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藤木悠①

藤木悠①【恋人の一癖】


登場人物

藤木悠.天海寺霙


●ノーマルラブ

●幼なじみ

●婚約者


本章には上記の要素が含まれますので苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

■高等科二年B組+

藤木悠(フジキハルカ)





『今日の放課後会議室集合な~\(≧▽≦)丿真魅と草太にも伝えといて♪』




今日の最終授業、7時限目の始めに岡里先輩からメールが来た。


俺と親友の草太と真魅は毎日放課後会議室でだらだらするのが日課になってしまっている。


先輩も時々顔を出しに来るけど、集まったら集まったで女の話しかしないし。


会議室集合って言っても、またくだらない話なんだろうな。


生徒会執行部にほとんど仕事なんかないから。



先輩のくだらない話を予想しながら俺は短めのメールを返信する。




『了解しました』




草太にはよく『悠ってメールの返信冷たい~』とか言われるけど、簡潔に返信して何が悪い。


絵文字とか記号ってなんか鬱陶しくないか?




「あ~、悠ちゃんまたクールな返信してる~」




送信画面と睨めっこしている俺の隣りから陽気な声が割り込んで来た。



隣りにいるのはクラスメートの天海寺霙。


霙は俺の婚約者であり、現恋人でもある。



俺と霙は家が隣り同士で先祖代々から古い付き合いをしていて、風習やらで子供の頃から婚約が決められていた。


真魅も草太も、幼なじみであることは知っていても、恋人同士であることは知らない。




送信が完了して携帯電話をパタリと折り畳むと、霙が俺の手を緩く握ってきた。


今は7時限目の自習時間。

教師が教室にいないのをいいことに、俺と霙は学校の屋上で自習をさぼっていた。




「メール誰に送ったの?真魅君?」




俺の指に自分の指を絡めながら、霙はのんびりとした天然口調で親友の名前を発した。



また、真魅か。


霙は俺と一緒にいると、何かと真魅のことを気にする。






今日は真魅君に会った?とか

真魅君ってどんな話するの?とか

真魅君彼女いるのかな?とか



指を絡め寄り添う霙を横目で見ながら聞こえないくらい小さく溜め息をついた。




「残念だな。岡里先輩だ」




俺はいつも通りの冷たい口調で質問に答えた。


冷たい口調は癖みたいなもので、優しい言い方なんか忘れてしまった。


それでも、霙はそんな俺を嫌いになったりしなかった。


俺は普通に話しているつもりでも相手にとっては不快みたいで、しょっちゅう同じ質問をされた。



『ねぇ、怒ってる?』



怒ってないし。

心の中で何度言い返したことか。


いつしかそう言われるのが苦痛になって、あまり友達とも話さなくなって。

女子はおろか男子の友達もみんな離れていった。


けど、そんな俺でもあの3人は好いてくれた。



小等部に上がってから草太と同じクラスになって、中等部でも仲良くしてくれた。


俺がずっと悩んでいた冷たい態度も草太は「そんなもん気にすんな!」って笑い飛ばした。



高等部から編入してきた真魅も学園に馴染めないみたいで始めは孤立していた。


俺と草太が声をかけたらすぐに仲良くなった。


真魅は俺の短所を「すごく素敵だよ」と言って長所に変えてくれた。



そして婚約者の霙は……。


霙は何も考えてないんだろうな。


こいつ……天然だから。



俺の苦悩も知らずにボーッとした表情で首を傾げて見上げている霙。


深いこと考えないでフワフワしてるこいつが羨ましくて、いつしか好きになった。


でも、何も考えてないからこそ俺に悩ませる要素が一つだけあった。



「真魅様、今頃どこでなにしてるかなー?」



まただ。

また、真魅の話題。


何を隠そう、霙は真魅のファンクラブ会員だ。


普通、恋人がいるのに男のファンクラブに入るか?

よりによって恋人の親友なんて……。


ま、霙の場合、やりたいことを本能の赴くままに行動してるんだろうけど。




「そんなに真魅が好きなら、放課後一緒に来るか?毎日会議室にいるから」




嫉妬はしてない。

真魅は男なのに綺麗だし、性格も(少し天然だけど)良い。


ファンクラブができるのも納得がいく。

だから深い意味はなくて、ただ霙を会議室に誘ってみただけだ。




「だ、だめだよ!個人的に接触するのは禁止だって言われちゃったんだもん!」




噂に聞くファンクラブのルールってやつか。


なんてくだらないんだ。


霙は両手と首をぶんぶんと横に振ってかたくなに拒否した。




「そんなもの気にするな。もしお前に何かするような奴がいたら俺が行くから」




くだらないルールが気に食わなくてサラリと言ってしまったが、言い終わってから自分で気付いて恥ずかしくなった。



……くさいセリフ。


俺にこんなことを言わせるのは後にも先にもこいつだけだな、きっと。




「ふふふ、ありがとね。悠?」




俺が恥ずかしくなったことを知ってか知らずか、霙は柔らかく笑いながら礼を言った。


笑われると余計に言ったことを後悔した。


悶々と自己嫌悪に入っていると、不意に霙が近付いてくる気配がしてすぐにそっちを向いた。




「!!」




気付いた時には霙が目の前にいて、俺の唇に自分の唇を重ねていた。


こんな場面でも不思議と冷静でいる自分。


ゆっくりと離れていく霙を食い入るように見つめてしまう。




「私は悠が好きだからね?」




何を考えているのか、霙は満面の笑みを湛えながらそう告げた。



まさに不意打ち。


自分からキスするような女だとは思っていなかったから。


それにこのキスは、俺と霙が恋人同士になってから初めてのキスだった。



霙の笑顔を見つめていたら、思わず俺も笑ってしまった。


それを見逃さなかった霙は更に嬉しそうに笑って、もう一度キスをした。



今度は俺も目を瞑って、霙の頭に手を回し引き寄せながら二回目の口付けを味わった。



本当に何を考えているんだかさっぱりわからない。


でもそんな霙の存在が心地良い。


霙も俺を理解し、好いてくれてる。



今の俺も、これからの俺も、

こいつにハマッて、溺れていく。







■Next

悠×霙のテーマは

『愛し合う二人の見えない壁』

霙は天然のあまり、悠を嫉妬させてることに気付いてない。

悠もそれが嫉妬だって自覚してない。

うまくいっているようでも透明な溝ができてるって感じです。

悠と霙はすでにカップルなのであまり続編は書かないと思いますが、悠も霙もちゃんと活躍しますので今後ともよろしくお願いします。








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