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第5話 魅力あふれる世界

魔導の学園に集う若き才能たち。

その中で、少年トゥロが触れたのは――誰とも違う、温かな光。

戦う力を望んでいた彼に与えられたのは、癒しの魔法。

失望と戸惑いの中、仲間たちとの出会いが彼の心を少しずつ変えていく。

これは、「救う力」を信じる少年と、仲間たちとの絆を描く物語。

新たな生活の幕が、いま静かに上がる――。



トゥロの手がクリスタルに触れた瞬間、

他の生徒たちのように赤や青に輝くのではなく、

やわらかく、あたたかな白い光が静かに広がった。


「……ほう?」


大魔導士セイラスの眉がわずかに動いた。


クリスタルの中心から光が脈打ち、

優しく包み込むような波動が広場全体に広がっていく。


「これは……珍しいな。

癒しの魔力、それも非常に純度が高い。」


セイラスは頷きながら静かに言った。


「分類するなら『治癒魔法』の一種だろう。

かなり稀少な魔法だが、攻撃には向かない。

主に回復や支援に用いられる力だ。」


(……癒し、か……)


トゥロの胸に、ほんの小さな失望が広がった。


(僕は……剣を振って仲間を守る力が欲しかった。

なのに、どうして戦う力じゃなくて、治す力なんだ……?)


そのとき、隣にいたノランがぽんと背中を叩いた。


「おいおい、そんなに落ち込むなって。

癒しって、マジで頼れる力なんだぜ?

俺、絶対お前に助けられる気がする!」


それを聞いて、周囲の生徒たちも頷いた。


「そうそう、支援系がいるとほんと心強いよね。」


「それに、あんな綺麗な光、初めて見たよ。」


トゥロは少し目を伏せて、微笑んだ。


「……ありがとう。

たとえ戦えなくても、誰かを救えるなら……

それだけで、十分だよ。」



小隊編成の発表


午後、生徒たちは講堂に集められた。


セイラスが再び壇上に立ち、穏やかな声で語る。


「さて、これから諸君には『小隊』に分かれてもらう。

これは学園生活の基本単位であり、

訓練や任務、そして日常の多くを共に過ごすことになる。」


空中に魔法のホログラムが浮かび、編成の例が表示される。


「標準的な構成は以下の通りだ。」

前衛:2名

遠距離攻撃:1名

支援:1名(治癒・防御・補助など)

偵察・隠密:1名


「これはあくまで基本構成だ。

卒業後は、自ら仲間を集めてパーティーやギルドを組むこともできる。

だが、今はこの形で役割と連携を学んでもらう。」



トゥロは掲示板を見て、自分の名前を探した。


「……あ、あった!」


第十三小隊

・ノラン・カール(前衛)

・リナ・アルフェル(弓/遠距離)

・カイン・ローデル(前衛)

・メイラ・ロジーナ(隠密)

・トゥロ・エルガード(支援/治癒)


「よっしゃー! やっぱり同じチームだな、トゥロ!」


ノランが嬉しそうに手を振った。


リナという名の少女が、静かに微笑んでトゥロを見つめる。


「よろしくね、トゥロくん。

支援があると、安心して矢が放てるから。」


「は、はい! よろしくお願いします!」



学生寮での新生活


その日の夕方、生徒たちは寮に案内された。


トゥロたちの部屋は第五寮・西棟の一角。

二段ベッドと机、本棚が備え付けられた六人部屋だった。

質素だが清潔感があり、落ち着く空間だ。


「おおお〜! ここが俺たちの新天地かぁ!」


ノランがベッドに飛び込み、大はしゃぎする。


「……静かにして。恥ずかしいわ。」


隅のベッドでメイラが冷たく言い放った。


カインは黙々と剣を手入れしながら、ぼそっと言った。


「支援、頼りにしてるぞ。

前衛はどうしても怪我が絶えねぇからな。」


「う、うん……できる限り頑張るよ。」


トゥロは自分のベッドに腰を下ろし、天井を見上げた。


(……治癒魔法、か。

少し期待外れだったけど……

僕にできることを、全力でやろう。)



その後、ノランがぽつりと呟いた。


「それにしても……こんなにいろんな種族を一度に見るの、初めてだぜ。

知らない種族もいっぱいいたし!」


トゥロが不思議そうに尋ねる。


「……種族って、どういう意味?」


「いやさ、見ただろ? 猫人族とか、半分人間で半分ドラゴンみたいな上位ドラゴニットとか、

エルフにドワーフ……俺、喋るカメまで見たぞ!」


メイラがすかさず呆れた声で返した。


「それは召喚獣よ。ある先生の使い魔に決まってるじゃない。

うちの父にもオレルっていう使い魔がいたわ。」


ノランの目が輝く。


「えっ、召喚魔法が使えるの!? すげえ!」


「違うわ。

うちの街では、召喚獣は商人から買えるの。

とても高価だけど、『血の契約』を結べば、召喚魔法が使えなくても、

ただ心で呼ぶだけで現れてくれるって、父が言ってた。」


トゥロが目を輝かせて言った。


「すごいなぁ……僕もいつか金持ちになって、自分の召喚獣を買いたい!」


カインが手早く立ち上がって声をかけた。


「おい、みんな。あと10分で図書館集合だぞ。

そこで教科書と必要な道具を受け取る。気になる本も借りられるってさ。」


「よし、行こう!」


全員が声を揃えて返事をし、わいわいと図書館へ向かった。



図書館へ向かう道すがら、みんな笑い合いながら歩いた。

トゥロは心の中でこう思っていた。


(このチームでよかった。

僕の周りには、こんなにも素敵な仲間がいるんだ……)



図書館で全員に教科書と必要なアイテムが配られた。

その後、生徒たちは自由に本を選びに行った。


それぞれ、自分の属性に関する本を選ぶ者が多かった。


トゥロはまず「初級治癒魔法」「中級治癒魔法」の本を一冊ずつ、

そして、見た目が世界の歴史よりも古そうな、

伝説と神話に関する本を一冊手に取った。


(……光と闇の魔法……すごく惹かれるな。

この世界には、まだまだ知らない伝説があるんだろうな……)


全員が本を名前と共に登録し、

そのまま休憩室へと向かい、静かに読書に没頭した。


明日は、いよいよ最初の授業。

皆の胸は、期待と緊張で高鳴っていた。


◆◇◆――――◆◇◆

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