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ぜんうさ。  作者: 月白
2/12

2 月願


 ハッ――


 目を覚ました。


(あれ…ここは?)


 周りをキョロキョロと見回す。


 あたり一面は、ゴツゴツした岩肌だった。地面も岩。


 硬く冷たそうなのに――不思議と温もりがあり、嫌な感じはしなかった。


(どこだろう…なんか身体もすごく軽くなってる…)


 ついさっきまで身体を起こせなかった事が嘘のようだ。


 はるは身体を起こし、軽く飛び跳ねてみた。


 フワッ


 体がふわりと浮いた。


 今まで感じたことのない浮遊感に、少しばかりテンションが上がる。


 その時――


『来たようじゃな』


 どこからか声が聞こえ、びっくりしたはる。


 隠れられる場所があれば一目散に隠れたかったが、あたり一面岩しかなく、隠れる場所はない。


 シュタッ!


 その場で体勢を低くし、身構えることしかできなかった。


(いまのこえはなに…?だれ……?)


 嫌な声ではない。むしろ、どこか安心するような声。


 しかし、聴力に自信のあるはるが、その声の出所を全く掴めないという気味の悪さが、無意識にはるを警戒させていた。


【パチン!】


 またもや、出所のわからない音が突如鳴り響く。


 次の瞬間――


 目の前に、三日月の形をした杖を持つ女の子が立っていた。


 そして気づけば、景色は建物の中へと変わっていた。


『クスッ……そう身構えるな』


 何が起こっているのか分からず、涙目になりながらビクビク震えているはる。


 そんなはるを見てか、少女は少し笑みをこぼしていた。


『ここは月にある城、月ノ城。うさぎの魂の行き着く先……と考えてくれればよい』


『そして妾はこの城の主、帝釈天。主らのような魂の輪廻を促している者じゃ』


 震えるはるを見ても、帝釈天と名乗った少女は落ち着いた様子で説明を続けた。


 しかし、はるは不思議な出来事が立て続けに起こり、混乱している。


 帝釈天の言葉をうまく処理することができなかった。


 そんなはるの事をよそに、帝釈天は事務的に話を続ける。


『はる。2011年の1月1日産まれ。ほう...卯年生まれなのか。生まれながらにして病弱であったが、その3ヶ月後に朝倉家へ迎え入れられ……そして2018年1月1日の今日……その生涯を終える』


『産まれた日に死ぬとはな……だが……魂は綺麗なまま……大事にされておったようじゃのぉ。これならしばらく魂を休めれば、次は人間へでも転生できるじゃろう』


(たましい??てんせい??)


 聞き慣れない単語に、頭に?を浮かべるはる。


 そんなはるの心の声が聞こえるのか、帝釈天は疑問に答える。


『少しここの城で休めば、人間に生まれ変われるという話じゃ』


 その言葉を聞いた瞬間、はるは目を見開いた。


(にんげんに生まれ変われるんですか!?)


 今までの話の大半を理解できていなかったはるであったが、【人間に生まれ変われる】という言葉だけは、しっかり理解できた。


『そうじゃのぉ………主の魂の様子だと……5…いや、400年も休めば生まれ変われるじゃろ』


(それじゃダメなんです!!)


 突然のはるの叫びに、帝釈天はびっくりする。


『な、なんじゃ急に大声を出しおって…』


 実際に聞こえている訳ではないが、両耳に指を押し当て、顰めっ面で目を閉じる帝釈天。


(お願いです!今すぐ私を人間にしてください!!)


『そんなの無理に決まっておろう。魂は巡り廻るもの。そんなことをしたら魂の循環……輪廻の理からも外れる…』


(そんなのどうでもいいです!)


 今まで数多くのうさぎの魂を見てきた帝釈天。


 もちろん、はるのようにわがままを言ううさぎも数多くいた。


 しかし、ここまで大きな声を出すうさぎはそうはいなかった。


 少し面倒くさそうにしながら、はるを諭そうと目を開け、視線を向ける。


『何を言って……ん??』


 はると目があった。


 まっすぐこちらを見ている。


 そして、その瞳の奥にあるはるの魂……


『その目…お主、もしや………』


(???)


 一瞬何か考え込むようなそぶりを見せながら、はるの瞳をじっと見つめていた帝釈天であったが、すぐに話を戻した。


『い、いや、何でも無い。じゃが、仮に人に転生したところで、お主は何を望み、何をしたいのじゃ』


 一瞬の間――


 はるは、つい先ほど目の前にあった光景を思い浮かべた。



 大好きだったゆきとくんが泣いていた……

 悲しい顔をしていた……

 自分にいっぱい言葉をかけてくれた……



 それなのに……



 自分は何もしてあげられなかった……



 ありがとうも……

 大好きも……



 何一つ……伝えられなかった!



(私は……大好きな人にありがとうって……私も大好きだったって伝えたい………そして何よりも、笑っていて欲しいんです!)


 まっすぐ帝釈天の目を見ながら答えるはる。


 帝釈天もまた、その目を見つめながら言う。


『それはただの自己満足。それを伝えたあと、お主はどうするつもりじゃ?』


(その後のことなんて知りません。どうなっても構いません)


『そうか……』


 クスッと笑う帝釈天。


『ならば条件がある。それは――』


…………


………


……



(それだけですか?)


『それでも構わぬと言うのならば…お主の願いを叶えよう』


(ありがとうございます!!やったぁ!!!)


 遠くを眺め、大きく深呼吸。


 そして、はるへと視線を移す。


 嬉しさのあまり、いつもよりずっとずっと高いビンキーをしているはるの姿を見て、帝釈天は思わず笑みをこぼした。

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