食品の消費税率がゼロになると飲食店は困る?
食品の消費税率を0%に、と主張する政党があります。
これに対し、
「飲食店は潰れる」
いや、
「確かに控除額は減るが、食材も消費税分安くなるので、ほぼ相殺できると答えてくれたけど、どうなのかな?」
という議論があります。
https://x.com/mongo_margarita/status/1990283911570845857
消費税は一般人には馴染みが薄い税金なので、理解が難しいこともあるでしょう。
私の予想は
「飲食店は困る」
です。
消費税は、売上分の消費税から経費分の消費税(仕入税額控除)を差し引き、その差額を税務署に納付します。
「仕入税額控除」には「仕入」という言葉が使われていますが、消費税の話をする時は「仕入」は経費全般を意味します。
食材の購入も、家賃の支払いも、冷蔵庫の購入も、「仕入」です。
例えば、飲食店の損益が
売上2200円(うち消費税200円)
食材仕入1080円(うち消費税80円)
家賃550円(うち消費税50円)
支払給与300円(うち消費税0円)
経費計 1930円(うち消費税130円)
利益270円
だとします。
税務署に払う消費税は
200円-130円=70円
です。
このような、基本的な計算方法を「本則課税」といいます。(「原則課税」「一般課税」とも呼ばれる)
消費税の税率は基本10%、食品・定期購読新聞は軽減税率8%です。
取引の中には消費税の課税対象外もあります。
たとえば給与には消費税はかかりません。
消費税の計算では、取引を
・課税取引
・非課税取引
・不課税取引
・免税取引
に区分します。
ややこしいですね。
給与、税金、補助金などは不課税取引。
利息、保険料、土地賃借料、住宅の賃借料、社会保険診療報酬などは非課税取引です。
外国への輸出は免税取引です。
「国内において、事業として行われる、資産の譲渡または役務の提供の対価」に該当すれば課税取引です。
この要件に該当しなければ不課税取引です。
この要件に該当していても、非課税だと法令に定められていれば非課税取引です。
労働者は「事業として」働いているわけではないので不課税です。
非課税売上に対応するための経費の消費税は仕入税額控除になりません。
たとえば、飲食店とアパートを経営する人がいたとします。
店舗の修理に税込11万円払えば、そのうち消費税1万円は仕入税額控除になり、売上分の消費税から差し引きます。
アパートの修理に11万円払っても、消費税1万円は仕入税額控除になりません。
(経費を非課税売上のためのものか区分するやり方の他に、売上のうち非課税売上が〇%だから、経費分の消費税の〇%が非課税売上に対応するってことで計算するやり方もあります)
なお、免税売上(輸出)のための経費は仕入税額控除になります。
輸出企業は、売上に消費税はかかりませんが、経費には消費税がかかるので、差引マイナスになり、消費税が税務署から還付されます。
免税取引は、消費税はかからないけど課税取引と同じような扱いをすることが多く、俗に「0%課税」と呼ばれています。
飲食店が税込1080円で仕入れていた食材を1000円で仕入れることになれば、店は販売価格を維持して利益は現状維持になります。
食材仕入1000円に消費税はかからず、仕入税額控除になりません。
仕入税額控除が80円減るので、税務署への納付額は80円増えます。
しかし、食品の消費税率が0%になっても、おそらく食材価格は1000円にはならないでしょう。
農家は今まで税込1080円で売っていた作物を1000円で売って、それで今まで通りの利益を得ることができるでしょうか。
農家が消費税の課税事業者で本則課税であれば可能です。
農家も、売上分の消費税から経費(肥料代など)の消費税を差し引き、税務署に納付します。
売上の消費税がゼロになり、経費の消費税があれば、差し引く方が大きいので還付されます。
(と思うのですが、維新立民さんがどういうつもりで言っているかよく分かりません)
しかし、本則課税の計算はとても難しいです。
すべての売上・経費を、消費税の課税取引・非課税取引・不課税取引・免税取引に区分しないといけません。
この経費は消費税がかかるかかからないか。
かかるとして税率は10%か8%か。
インボイスはあるか。
(インボイスが無ければ、その経費の消費税は差し引けないのが原則だが、例外がいっぱいある)
農家が簡易課税という簡単な方式(中小企業限定で選択可能)で計算するなら、税務署への消費税納税が16円から0円になります。
売上分の消費税80円から、経費分の消費税をその80%64円とみなして差し引き、差額16円が納付税額です。
(みなし仕入率は業種によって異なる)
食品の消費税率が0%になると、売上分の消費税が0円になり、納付も還付もゼロです。
なのに販売価格を80円下げれば、利益は減ります。
免税事業者の農家は、もともと税務署に消費税を払っていないので、販売価格が下がれば利益は減ります。
(農協や市場経由で作物を仕入れたら、インボイスが無くても条件付きで消費税を差し引ける特例あり)
利益が減るような値下げは農家にとっては難しいです。
他の農家との価格競争があるから、今まで1080円で農家が売っていた作物を今まで通り1080円で売ることは難しいでしょう。
しかし、1000円にはならないと思います。
1050円とか1030円くらいにしか下がらないと思います。
飲食店が食材を1050円で仕入れても、消費税率がゼロならそこに消費税は含まれないことになり、売上分の消費税から差し引けません。
飲食店の仕入代金が1080円から1050円に下がっても、税務署への消費税納付が80円増えれば利益減少です。
それと、農家の間で、税金計算が得意か不得意かで損益が大きく変わってくるのも問題だと思います。
輸出企業でも昔から同じことが言えました。
しかし、輸出をやるような企業なら、輸出手続きは難しいから、事務的なことが得意が社員がいるでしょう。
それなら本則課税の計算もできるでしょう。
でも、農家はそうはいきません。
税理士に頼んでいる農家、消費税法をしっかり勉強している農家は国から還付金を貰え、そうでない農家は還付金をもらえなくなります。




