第12話 仲間の力と初めての任務
精神検査から一年。トゥロたちは魔力と肉体を鍛え、それぞれの役割を磨いてきた。そしてついに、冒険者として最初の任務が与えられる。
仲間との絆を深めながら、死の森に潜む魔獣に立ち向かう彼らを待つのは、予想を超える試練だった──。
トゥロは、これから訪れる試練に備えるため、まず自分の魔法と肉体を制御する力を身につけるべきだと決意した。彼の心には、未来に対する不安な予感があった。
彼は毎日瞑想を始めた。それにより魔力のコントロールが大きく向上した。チームは肉体の鍛錬に集中し、能力の成長に応じて魔法を使って身体能力を強化していった。
精神検査から一年が経ち、その間にトゥロのチームは著しく成長した。カインとノランは近接戦闘において優れた戦士となった。教師との訓練や日々のスパーリングによって、彼らの肉体は強靭で持久力のあるものとなった。魔力の制御も加わり、彼らの身体能力はさらに向上した。
メイラも身体を鍛えていたが、彼女は特に魔法の訓練に重点を置いていた。彼女の役割は偵察であり、自身の存在を隠す魔法や、敵の魔力の痕跡を探知する能力を磨いていた。
リナは遠距離戦に特化した訓練をしていた。集中力と命中精度の向上を目指し、長距離から正確な一撃を放てるよう努力していた。
トゥロは肉体と魔法の両方を鍛えていた。
やがてチーム全体が一定のレベルに達したとき、彼らの学園での2年目が始まった。彼らは「シルバーランク10」に認定され、個々の実力とチームとしての評価が認められたのだった。
ランク制度の導入
シルバーランクは10段階に分かれており、最上位はシルバー1である。そこには、年齢を超えた力を持つ者たちが存在する。
たとえシルバー10ランクの者が5人集まっても、シルバー9ランクの敵と戦う際には苦戦を強いられる。
その上には5段階から成るゴールドランクが存在する。これはエリート戦士の領域である。ゴールド5の敵は、シルバーランクの者を一人で倒せるほどの力を持つ。シルバーとゴールドの間には大きな力の差がある。
ゴールド4は学園の教師たちのレベルであり、学園長だけがゴールド3に到達している。
さらにその上には「プラチナランク」が存在する。このランクに達した存在は世界にわずか20体しかおらず、これは最上位のランクである。そこにはエルフ族の大魔導士や、次元を超えて宇宙規模で移動することができる強大なドラコニットが含まれている。
神々という存在
神々とは、「神界」と呼ばれる次元に存在する超越的な存在であり、因果律や無限の世界の枠組みを超越している。彼らは気まぐれで世界を創造し、退屈しのぎにそれを観察している。
観察をより面白くするため、魔法を世界に導入し、それが人類や様々な種族の誕生、そして神々への信仰へとつながった。
死の森での任務
トゥロのチームはギルドから最初の依頼を受けた。学園の2年生になると、生徒たちは正式にギルドに所属し、冒険者として活動することができる。理論より実践が重視されるこの時期は、実力を伸ばすには最適だった。
彼らにはシルバーランク10の冒険者バッジが与えられ、それにより適切なレベルの任務を自由に選べるようになった。
トゥロ、カイン、ノラン、メイラ、リナの5人は、モンスターの群れを討伐する任務を選択した。数日かけて、村人が最後にモンスターを目撃した場所へ向かった。
道中、トゥロは作戦を再確認した。
「戦闘ではまず、前衛の二人が突撃し、リナが後方から遠距離支援を行う。その間にモンスターがリナの攻撃に気を取られた隙をついて、カインとノランが致命打を与える。僕は中央に位置し、すぐに回復魔法を使えるようにする。メイラは影に潜んで様子を見て、隙を突いて背後から奇襲する。」
やがて夜になり、彼らはキャンプを張った。カインとノランは野生のイノシシを捕まえ、焚き火を囲んで皆で笑いながら夕食を楽しんだ。
