表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

加暮真魅①

加暮真魅①【お見合い学園】


登場人物

加暮真魅.麻澄草太.藤木悠


●ノーマルラブ

●官能表現無し

本章には上記の要素が含まれますので苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

■高等科二年A組

加暮真魅(カグラマミ)




国立見合学園(コクリツミゴウガクエン)


幼、小、中、高、大学部と繋がるマンモス規模のエスカレーター式の学園。



特定の収入以上、日本の平均収入レベルではとても入れない、いわゆる「金持ち学校」である。


生徒は皆、裕福であり高学歴。


そんな生徒達とお付き合いがしたい、結婚したい、という理由で見合学園の入園希望者は年々増えているらしい。



『この学園に入れば最高の結婚相手が見つかる』



いつしかそんな都市伝説まで出回り、いつしか見合学園は「お見合い学園」と呼ばれるようになった。

学園自慢の桜の木が満開になり、何度目の春を迎えたことだろうか。


今日も桜は静かに風にふかれながら僕達生徒を見守っている。





++++++




「…え?お見合い学園?」



高校2年生になった春。

僕は自分が通っているこの学園が「お見合い学園」と呼ばれていることを初めて知った。



「マジで知らなかったのか?じゃあなんでこの学園に来たんだよ?」



まるでそのため以外は無用と言うような口振り。

親友の麻澄草太が飽きれた口調で質問してきた。


僕は児童施設育ちだから、小、中学校は公立の学校へ通っていた。

高校に入るにはたくさん勉強して奨学金とか学費免除してもらえる所に行くしか手段がなかった。


運良この学園に合格し、学費免除が認められた。


条件は二つ。

常に学年首席であること。

学費免除者だと他言しないこと。


これさえ守れば僕は高校を卒業できる。

親友の草太には悪いけど、学園との約束は破れない。



「お見合い……する、ため?」



僕は自分も首を傾げながらあやふやな返事をした。



「なんだ、やっぱりそうなんじゃん。ウチもオヤジがうるさくてさ~。幼等部から無理やり入れられたんだよ」



草太は軽い溜め息をつきながら愚痴を言い始めた。


この学園はエスカレーター式で、ほとんどの人が幼等部から上がってきているから、僕みたいに途中から入ってくる人は珍しいみたいだ。



「くだらないな。人の価値は金と学歴じゃない」



僕と草太の向かいから、もう一人の親友、藤木悠が週刊誌を読みながらきっぱりと告げた。


僕と草太と悠は学園の会議室内にあるソファーで寛ぎながら雑談していた。


まぁ、会議室って言っても実際ここで会議をやった試しはない。

会議室なんて名ばかりで、僕ら生徒会執行部の溜まり場と化してしまっている。


悠も草太と同じく幼等部から学園にいるみたいだけど、「お見合い学園」とゆう名目が気に食わないらしい。



「まぁ、俺もそんなつもりないけどさ~。彼女くらいは欲しいよなっ」



ニッと歯を見せながら笑って草太は頭の後ろで手を組んだ。


悠も何も言わずに小さく頷いていたから、僕も小さい声で「うん」と告げた。


「真魅はいいじゃん。エールがいるんだから、可愛い子選び放題だろ~」


「え?そうなの?」



草太は羨ましそうに僕を見るとハァッと溜め息をついてそう言った。


お見合い学園と呼ばれているだけあって、人気な生徒にはファンクラブなんかもあったりする。


世界一男女の奪い合いが激しい学園だなんて煽る生徒達もいて、毎月ファンクラブ会員数を確認してランキングで発表させたりしている。

誰が考案したのか不明たけど、見合ではファンのことを「エール」と呼び、独自のルールなどを築いている。

そしてエールの数は、学園非公認にも関わらず生徒のステータスの一部になりつつある。


ただ、僕にエールがいたなんてたった今知ったんだけど…。



「エールが何百人いようと、一緒にいたいと思える女が一人もいないんじゃ意味がないだろ」



パタリと閉じた週刊誌を机に投げながら悠が話に釘を指した。


僕は悠の考えと同じだった。

エールがいてくれることは嬉しいけど、その中に惹かれる女の子がいないんじゃあんまり意味がない気がする。



「そうかぁ?俺は羨ましいけどな。エールがたくさんいる人って選り取り見取りしてるって感じだし」



再び小さい溜め息をついて草太は悩ましげに言った。

草太がどんな人達を指しているかは僕も悠もすぐにわかった。


生徒会本部役員の人達のことだ。


僕ら生徒会執行部の上には、高等部運営の大半を占めている「生徒会本部役員」という人達がいる。


事実、本部の人達が行事やら風紀やらをほとんど管理しているから、僕ら執行部に仕事はない。


下っ端執行部は誰でも入れるけど、生徒会本部役員だけは特別で、学園側から直々に選ばれたエリートのみが存在している。


生徒会長、副会長、書記、経理。


毎年選ばれる4人は必ず家が資産家、才色兼備。


当然のことながらお見合い学園の多くがこの4人のエールであり、嫁婿の座を狙っていると言っても過言ではない。


けど、中には僕や悠みたいにまったく興味のない人もいるんだけどね。



「真魅~、エールの中に可愛い子いたら報告してくれよ?その子がお前の彼女になるかもしれないんだからさ」



草太はからかい半分にそう言って僕の肩をぽんぽんと叩いた。



その呼び掛けに僕は苦笑を返した。

僕には好きな人がいる。

でもそれは誰にも言っていない。


僕の中だけで潜んでいる大事な想いだから誰にも言いたくないんだ。


言ってしまったらその想いが歪んでしまうような気がするから。



叶わない恋だとわかっていても、好きだという想いをとめられないなんて

神様は残酷だと思う。



悠や草太には素敵な恋愛をしてほしい。

好きな人と結ばれてほしい。

だからこそ僕は自分の恋を閉じ込めておくんだ。



決して開けることのない扉を、永遠に閉ざしておくんだ。






■NEXT

初回担当は作者イチオシの加暮真魅でした。

真魅のテーマは

『叶わぬ恋』です。

謎の多い真魅ですが、素性や恋模様は後々明らかになっていきますので、ご期待ください。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