは横須賀の湊学園高校に通っている。

いつもなら鎌倉駅で電車に乗る時間のはずだ。

それに私の方も朝から東京に歌のレッスンに通っているって、知っているはずなのに。

レコード会社のテストに合格したって言ったら、あんなに喜んでくれていたし・・・。

気は弱いけどその分気遣いのできる奴だから、こんな時間に来るなんて余程の事だろうと思った。


「ミッチー、悪いけど、今日のレッスン1人でいってくれる?結城さんに急用で今日は行けないって伝えて。」


そう言いながら私はマサルの手を取って、玄関へと招き入れた。


マサルは近所の大きな酒屋の三男坊で末っ子、私の小学校、中学校の同級生だ。

どこからか話がもれて親に捨てられたっ子って、学校ではやし立てられて友達もできなかった私と、いつも一緒にいてくれたのがマサルで。

マサルは体が弱くて勉強も運動もイマイチだったけど、年寄りや下級生・・・自分より弱い人にさりげなく親切にできる根っから優しい子だった。

幼馴染というより、家族に近い兄弟のような存在だ。


「え・・・本当に、つきあってるんだ?」


履いたばかりの靴を脱いで家に上がると、おずおずと玄関に入ってきたマサルが玄関にいたミッチーを見て、目を見開いた。

中学からひょろひょろと縦に伸び始めたマサルの目線がミッチーと同じくらいで、だから益々じっとミッチーを見つめていた。

先週末店に遊びにきたマサルはミッチーと会って、紹介をしていた。

そんなマサルにミッチーは、エヘヘとはにかみながら。


「うん、そうだよ。それに、史子ママがここに住んでいいって言ってくれたから、店も手伝うことにしたし、宜しくねー。」

ニコニコと笑いながら、暢気な声でミッチーがそう答えた。


信じられないことにうちの店に連れてきたあの日から、ミッチーは家に泊まり続けていて既に10日くらいになる。

家に夜泊って朝になると私と一緒にレッスンの為東京に出かけるのに、帰りは必ずついてくる。

レッスンの途中に抜け出して自宅に帰り、少しずつ着替えや身のまわりのものを持ってきて。

そして店もそつなく手伝い、ステージで私と一緒に歌ったりギターを弾いたり、そればかりか家では掃除や重い荷物を運んでくれたり、病気でふさぎがちになった叔母ちゃんの話相手になってくれたり・・・というか、いつの間にか叔母ちゃんのことを史子ママと呼んで、すっかり懐いてしまった。


いや、一番ミッチーが懐いたのは―――


「あれ、2人とも、出かけたんじゃなかったのぉ?・・・マサルまで、どうしたんだい?そんな顔して、ん?何かあったのかい?取り敢えず、上がんなよ。朝ごはん食べたのかい?なんか飲むかい?ああそうだ、マサルは小さいころから元気のない時は、ハチミツ入りのホットミルクだよね?作ってあげるから、ほら元気だしな?」


エミ姉だ。


「エミちゃん、エミちゃん。俺以外の男にそんなに親身になったら、やだー。」


靴を脱いで、エミ姉に抱き付くミッチー。


「あのね・・・マサルは、弟みたいなもんなの。ノリコと小さいころからずっと一緒で、いつも2人そろって面倒見てたんだから。」


エミ姉がため息をつきながらも、まんざらでもない顔で抱きついてきたミッチーの腕をポンポンと優しくたたく。

まぁ、美男美女だから絵にはなるけど、こういうパターンって珍しい・・・。


そう、あの日・・・信じられないことに、エミ姉とミッチーはお互いに一目惚れをしたらしく。

その前に私が家のことを話していて、エミ姉の話題になった時もっと聞きたそうにしていたり、レッスンに毎日持参していたエミ姉特製スタミナ弁当をうらやましそうに見ていたり、何となく私を通じてだけど、ミッチーはエミ姉に会う前からもの凄く好感を持っていたようで。

叔母ちゃんもエミ姉も根っからのお人よしというかお節介体質で、そういうのを面倒と思う人もいるけどミッチーはそれが心地良いらしく、すっかりここが気に入ってしまったようだ。

エミ姉がつけたミッチーというニックネームもすっかり定着し、店にオシャレでハンサムなミッチーがいるだけで女性客も増えたようで。

そればかりか店に男手があると、気の荒い客のあしらいもスムーズで。

ミッチーは長身だけれど細身で顔も甘めの都会的なハンサムだから、一見腕っぷしが強そうには見えないのだけれど、いざとなったら雰囲気がガラッと変わって暴れそうになった客の腕を掴んで客の顔をじっと見ただけで、大抵の客は大人しくなる。

エミ姉が言うには、随分ヤバい場数を踏んでいるっぽくて、前にヤスシが店で大暴れした時にミッチーがいたらなー・・・と笑っていた。

つまり、うちとしてもミッチーが来てくれてからかなり助かっている状況で。

それに・・・なんとなく家に帰ろうとしないミッチーに孤独の影が見えて、私も叔母ちゃんもエミ姉もはっきり帰れとは言えなくて、現在に至るわけだ。

何しろ、ミッチーがすごく楽しそうで。

初対面の時の無表情でクールな男と同一人物とは思えないほどで。

まぁ私も、ミッチーとは音楽の好みやその他も話が合って、こんな兄ちゃんがいたらいいなと思うし。

エミ姉は、今まで顔だけの(クズ)男とつきあってばっかだったから、ミッチーとだったらもしかしたら幸せになれるかも・・・と期待している。



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