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十二月二二日の放課後。
僕は、知らない女子へ返事を伝えるために、彼女の下駄箱の前に居た。
午前の内にさっきゅんにクラスと出席番号を聞いておいたのだ。
もちろん、休み時間に僕がさっきゅんとやり取りをしていれば目立ってしまうので、そんなことはしていない。授業中に筆談で訊いた。
実は僕の前の席がさっきゅんの席なのだ。普段はヒトがよく集まってそこで話しているので、とても居心地が悪いハズレの席だと思っていたが、今回ばかりはこの位置関係が役に立った。
不幸な状況に助けられた。
人間万事塞翁が馬。
不幸と思えることが、後になってみると不幸とは限らない。
まあ、今回はこの瞬間だけ役に立ったと言うだけで、僕の不幸はこれからも絶えないのだが。
そんなわけで、ここ、下駄箱である。
いつも持ち歩いているスケッチブックにあらかじめ断りのメッセージを印して来た。そのページを切り離し、適当に四つ折り。
学校の下駄箱とは言え、他人の空間に無断で立ち入るのは気が引ける。ここは校舎の東側だから沈みかけの光も届かず、薄暗くて、場がひっそりしていて、まるで自分がしてはいけないことをしているような後ろめたさを感じさせている。
早く終わらせてしまおう。
扉を開けると、中に入っていたのは学校指定の上履きだった。もう下校しているらしい。それなら明日の朝には気付くだろう。ちょうど約束の期限通りだ。
手紙を入れようとして、手が止まる。
一度手元に戻す。
四文字だけ書き足して。
今度は躊躇なく入れて扉を閉める。
これで終わり。
なんだ、大したことなかったな。これならもっと早く行動してもよかったか。
そうして帰路に着いた日の翌日。
二三日。
彼女は学校を休んだそうだ。
風でも引いたのだろうか?
結局手紙は、約束の日までには届かなかったと言うことか。
……まあ、仕方がない。
……。
……はぁ。
いやいや。
僕に振られたから帰ったのか。
それじゃあ、僕が悪いみたいじゃないか。




