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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

闇の王と勇者と強者どもは笑う

作者: molドレッド
掲載日:2015/11/04

う~ん、感慨深い。


闇に支配された世界、紅き月がその世界を灯す。


そして地上では壮絶な戦いが始まっていた。


闇の王の吸血鬼。


勇者の騎士。


歴戦の戦士、強者。


剣と剣による衝撃や、魔法のぶつかり合いでその場は平らな地面とクレーターだけになっていた。


勇者が斬りこんでくるのを闇の王は喜々としながら受け止めて、周りの強者たちからの連撃を、体から湧き出る暗き靄を自在に扱って防ぐ。


闇の王は嗤う。


自身の傲慢さ、自身の力、自身の凶悪さを理解していながらも歯向かってくる存在に、世界に、嗤う。


まるで試されているようで、未だ自身が未熟者であるようで、自身が自身として確立していないようで、己への怒り、憎しみ、嗤いすべてを許容して、今一度己を己で支配する。


「ガウェイン、我は嬉しいぞ。貴様のような者と戦えて、世界から敵とみなされて!!」


「私は君みたいな存在と戦えても嬉しくない、ね!」


光速で加速して世界を崩壊させるようなエネルギーの光の衝撃波を闇の王に放つ。


闇の王はそれを嗤いながら受け止めるがどす黒い血でできた魔剣がエネルギーの過多に耐え切れず溶解して直撃する。直撃した瞬間に大爆発が起きて、キノコ型の煙と強者たちですら踏み耐え切れない余波が発生する。


強者が起き上がって闇の王がいた位置を見る。


未だ煙があって、よく見えないが溶岩ようにドロドロとした地面を驚愕した。


「....やった....か....?」


バッと勇者の方へと向くが勇者は真っすぐとした目つきで中心地に目を向けている。


『ニンゲン、ワレガ、ナニカ、ワスレテイルナ?』


ドロドロとした溶岩の中で暗い闇が浮かび上がり形作る。


闇の王が復活した。


「ふざけるな!!いくら貴族級の吸血鬼だってここは聖域内に固定しているんだ!さっきのでやられないなんて!!化け物だ!!」


「ほう、化け物か。当り前だな、我は化け物なのだからな。」


闇の王は嗤いながら、その強者に闇を敷き詰めたナニカを放った。


強者はあまりの速度に反応できず、周りの強者も反応できなかった。冷たいナニカがスローモーションで迫ってくることを認識しながらも体が固まっている。


諦めそうになったその瞬間、光が一閃した。


「つれないな。君の相手は私だろ?」


光り輝く剣を闇の王へと向けて勇者は笑う。


「そうであるが、暇にさせる相手を待つ甲斐性は我にはない。」


「そうか、では埋め合わせをしてあげよう。」


再び光速状態へと移行して闇の王へと斬りかかる勇者。


今度はそれを紙一重に嗤いながら避けて、最高位魔法を放ってくる闇の王。


強者といえども何が起こっているかはすべて理解できることはなく、ただその二人が舞を踊っているようにも見える。速さが根本から違う。スペックが違う。天才とうたわれている者たちをあざ笑う怪物二人が狂い笑いながら踊っていた。



「やはり、アーサーは来ないか!あの英雄は貴様らが負けること想定しているな。」


「違うな、君と戦うんだ。私たちは元からそういうものは考えていない!!」


自分の主が騎士の死を想定しているそんなことは当たり前だ。できていない、当然あるという考えなど我らの英雄は持ち合わせない。だからこそ、我らはかの英雄に従っているのだ。


1%の希望を手に入れてくれるために。


無能ではない王のためなら存分に死ねる!!


「なあ、ドラキュラ。君は何のために生きてる?」


油断なく構えながら勇者は闇の王に問いかける。

闇の王は、失笑し、一瞬にして勇者の懐に入り掌打する。


「我に問いかけるな。」


半身で躱しある程度の衝撃を減少させたが、それでも手痛い一撃を食らった。

すかさず、治癒の魔法を仲間がかける。


「いや、問うよ。君は..!?」


「二度は言わんぞ。下賤な者よ。我は貴様らの上に立つものだと忘れたか?」


さらに速度とパワーを上げて掌打する。

闇の王は冷徹な目で膝をつく勇者を見下す。


勇者は改めて膝に力を入れようとするが、力を加えようとした瞬間に体に重圧がかかる。


「そのまま、跪いていろ。」


プレッシャーや恐怖感とは違う。


真に物理的な重圧が勇者にのしかかる。


そして、蹂躙が始まった。


勇者を助けようとして果敢に斬りかかってくる強者は成す術もなく殺され、勇者を助けようと呪術を解く強者は靄で具現化された化け物たちに喰われ、勇者を守っていた強者は盾ごと貫かれ、勇者を癒す強者は何もできずに闇の王の連撃に斬殺される。


