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第15話 昇格の結果

朝日が学院の塔を黄金色に染めた頃、生徒たちは中庭に集まっていた。今日は、年に一度の恒例行事である「ランク授与式」が行われる日だ。将来の冒険者として、それぞれの実績が評価され、新たなランクが与えられる重要な儀式である。


学院長は満面の笑みを浮かべて壇上に立ち、生徒たちをゆっくりと見渡した。


「今年の新入生たちは、本当に頼もしい! その成果は賞賛に値する!」


拍手が鳴り響く中、学院長は一人ずつ名前を読み上げていく。


「セレスティア──銀等級第10位から第9位へ昇格!」


「ハルト──銀等級第9位を授与!」


「タカシ──銀等級第8位、見事な働きだった!」


生徒たちは次々と名前を呼ばれ、喜びとともに前へと進んだ。そして──


「トゥロ──銀等級第8位へ昇格!」


トゥロは少し驚いた表情で、しかし落ち着いた足取りで前に出た。仲間たちは笑顔で拍手を送り、彼の健闘を讃えた。第8位というのは、新入生の中でもごくわずかしか得られない称号だった。


式が終わると、トゥロたちのチームは寮へと戻り、新たな任務に向けての準備を始めた。


「最近、ゴブリン退治とか、商人の護衛とか、獣の捕獲とか……同じような任務ばっかで飽きてきたな〜」と、ノランがベッドに寝転びながらぼやく。


「でも、全部しっかりこなしてきたじゃない?」とリナが笑って返す。


「うん、でもそろそろ新しい装備が欲しいかも……もっと機動性のあるやつがいいな」とメイラが肩を回しながら言った。


そのとき、トゥロがふと思い出したように口を開いた。


「そういえば、街に新しい武具店ができたって聞いたんだけど……行ってみない?」


「それ、いいじゃん!」とカインが勢いよく立ち上がる。「任務も近いし、装備を見直すにはちょうどいいタイミングだな!」


「じゃあ決まりね! みんなでショッピングツアーよ!」と、リナが楽しそうに手を挙げた。


◇ ◇ ◇


彼らは冒険者通りへと向かった。石畳の道沿いには、武器屋や魔道具店、酒場、宿屋がずらりと並び、まるで別の街のように活気づいていた。


新しくできたという武具店は「クロム工房」と呼ばれ、黒いレンガの外壁と重厚な木製の看板が目印だった。中に入ると、きれいに並べられた剣や弓、鎧が整然と並んでおり、どれも高品質そうな品ばかりだった。


「うわぁ……こんなブーツ、初めて見た!」とメイラが目を輝かせる。


「これは風のエネルギーを蓄積して、跳躍力を強化するブーツだよ」と、店主が誇らしげに説明する。


一方、ノランは大剣のコーナーで一人悩んでいた。


「見た目はいいけど、これ絶対めちゃくちゃ重いよな……」


「それ持ちたいなら筋トレ倍にしないとね」とカインが茶々を入れ、店内に笑いが広がった。


リナはというと、風属性の魔力を増幅させる弓を手に取り、真剣な表情で試し引きをしていた。


「……似合ってるよ」とトゥロが静かに声をかけると、


「ほ、本当? ありがとう……」と、リナは少し照れながら微笑んだ。


◇ ◇ ◇


買い物を終えた彼らは、夕暮れの街を歩いていた。空は茜色に染まり、石畳の道に街灯の光が長く伸びていた。


「次の任務は、南の村に向かうことになるらしいわ。変わった魔物が出たとか」とメイラが情報を共有する。


「目撃者の話によると、その魔物は鋼のように黒い皮膚をしていて、普通の武器が効かなかったんだって……」とリナが眉をひそめる。


「へぇ、それは面白そうじゃねぇか」とノランが不敵に笑い、カインも拳をぎゅっと握った。


「明日は早朝に出発だ。しっかり準備しておこう。どうやら、今回は一筋縄ではいかないぞ」


まるで旅の始まりを告げるかのように、彼らの背後で風がそっと木の枝を揺らした。

翌朝、太陽が地平線の向こうからゆっくりと顔を出し始めた頃、トゥロたちのチームは学院の正門に集合していた。


「よし、全員揃ったな。じゃあ、出発しよう」

カインが軽く声をかけると、五人は南の村を目指して歩き出した。


朝の空気は清々しく、草の匂いがほのかに漂っていた。遠くには丘が続き、森の緑が目を癒す。空は晴れ渡り、静かで穏やかな旅の始まりだった。まるでこの世界そのものが、彼らの冒険を祝福しているかのようだった。


