共通 リリロラルレシエン
【一章:早々たる邂逅、故に至難】
――――ここは神の気紛れから作られた世界“リリロラルレシエン”
暗黒の闇より出し、悪しき魔の力と、明白の光がら成る神の力が入り乱れた。
ある刻、代替わりの時期を迎えた女皇は伝承に基づき、夫達とともに祭壇に一本の毛髪、爪の欠片を乗せる。そうして司祭が祈りを捧げる。
「はじめまして、次の女皇です」
―――――三日で皇女、そして時代の女皇となる少女が生誕した。
この世界では、ニンゲンは産まれない。
供物を捧げることで、神が気紛れで創造したものがその場に現れる。
「新女皇・リアナ・グ・ド・星・アリエリナ陛下の御成りーー!」
緑イグーサ製の床、料理を乗せたティーブレ。
城内では皇女の現れにより、盛大な祝辞を開いていた。
彼女が時代女皇となるには、条件があった。
一つは魔法を学べるまでの知識、扱う肉体の成長、魔力、精神力。
そして、夫となる5人の男を探すこと。
それはすべて一人でこなすという規定があった。
皇女・アリエリナは祝辞を終えて、すぐに旅へ出る。
アリエリナは存在を悟られぬように、頭から身体全体を覆い隠せる薄手の茶布を巻いた。
あくまでも馬車は使わない。徒歩でなければ、その存在を見逃す為だ。
第一夫の条件は、他を圧倒する膨大な“魔力”を宿す者。
時代皇女の生錬成には、様々な材料が必要とされる。
それは1000年に一度、封印が解かれる魔を、強さを持つ皇女が倒すためだ。
強き夫から身体の一部、無くても困らない簡易な部位を捧げ、神より創られた最高傑作である皇女が祈る。
1000年単位でそうすることで、力が継承され、その膨大な力で魔を倒す。
そして、今がその1000年。
魔が目覚める刻――――。
一時間ほど探索を進めると魔力の気を感じる。
(このあたりから膨大な西魔力の気配が……)
いま感じたのは西エリアの気質のある魔力。
それは草木に阻まれた林の中にあり、向かうことは躊躇われたが、私は意を決して入った。
あたりの景色は、ほぼ葉の緑と土の茶。
代わり映えのない林をただひたすら進みゆく。
だんだん魔力が近くに迫る。
駆け出し、早めにおいつかんとした。
ようやくたどり着くと、開けた場所に小さなログハウスが一つあった。
その家の中から、魔力を大きく感じる。
私は戸をたたく。一分と待たずに、家主が現れた。
「どちらさん?」
「私は――――」
家にあげてもらい、皇女であること、五人必要な贄の夫候補の一人に選んだことを告げる。
「はあ……皇女や1000年封魔の話は知ってるよ。なんたって超偉大で有名な大魔導師・ガーミディオ様だからな」
彼は女皇の仕組みについて、大まかな事は理解しているようだ。
「知らないです」
その力も申し分ないと思う。
「聞くところによれば、最近誕生した皇女だろう。なら仕方ないな」
だが、自ら己を過大評価し、傲った態度をとるのはいかがなものか。
「力を借りたいだろうが、この通り、俺は忙しい!」
勢いよく、リズミカルに追い出された。
ここは後にして、次の候補を探しにいくことにする。
次に向かったのは、南エリア。
ここでは南の魔力を持つ者がいるはずだ。
強い魔力の波を感じる。海と砂浜の潮風のよう―――
「おっと……」
「……!」
海辺を歩いていると、褐色の男人にぶつかった。
「すみません」
「いや、こっちこそ」
ほんの一瞬、彼から強い魔力を感じた気がした。
しかし、それはすぐに消えた。
「おーいなにしてんだアンディ、早くいこうぜ」
「ああ」
いまのは勘違いだったのだろうし先を急ぐ。
●目覚めし魔神
ガーミディオに断られディツを抜けたアリエリナは南エリアのタチグァイハからしばらく歩き、中央エリア・ジペングチーガウナに着いた。
ここの特産は金、周りは目に痛いほど光輝いている。
「なんだいあの髪、黒いよ」
この国は金髪が多いため、アリエリナの黒髪をめずらしがっている。
カゴから出てきたのは着物の美男。
「そなた、みかけない顔ですね」
「私は……」
「なにやら事情がおありのようで……往来では憚れるお話ならば、屋敷にいらしてください」
―――
「私はリアナ・グ・ド・アリエリナともうします。」
「私はエルドです。……もしやあなたが新たな女皇ですか?」
「はい。ご存じでしたか」
「先代の女皇の夫の一人が、私の伯父なので」
なら話は早いと、アリエリナは協力を要請する。
「もし私にも貴女に必要な力があるのならば……ですが」
彼からは特に力を感じない。なら違うのだろうか。
私は次へ移動する。雪の降る北のエリア・ロルスィアノルスェフィンに着いた。
あたり一面銀世界、外を歩く彼等は厚着だが、私は彼等とは違い寒さを感じない。
「アンタ、そんな格好でなにやってんの?」
「え?」
紫髪の少年が私の手をひいて、即座に木小屋に入った。
「旅の人。あんなところでつっ立ってたらすぐに死んでたよ」
「はあ……」
―――パチパチと暖炉が燃える。
「僕はカルバ。アンタは?」
そういえば。あまりの急さに気がつかなかったが、彼から微弱な魔力の波動を感じる。
「私は……」
事情を説明すると、少年はぽかりと口を開けたまましばらく動かなくなった。
「あの?」
「はあ……1000年に一度復活する魔神を倒すため……なにそれ、馬鹿じゃない?」
女皇ということは辛うじて信じてもらえたが、ただの村人には魔神の類いは馴染みがないらしい。
「でも本当なのよ」
「魔神なんて伝承にすぎないだろ。1000年前ってところがもう怪しい」
いきなり私の全てを否定されたが、彼は己の目で見たものしか信じないタイプのようだ。
しかたなく次のエリアに行くことにした。
東エリアは砂漠と暑さとオアシスのあるイインダアビアンだ。
「よってらっしゃいみてらっしゃーい!」
テンションの高い橙髪の青年が刺激臭のする食べ物を売っている。だがどことなく食欲をそそる。
「そこのお嬢ちゃんどうだーいうんまいカレェだよォ!!」
「……!」
カレェに打ち消されて気がつかなかったが、彼からなんらかの素質を感じる。
「あの!」
「お、なんでぇ。もしかしてカレェより俺がいいってか?」
「それはないですが、お話があります」
●
彼はフラームドと言って、様々な仕事をフラフラしているらしい。
「魔神を倒すために女皇様と旅ねぇ。アンタの夫になれば生活に困らないとは言うが、そういう生優しい金の稼ぎ方は性分に合わねーな」
「……貴方はその一人だと思うのです。魔神を倒すまでで構いませんから、同行願えないでしょうか」
「可愛い女の子の頼みを無下にゃしたくねぇが……んなすぐにゃぁ、ちょっと返事できねえや。色々と仕事もあるしな」
「そうですか……」
――五角形に別れた各エリアへの入口でなにやらまがまがしいオーラを感じた。
ついに、魔神バルヴィダールが目覚めたのだろう。
私はダメが元々で、彼の元へ協力を願いにいった。




