二つの目
ガターン!
あっまただ
あの二つの目
下から私を見上げる二つの目
泣いてるの?
すると視点が変わって私は相手になっている
私の顔は無表情で氷みたいに冷たい
「なんなんだろ」
「どうした?」
夫が訪ねた
「ううん、なんかたまに思いだすの。誰かの二つの目」
「きみわるいな。誰かにうらまれてんじゃーの。
まぁ洋子みたいな人畜無害なやつが恨まれることなんかないか」
「それにしてもさ、最近いじめのニュース多いな。今日もやってるよ」
「そうね。みてて気分悪くなる。見て見ぬ振りも同罪よ」
ふと何かを思い出しそうになる。
そして
ふっと消えてしまった。
翌日、買い物帰りに
マンションのエントランスで近藤さんに呼び止められた
「ねぇ、きいた?5丁目の団地でね。人が飛び降りたんですって」
私は近藤さんにも、そして人が自ら命を絶ったことにも不快感を覚える。
黒いモヤを抱えながら夕食の準備をしていると
メールが届いた
『久しぶりの連絡でこんな話するのもなんだけど
沙也が亡くなったんだって
私は達一応、中学の時友達だったじゃない
沙也のお母さんから連絡が来たの』
5丁目、自殺
『自殺だって』
やっぱり
『なんで自殺なんか。。葬儀いくよね』
なんでってなによ。
私達のせいよ
友達なんかじゃなかった
あれから一度も私達会ってないじゃない
あー思いだした
あの日だ
あの日、授業でビデオ鑑賞をしたんだ
沙也は椅子をガタガタ揺らしながらビデオを見てた
ガターン!
椅子がゆっくり後ろに倒れた
「ぎゃはは、きめーんだよ、ぶす」
「よくあの顔で生きていけるよなー、俺だったら死ぬわ」
『助けて』さやの心の声がきこえた
さやの二つの目が、私をみていた
私はただ見下ろしていた
何もいわずに
ただ見ているだけだった
そして思った
あんたと私はちがう
一緒にしないで
二つの目には涙がうかんだ
その翌日から沙也は学校にこなくなった
ずっと気づいてた沙也が男子からいじめられていたこと
それでもいつも沙也は明るかった
あの日までは
街で一度さやをみかけた。
別の人間みたいだった
私をみつめる沙也の目は。。
それから私は沙也を忘れることにした
自分の過ちも全て
けれど沙也は私を逃してくれなかった
これからも二つの目が私を見つめつづける。




