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姫神様のお買い物

 レイアとマッキンは揃って宿を出た。

 王都はマッキン達と同じように旅の準備をする勇者達で、混雑していた。

「何を買いましょうか。」

「ポーションとか、キャンプ道具は『しょしんしゃとくてん』で貰ったから、とりあえず、武器とかかしら。この街は、服とかアクセサリーとかは沢山置いてあるんだけど、『ちゅーとりある』用の街も兼ねてるから、武器屋は最低限のものしか置いてないんだけど、どこも混んでるかしらね。」

 武器屋と書かれた建物は、何軒かあり、レイアの言う通り、そのどれもが勇者達で賑わっていたが、レイアは一番奥まったところにある寂れた店を探し出して入った。壁には蔦が絡まり、入り口の壊れかけのドアには蜘蛛の糸が伸びていた。正直、マッキンは入るのを躊躇って、レイアを見たが、レイアは街にある武器屋はどれも同じよといい、ずんずんと入っていったので、仕方なくマッキンも後に続いた。

「いらっしゃいませ。勇者さんですか。」

 マッキンの予想に反し、出迎えたのは若い町娘だった。そして、店の外見に反して、剣、斧、槍、鎧など武具はツヤツヤとしており、この娘が仕事を完璧にこなしている事を物語っていた。

「私達の武器を見繕って欲しいんだけど。」

「畏まりました。剣士様と騎士様ですね。でしたら当店でご用意できるのはこちらです。」

 この世界では、武器や防具として使えるものが職業により異なる。人が際限なく武器を使わぬようにという神の加護だというが、例えば、レイアのような剣士は、片手剣、バックラー、胸当てしか着られないし、騎士であるマッキンは剣、シールド、鎧しか、着られない。王都は最も魔界から遠い王国の心臓部であり、色々な種類の強力な武器が必要なことはないのか、町娘はこちらの希望を聞くこと無く、慣れた様子でかなりの重量がありそうな、剣と盾と鎧を軽々と机の上に並べていく。

「剣士様には、アイアンレイピア、ウッドバックラー、ウッドブレストプレート。そちらの騎士様には、アイアンソード、ウッドシールド、レザーメイル。」

 レイアは確認もせずに買うわと言って、すべてを腰についていた小さなバックにしまった。

 男が、背負って運ぶのが大変な程の量を入れても、バックの大きさは変わらず、重さも軽いままのようだった。マッキンはこれも『姫神の力』として受け止めた。

 店を出たところで、レイアが腰のバックから、マッキンの装備を出して手渡した。装備に苦戦するレイアを尻目にマッキンは手馴れた様子で手早く装備をつけ終えた。手に持った剣もしっくりと馴染んでいる。

 しかし、マッキンは今までのような感覚のズレを感じることはなかった。本人も主人であるレイアも気づかない、実はグランド・クエストが出た時点で、マッキンは『知識の適合』が終わり、完全にこの世界の騎士となっていた。

「レイア様、合わせ方にコツがあるのです。」

 マッキンが、軽くレイアの胸当ての場所を直すと、すぐさま、青い光が現れてレイアと一体化した。

「ありがと。そうだ。あなたにこれを渡しとくわ。」

 レイアが布で出来た小さなポーチをマッキンの手に乗せた。

「『あいてむぽーち』よ。どんなものでも大きさや重さにかかわらず、しまえるわ。あなたのは10個の物しかしまえないけれど。私のもあるし、大丈夫でしょう。もう、ポーションとさっきの服は入れておいたから。街中では盾はしまっときなさい。」

「さて、次は服屋ね。マッキンにはどんなのが似合うかしら。」

 レイアは朗らかに、そして、かなり素早い身のこなしで、隣の服を扱う店に消えた。マッキンはレイアの最後の言葉に驚いて、慌てて後を追った。店は閑散としており、客はいなかった。

 この世界において、この世界において、旅や戦闘で付く汚れは、一定時間で『乾いて』元通りになる。服の着替えを持つということは王侯貴族や勇者たちの道楽だった。従って、主人に仕える騎士の分際で替えの服があるマッキンは、相当な贅沢者となる。

「私には、すでに鎧を買っていただきましたが。」

「ダメよ。隣村まで、何泊か泊まりよ。鎧なんか着てたら『むれ』ちゃうわ。」

「戦闘時以外、鎧の着用が認められないのなら、服は今着ているものもありますし。」

「これから、旅に出るのに、鎧とそれ一着で過ごすつもり。」

 レイアは、少しムッとした表情をしたが、状況がいまいち飲み込めないマッキンはコクリとうなずいた。

「マッキン、あなた『むれる』とか『あせくさい』って言葉わかる。」

 マッキンはどちらも聞いたことがなく、知らないと答えた。

「じゃあ、汚れるっていうのはわかるでしょ。旅には土とか雨とか泥とか付き物だし。」

「その程度の汚れなら、それほど時間は必要ないかと思いますが。」

「じゃあ、気分よ。あなたに服を与えるのは、主人である私の気持ちの問題。」

 マッキンはレイアが騎士って案外面倒くさいのねと小さく呟いたのを聞いて、少しドキッとしたが、レイアの買い物を邪魔しないという貴重な教訓を得て、黙った。

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