こうして、彼らの冒険者としての最初の一日が始まった。
早朝、トゥロは一人で目を覚まし、まだ眠る仲間のために焚き火を起こして朝食の準備をしていた。彼は揺れる炎をじっと見つめ、何かを考え込んでいた。
木々のざわめきに目を覚ましたリナがそっと近づき、トゥロが温めていた湯を使って、素早く温かい飲み物を用意した。朝は冷え込んでおり、その一杯はちょうどよかった。
リナは彼の隣に座り、静かに尋ねた。
「どうしたの? どうして一人でここにいるの?」
「任務のことを考えてたんだ。」トゥロは炎を見つめたまま答えた。
リナはそっとトゥロの背中に腕を回し、頭を彼の背に預けた。
「私ね……ときどき思うの。自分が足を引っ張ってるんじゃないかって……」
トゥロは思わず笑みをこぼした。
「君が? そんなことないよ。むしろ僕の方こそ頼りないかもしれない。君の遠距離攻撃のおかげで、何度助けられたか分からないよ。」
「ほんと?」リナは少し顔を赤らめた。「そう言ってくれると、ちょっと安心する。」
二人が静かに火を見つめていると、ノランが目を覚まし、彼らを見て叫んだ。
「おいおい、なんだこれは! まさか隠れて付き合ってたのかよ、トゥロ!」
「ば、ばかっ! 何言ってんだよ!」トゥロは真っ赤になって反論した。
リナは少し照れながら、さらにトゥロにしがみついた。
そんな和やかで少し気まずい雰囲気の中、彼らは朝食をとり、村へと向かった。
村に着くと、長老がモンスターを最後に見た場所を案内してくれた。
「ここは危険です。どうか村に戻ってください。」とトゥロは言った。
その後、チームは森の中へと入っていった。すぐにメイラが探知魔法で敵の位置を特定した。
「群れは小さいけど……中に魔力を持つ個体がいるわ。」
補足説明:
この世界には、普通の獣と魔獣が存在する。魔獣とは、長期間高魔力地帯に生息するか、魔法使いを30人以上喰らったことで変異した存在である。肉体構造が変化し、攻防に魔法を用いる力を持つ。
周囲に他の敵がいないことを確認し、トゥロは命令を出した。
「今だ! 奇襲で一気に仕留めろ!」
リナが矢を放ち、モンスターたちは一瞬で無力化された。カインとノランは魔力で身体を強化し、超音速で突進。わずか数秒で群れを殲滅した。
だがその時、上空から一体の魔獣が飛びかかってきた。虎のような姿で、速度に特化したタイプだった。カインとノランが反応して攻撃したが、相手は魔法による加速を使い、回避した。
「フォーメーションAに移行!」とトゥロが叫んだ。
全員が円陣を組んで互いに背中を守る布陣を整える。メイラは影から状況を見守る。
リナの矢は避けられたが、それは罠だった。カインとノランが動きを読み、同時に攻撃。深手を負わせた。
しかし魔獣は致命傷を避け、反撃してノランの腕をかすった。幸いにも、リナがあらかじめ張っていた防御バリアが発動し、致命傷は免れた。
モンスターが次の攻撃に備えて構えたその瞬間――メイラが上空から飛び降り、鋭い短剣で首を貫いた。完全な奇襲だった。
トゥロはすぐにノランの腕を癒した。
「ありがとな、トゥロ! まるで新品みたいだぜ。お前がいなかったら……」
「多分、もう死んでたよ。」とトゥロは軽く答えた。
「おいおい、縁起でもねえこと言うなって。俺はそんなにヤワじゃねえよ。若死にはごめんだ。」
彼らは魔獣の死体を「圧縮袋」という魔法道具に収納した。これは王国が開発したもので、大きな物でも小さくして持ち運ぶことができる。
その後、街へ戻り、ギルドに魔獣の証拠を提出し、報酬と追加のボーナスを受け取った。素材や宝石も売却され、収入はさらに増えた。
夜になり、彼らは食堂で祝杯を上げた。こうして、彼らの濃密な一日が終わったのだった。
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