終わりと始まり
「正真正銘これで終わりだ!」
最後の大型イベント、様々なアクシデントはあったが最凶にして最高のレイドボス『management』が今我々プレイヤーたちによって討伐された、まさかラストバトルのボスが運営そのものだとは思わなく皆ツッコミたい気持ちを抑えながら戦わされたのだけは文句を言いたいがまあ無事に終わったからそこはいいとしよう。
「討伐完了だ!!!!!」
モンスターが倒れた演出が終了し皆が勝利の余韻に浸っているときに誰の声かは分からないがそんな声が響いた、するとその声に反響するように一人また一人と声を上げ始める、だんだんと喜びの声を上げる人数が増えて取り返しがつかなくなってきたときにようやく俺は討伐した実感がわき始めた。
【皆さんお疲れさまでした!!!!】
―――イベント『永久の戦いに終止符を』終了—――
この世界最後にして最大のイベントの終了を告知するアナウンスが電脳世界に響く、10年も続いたのにまさかこんなにあっけなく終わるとは思ってもいなかったため正直まだ受け入れることができない、あるものは世界の終わりを嘆き戦友と肩を抱き合い...涙しあるものは最後のイベントで全力を尽くしたのか疲弊しきった顔で地面と背中合わせをしている、人それぞれ最期の時の過ごし方は違うがイベントが終わった今皆思うことは同じだろう。
「あぁ、もうこの世界に入れるのも終わりなのか…もっとみんなと遊んでたかったな」
ある時は人間の何十倍もあるロボットを協力して討伐したりある時はPvPイベントで全員倒れるまで本気の殴り合いをしたりと様々なことをやった、紡がれてきた10年の歴史のうち俺はたった3年ほどしか遊ぶことができなかったがそれでもここで過ごした決して短くない時間はとても楽しく一瞬一瞬のどれもが色濃く脳に焼き付いて離れない大切な思い出になっている。
「そんなに寂しいかな?別にこの世界で会えなくなっても別ゲーとかでいつでも会えるじゃん」
「お前はいっつもこういう時冷たいな…それに会える会えないじゃなくてこの世界が終わること自体が寂しいんだよ、感傷に浸ることとかないのか?」
いきなり話しかけてきたこの雰囲気ぶち壊し野郎のせいで感傷に浸っていた心が一気に氷点下まで冷めていくのを感じる、そういえばコイツが悲しみを味わう心が欠如しているタイプの人間だったのを忘れていた、まあ確かに別ゲーで頻繁に会っていたりクランメンバーの連絡用サーバーがあったりで世界が終わってすぐに縁が切れることはほとんど無いのは確かだが。
「まあでも確かに、結構過ごしてきた場所が無くなるのはちょっと嫌だね、何年もやってたゲームだから愛着もあるし」
前言撤回、多少なりとも…というかかなりこのゲームに愛着があったようだ、コイツがゲームのサ終で感傷的なことを言うのは初めて聞いたな、まさかこの世界も終わりのタイミングでパーティーメンバーの新たな一面を知れるとは思わなかった。
「お前もそんなこと思うんだな…正直意外だ」
「そりゃ人だからね、もしかして心無いバケモノだとでも思ってるの?」
口には決して出せないが正直に言うとだいぶ心無いやつだとは思っている、なぜならばPvPイベントで協力関係を組むことになったやつら全員の背中に気付かれないように小型爆弾仕掛けて奴隷にならないのなら爆破させると脅したり...敵をおびき寄せるための生き餌にしてその餌が他の敵にキルされそうになった瞬間起爆し敵と餌を両方爆散させて全部自分のポイントにした後に「これが本当の漁夫の利」と言ったり、寝起きドッキリを称して相手のパーティーから一人だけ気絶させて攫ってそいつの体の下に地雷を設置して体が起きた瞬間爆破するトラップを作ったり、敵ホイホイとか言って『助けを求める声に釣られてやってきた敵が殺意マシマシ落とし穴にまんまと引っかかり体中に風穴が空く』動画を夜中に送ってきたりとんでもないことをいくつもやっているからだ。
「こうして考えるとお前このゲーム随分と楽しんでたんじゃないか?」
「急に何の話?まあ別に人並くらいじゃないかな、別ゲー結構やってたし」
コイツはこう言っているが多分嘘だ、確かにほかのゲームを一緒にやるときに勝利に導いてくれたり俺がやったことがないゲームではやり方を一から十まで説明をしてくれたりといろいろしてもらっているからいろいろなゲームをプレイしているということはわかる、だがそれでも俺はこいつが人並とは思えない、なぜならこいつは俺がログインしている時にほぼ毎回ログイン中と表示されている、それだけならまだゲームの稼働時間が違うで納得できるが怖いのはこれから、俺が5時間くらいぶっ続けで遊んでログアウトする時に確認したらまだログイン中と出ていた。これはもう廃人といってもいいんじゃないだろうか。
「しかしこれからどうするか、やりこんでたVRゲーなんてこれくらいだったしなぁ」
「...!だったら『みなさーーーん!!至急集まってください!!』
「?」
どうやら何かを言おうとしていたようだがクランリーダーの集会用大音量メガホンのせいでまったく聞こえなかった、何を言ったのか聞き返したい気持ちもあるがまあ別に今すぐ聞き直さなくても別のどこかのタイミングで聞けるだろうしアイツには申し訳ないが置いておこう、それよりも至急集合のほうに行かなくては、なにかあったのか?
『大体みんな集まったかな?!!それじゃ集めた理由を話すね!!』
「ボス!それよりメガホンの出力落としてください!耳がいたいっす!」
音のする方に歩いているといつもの如くリーダーが音量で注意されていた、さっきより近づいたせいで本当にうるさい、耳を塞いでるのに掌ごと鼓膜が持っていかれそうだ、というか前列にいる奴らからダメージエフェクトが出てるような?音でダメージって確か巨大な怪獣モンスターの咆哮くらいでしか発生しない筈なのだが、ウチのリーダーって何者なんだよ。
『あー、あー、すまない、呼びかけモードから切り替えるのを忘れていたよ』
ちっとも申し訳なさがない謝罪をしながらはははと笑うクランリーダーに対して何人かは武器を構えようとしていたが...まあ止めなくてもいいか、どうせ全部避けるだろうし、それより至急とは何なのだろうか、悪い知らせじゃないといいんだが。
『それじゃあ本題だ、みんなを集めた理由だが...』
一拍おいてリーダーが告げる
『このゲームのサービスが終了した後にお疲れ様会こと、大規模オフ会を開こうと思う!』




