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召喚された男

 突然、男は暗闇の中で、何やらぶつぶつと唱える男の声と女のはしゃぐ声を聞いた。

 無論、場所など知らない。

 やがて、男は暗闇の正体が自らのまぶたである事に気がついたが、目を開けようにも、身体は重く、全く力は入らなかった。

 耳だけが外の様子を伝えてくる。

「いよいよ、私の冒険が始まるのね。」

「おめでとうございます。レイア様。間もなく目覚めるでしょう。騎士はこちらでよろしいですか。一度、絆を結ぶと、解除出来ませんが。」

「もちろん。お願いします。」

「では、初めの設定がありますので、しばし、あちらで。」

「じゃあ、終わったら呼んでください。」

 女の足音が遠ざかり、ドアの閉まる音がして、男はようやく目を開けることが出来た。

 男は薄暗く、狭い部屋にいた。無論、男に場所の心当りなどない。

 頭から布をかぶったような不思議な格好をした男がすぐ近くに跪き、小声で話しかけてくる。

 顔も表情も年齢すら、わからなかったが、どこかで聞いたような声だった。

「おい。俺は『しょうかんじゅつし』のアンドレだ。ここでのお前の名前は『ゆーず・まっきん』。『ゆうしゃ』レイア様の騎士として『しょうかん』された男だ。ようこそ、『こーでりあ』へ。」

 アンドレと名乗った男は男の聞きなれぬ単語を多用して、状況を説明してくれたが、男にはさっぱり理解できず、自らの名前ですら正しいものなのか判断がつきかねた。

 男のそんな様子を見てアンドレは優しく微笑んだ。

「騎士として、皆、召喚されたものは記憶を無くしている。混乱してるところ悪いが、俺は役目としてお前にこの世界について話さねばならないし、お前はそれを受け入れなくてはならない。大丈夫だ。これでお前はこの世界を受け入れられる。」

 アンドレは男の頭に手をかざした。アンドレの手が緑色に光り、光は男の頭に暫く降り注いで消えた。

 男の中に訳の分からない文字列がすっと入ってきて、男は自らが騎士ユーズ・マッキンである事とこの世界について認識した。そうして、緑の光がゆっくりと小さくなり、やがて消えると、アンドレは子供に尋ねるかのように相変わらず優しい声音で聞いた。

「さて、マッキン。ここはどこかな。」

「ランドリア大陸のコーデリア王国、王都コーデリア。」

 マッキンはすらすらとそう答えたが、なぜ答えられたかは自分でもわからなかった。質問の答えはなぜか、自動的に頭に湧き上がってくる。

 アンドレが質問を続ける。マッキンは頭に浮かぶままに答えていく。

「それでいい。マッキン。では、君の使命は何かな。」

「主人、勇者レイア様を助け、魔王を倒すこと。」

「では、勇者とは何かな。」

「我が主人にして、死を超越し、この世界と異界とを行き来しながら、この世界を平穏に導くもの。」

マッキンの淀みない完璧な答えを聞いて、アンドレは、少し気味悪く、ニコリと笑った。

「よし、世界の理が入ったってことは大丈夫そうだね。では、そのドアより出て、主人と対面するが良い。しばらくは、こんな感じで知らないものを知っているとか、矛盾があると思うけど、しばらくすれば『適合』するからね。身体が覚えてるっていうのかな。」

 相変わらず事情の飲み込めないマッキンは、少し抵抗するように、そんなもんですかといったが、アンドレは話は終わりだとばかり、この部屋に唯一あったドアを開けた。土埃の匂いと光が差し込む。

 マッキンが外の光に気を取られている内に、すでにアンドレの姿は何処にも無かった。ただ、どこからとともなくアンドレの声だけが聞こえる。

「レイアに何かあったら、お前はこの世界から帰れないからな。」

 今までとは一転した恐ろしい声だった。

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