しかし、強者たちは一様にして絶望や苦渋を顔に出さなかった。


何故か意思が固まった目をして嗤いながらに死んでいく。そのことに闇の王は疑念を抱きながら勇者へと顔を向けようとするが、首に痛みが走り、視点が天空へと飛ばされる。


闇の王は素早く自身の首を手に入れ、再び勇者を見ようとすると、勇者は立っていた。


重圧が足りなかったのかと思い、最大限まで引き伸ばすが勇者は依然として立ったままである。闇の王はニヤリと嗤って好敵手に賛辞を贈る。


「ほう、貴様。仲間を喰らったな?」


「分かってしまうかい?伊達に生きてないね。」


喰らうとは、ソウルイーターと呼ばれる呪法で怨恨を持つ者同士が勝てない敵への対抗策として編み出したもの。喰らえば喰らった分だけ強くなる。喰らった者が強いほどに強くなる。


ただ、闇の王は嗤う。


「失笑だな。貴様はソウルイーター程度で私に勝てると思ったのか?」


全てを覆い尽くすような闇の津波が意思をもって勇者を襲う。


勇者はそれを護符の護りで防ぐが、闇は浸食し始めて護りが無くなりそうになった。たまらず、勇者はその場から飛び出すが、その瞬間に闇の王が勇者を噛み殺そうとした。突然の奇襲に対しても勇者はとっさに避けることに成功する。


「....。」


勇者は右腕に痛みを感じだした。

見なくてもわかる。もうそこに腕はないのだから....。


「これが貴様らと我との差だよ。」


つまらなさそうに卑しいものを見るかのようにして闇の王は嗤う。


「いや、なに....。そんなことは初めからわかっているよ。」


勇者は左手で剣を持ち改めて闇の王へ立ち向かう。


「そんな状況であってなお正義を貫くか、ガウェイン。」


闇の王は嬉しそうな顔をして嗤う。


『誉めてやろうか?』


歴代の化け物の中でも一二を争う怪物が心の底から称賛した。


貴様は勇敢な騎士だ、まさしく勇者にふさわしいと。


だからコロス。


「結構だよ。ドラキュラ。」


「ではなんだ?何が欲しい?富か?名声か?栄誉か?力か?それともあの・・・」


闇の王の言葉を遮って衝撃波を放った勇者は笑いながらこう言う。


『それは語ることか?』


闇の王は一瞬真顔になってそして、再び笑う。


次に言葉はいらなかった。


両者は息を合わせたかのような攻防しながら傷ついていく。


しかし、勇者は手負い、闇の王は不死。どちらが負けるかは目に見えていた。




勇者の左手がとうとう闇の王に斬り飛ばされる。




闇の王は魔剣を勇者の首元にやる。


それを気にせず勇者は笑いながら闇の王へ問う。


「君は何のために生きている?」


「....?」


ここにきての余裕は何だろうかと闇の王は不審に思い、今更ながらに気づく。


勇者の剣の宝玉に。


五つあるうちの四つが光っていたことに。


自身の体のいくつかの再生不能まで追いやられた傷が五芒星を描いていることに。


「私はね....、明日のために生きているんだよ。」


そう言って勇者は息絶え、剣に最後の五つ目の宝玉が光る。


勇者は笑って死んでいく。


「くはははっはっは!!そうか、封印か!くははっはははは!!!」


剣が自ずと光りだしてそこから巨大な五芒星を描いた異次元へのゲートが現れる。


闇の王は嗤いながらにして鎖につながれる体の動きが取れない自壊するエネルギーさへ奪われて、目の前の五芒星へと吸い込まれる。


最後に偉業を成し遂げた勇者へと目を向けて辞別を述べようとする。


「我は何のためにだと....それはな・・・・」


最後に何か言おうとした闇の王であったが五芒星に取り込まれて異次元へ封印された。








闇の王の討伐後。


万人が鎮魂の手法で1人の勇者と4人の強者の像に花束や装飾品を置いていく。


そしてその五人の像の目の前の台に猛々しく凛々しい人物が立つ。


「まずは皆の者、ここに集まってくれて感謝する。」


彼の者の名はカリバーン・アーサー・ドラク二ル。


英雄的な偉業から王になった人物である。


「闇の王は討伐された。しかし、尊い犠牲のもとでだ。」


皆がしんみりとした空気になり、中には泣き出すものまでいる。


「余を恨んでもよい。命を出したのは余じゃ。」


王は手をギリギリと握りしめて手から血を流しながらも素面で喋る。


「余は恨まれてもいいが、忘れないでほしいことがある。」


皆は王の言葉に耳を傾けて真意の籠った眼差しで見る。


「奴ら五人の願った夢。明日のために生きるということを諦めないで欲しい。」


「決して、明日の為の今日という犠牲を無駄だと思わないでほしい。」


「今日という日が来る昨日を忘れないでほしい。」


王は涙さへ出さずに大きな声で皆にそう言った。


だが、皆気づくのだ。皆気づいてしまう。声が叫んでいると、嗄れていると、悲しみに満ち溢れていると。


「以上だ。皆、大儀であった。」


王は壇上を降りて馬に乗ろうとするとメイドがそれを阻む。


「王様、お手を....。」


「うむ、問題ない。」


そう言って顔を見せずして王はメイドを突っぱねるが王の手を見て痛ましく思いメイドは再度お声をかける。


「ですが....。」


「うむ、問題ない。」


メイドは渋々引き下がり一礼して王のそばを離れる。


王は無言で馬に乗って駆けていく。


「ありがとう、我が騎士よ。来世にて幸あらんことを。」


王の通った道はほんの少し湿りがあった。



もう一度見てる方は相すみませぬ。

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