「ねえ、思ったんだけど……次の休憩のとき、ちょっとおやつ休憩にしない? この前、新しくできたお店で買ったお菓子、持ってきたんだ」

リナが楽しそうにリュックの中を覗きながら言った。


「おっ、それはいいね。俺たち、何か美味しいものにありつけるってことか?」

ノランがニヤッと笑いながら答える。


「食べたかったら、黙って楽しみにしてて」

リナはわざとらしくふくれっ面をして見せた。


「ふふ、期待してるわね」

メイラが微笑み、チームの雰囲気は和やかだった。


◇ ◇ ◇


昼近くになった頃、一行が森の中の小道を歩いていると、トゥロが突然立ち止まった。彼の表情が引き締まり、静かに言った。


「前方に……三体。ゴブリンだ」


「よし、さっさと片付けよう」

カインが剣を抜く。


戦闘はあっという間に終わった。カインは迷いなく動き、三体のゴブリンを瞬く間に斬り伏せた。


「ゴブリンなんて、ちょろいわね」

リナがふんっと胸を張る。


「でも、油断は禁物よ。日が暮れる前に安全な場所で野営しましょう」

メイラが冷静に言い添えた。


◇ ◇ ◇


その晩、彼らは丘のふもとの小さな草地にキャンプを張った。


「焚き火は任せて」

カインが木の枝を集め、火の魔法で火を灯した。


「さて、食料はどうするかな……あれ、あの茂みで何か大きいのが動いたぞ。イノシシかもしれない」

ノランが草むらの奥を指差す。


「狩るか? 新鮮な肉はありがたい」

トゥロがうなずく。


ノランとカインが連携して獲物を仕留め、ほどなくして大きな野生のイノシシを引きずって戻ってきた。


「すご……」

リナが目を丸くする。


「どうだ? 俺たち、なかなかやるだろ?」

ノランが得意げに笑った。


肉を焼く香ばしい匂いがキャンプ地に広がり、空には星が瞬き始める。森は静寂に包まれ、焚き火の音だけが響いていた。


「……こういう夜、悪くないな」

トゥロが炎を見つめながらぽつりと言った。


「うん。世界って、こんなに広くて美しいんだって思う」

リナが焚き火を見つめながらつぶやく。


「でも、あの村では何が待ってるんだろうな。黒くて硬い皮膚を持つ、武器の効かない魔物……気になるよな」

ノランの声には、どこか好奇心がにじんでいた。


「ただの獣だったらいいんだけど……」

メイラの言葉には、不安が混ざっていた。


◇ ◇ ◇


それからの三日間、旅は順調に進んだ。途中で野犬や魔物に遭遇したが、どれも大きな脅威ではなかった。時には川で水浴びをし、時には丘の上から地平線を眺める。穏やかで楽しい旅路だった。


そしてついに――


「見て、あれが……目的の村だ」

トゥロが前方を指差した。


三日目の夕方、一行は目的地の村にたどり着いた。森に囲まれたその村は、どこか寂しげで、人影もまばらだった。


「まずは情報収集ね」


誰かに見られていないか、村を遠くから観察し、周囲を確認してから慎重に進む。万が一、罠がある可能性もある――それは学院で教え込まれた基本中の基本だった。


「この村には、冒険者が集まる酒場があるって聞いたことあるよ」

リナが言った。


彼らは「旅人の憩い」と書かれた木製の看板が掛かった建物へと向かった。その建物は古びていたが、しっかりとした作りだった。


そして、トゥロたちは静かに扉を開け、中へと足を踏み入れた。




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「ネトコン13」
― 新着の感想 ―
Un buen capitulo para desarrollar y fortalecer la relación de los personajes
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