狭間 ライソについて
やあ。作者の無色願だ。ここは、物語の節目節目でちょっとした……いや、ちゃんとした解説部分をしていこう、という場所だ。いろいろとネタばらしにならない程度にぶっちゃけていきたいと思っている。必要ない、本編を早く読みたい、という人は読み飛ばしてしまっても構わないが、非常に細かい部分がよくわからないままになってしまうかもしれないので、お暇な時に少しだけ目を通していただけるならば幸いである。まあ、そうとはいえ一人だと味気ないし寂しいから、とある人を呼んできたよ。
「初めまして。Sandra・Talianiと申します。以後、お見知りおきを」
サンドラは、度々登場するBAR・voceのマスターだ。女性だけれどね。
「今回は、ライソについての話をするのでしたね」
嗚呼。ここライソは、世界観的にはスチームパンクで、もともと『稲垣市』という名前だったのを、マフィアつながりでイタリア語にして出来たんだ。
「『稲』しかイタリア語になっていませんが」
細かいことは気にしないでおくれ。
スチームパンクというのは、うーん……一言で表すなら『蒸気機関の発達したレトロでメタリックな芸術』かな?
「さあ。貴方は適当ですから、にわか知識をひけらかしてもらっても為にはなりませんよ」
仕方ないだろう。私は『広く浅く』をモットーにしているのだから。
「はあ……ええと、更に言うと、大体ヴィクトリア朝くらいの様相をしているようです。蒸気機関の発達によって、大気は汚染され、青い空は失われていることが多いでしょうか。このライソも例外ではありません」
まあ、作者的には、皆様には詳しいことは各々調べて、スチームパンクを好きになってくれると良いと思っている。
「貴方はその前に、この前買ってきたスチームパンク辞典のような本を読んで、勉強してください」
うん。ただ、今は時間が取れないからまた後で……
えー。ライソは四方を高い壁で囲まれた、いわゆる閉鎖都市だ。縦7km、横6kmのスーパーフラットな土地に、様々な建物が建った場所だ。東西方向に七本、南北方向に六本の大きな道が走っており、東西の方に奇数、南北の方に偶数の目が割り当てられている。さらに、地図に書かれていない裏路地が無数に存在し、中には近道もあったりするのだとか。そして街の外は、不毛の地が広がっている、と言われているそうだ。
「碁盤の目状のこの街では、交差点から交差点までが1kmです。そして、この分割された42㎢の土地にそれぞれ1〜13の番号が振られています」
これは、大体治安の良し悪しと、どんな建造物があるかによって変わっている。数が小さいほど中心部にあり治安も良い、といった感じだ。ここはまとめて書かせてもらおう。下の挿絵は地図だ。
一番街:街の中心にあたり、ライソじゅうを支える蒸気大機関と、その上にそびえ立つ大時計塔があるだけの場所。一般の立ち入りは禁止されている。
二番街:貴族たちの暮らす場所。整備されており治安も最も良く、さらに神社や教会もある。行商人が、定期的に物を売りに五、六番街からやってくるところから、別に平民たちが通れないという訳ではないようだ。
三番街:司法機関が集約された場所。警察署もここにある。
四番街:行政機関が集約された場所。政治は、貴族院と衆議院の二院制で執り行われている。
五、六番街:商業地域。五番街は東西に、六番街は南北に離れている。大きなマーケットなどがあり、此処で買えないものはない、とされている。
七番街:農業地域。畜産や、人工太陽による作物の温室栽培などが行われている。
八番街:工業地域。研究や蒸気機関の開発などが行われている。この街とって最早欠かせない場所。
九、十番街:住宅街。アパルトメントが立ち並ぶ場所。大概の人は此処から仕事へ向かい、此処へ帰ってくる。またここには、学校なども存在している。
十一、十二、十三番街:スラム街。最も治安が悪い場所。破落戸や、浮浪者などがたむろしている。好き好んでここで暮らす人もいるらしい。
こんなところかな。
「そうですね」
建材には、大概レンガが使われている。
文明レベル的にはどうかな?
「文明レベルは……何でしょうね?電気はまだ発明されておらず、蒸気機関がかなりのレベルまで成長しております。具体的には、パソコンや電話は既に開発されていますが、大規模な機関を必要としているので余り持ち歩くことはできません。電話の代わりに、無線機や手紙が広く使われています。移動手段の説明は……」
あっ、それはしておいたよ。
「わかりました。しかし、きっと貴方は馬車の話はしていないでしょうから、しておきます。この街の道は、馬車の走れる幅がございません。よって、使われなくなってしまいました」
それは、忘れていた。ありがとうございます。
「いえ。そうですね。後は、これを読む皆様の家にあるようなものは一通りあるかと思われますが」
エアコンと、空気清浄機と、テレビはブラウン管だし、コンロは蒸気式だし、全然同じではないよ。
「そうですか?」
うん。中々、説明が難しいね。この辺りは、その都度解説していった方が良いか。
そういえば、歴史とかってどうなっているのかい?
「歴史、ですか……申し訳ございません。ここに暮らす者は皆、街が完全に外界との交流を断つ以前のことを、あまりよく覚えていないのです」
え?皆?
「はい。資料もほとんど見つからず、よく分からないことが多いのです」
だそうだ。……決して手抜きなわけじゃ無いんだ。良いね?
「アッハイ」
うん。
「……暦こそは、これを読んでいる皆様と一緒ですよね?」
その通りだ。ただし春、秋は比較的過ごしやすく、夏には油混じりの黒い雨が頻繁的に降り、冬は凍るような寒さが特徴だね。更に、一年を通して時折灰の雪が降る日がある。
「読んでいる皆様や貴方の住む場所では、四季折々で色々な風景の移り変わりが見られるのでしょう?羨ましいです」
まあね。花粉が辛いけれどね。
それで、だ。本題はこれから。殺人鬼化ウイルスについては、どういったことになっているのかね?
「まだあまり研究が進んでおらず、現在詳しく調査中だという情報が、八番街の研究所より入ってきております。我々ライソの住民は、原因不明の病であること、罹れば一週間から十日の潜伏期間を経て発症すること、その間に徐々に様子がおかしくなり、果ては衝動的に人を殺すようになることしかわかっておりません」
なるほど。これからの調査による、と。それは今後語っていくとしようか。
今回はこんなところかな。
「はい」
次回は、物語に登場する人物達の詳しい情報の公開でもしようかな。まあ、いつもの癖でかなり語ってしまってはいるので、人数の多い彼らの情報をまとめる、ということになるかな。
「わかりました。資料を作って、お待ちしております」
ありがとう。それでは、本編をお楽しみください。