神様のお願い
小説初心者のSallyです。
このお話は、堕落した神様が罰を受け、試練を乗り越えて失った神様の力を取り戻す物語です。
人と人を結ぶ、縁結びの神様、知ノ実のみことが現代でいろんな事を学び、神様として成長していく物語です。
ここに今まさに、ある男が目を覚まそうとしていたのである。
「うっううん……ふぁ――」と大きな欠伸をして気怠そうに息を吐き薄っすらと目を開けた。
「よく寝た……今は何時じゃ?」
そう言いながらその男は立ち上がり喉を潤すために台所へ、水道の蛇口を捻るが水が出ない?
「あれ?……おかしいな?壊れたのか?」
「まーよいわ、腹が減った」
男は部屋を見まわしたが食べ物らしきものは何も無かった。そしておもむろに窓に向かって歩き、窓越しにまた大きな欠伸をしようとした瞬間!!男は目を疑った。
「なんじゃここは?へぇ……どこなんじゃ」
男は慌てて玄関へ走り、普段はあまり外にでない男が玄関の扉を開けた!!
薄暗い部屋から明るい外に出たせいで視界は一瞬真っ白に……だんだんと目に映り出した景色に男は一歩も動けなくなってしまった。
見渡す限りビル街!!
「わしはどこにおるんじゃ?」
「確か昨日、飲みに行って帰ってきたはずじゃが」
男は唇を指でつまみ、今の状況を必死で考えていた。
すると玄関の階段の隅に一人の若い学生が菓子パンを食べながら携帯を見ていた。
「おい、そこの者」
学生はチラリとみたがまた携帯を見はじめた。
「おい、そこの者、お前だ」
そう言うと学生が「僕の事ですか?」と答えた。
「教えてくれ、ここは何処じゃ?」
「東京ですよ」
「おおっ……東京か……」
シノミは知ったかぶた感じで答えた。
「そこの者すまんが、水を譲ってもらえんか」
そう言うと学生は男の姿を見て、関わりたくないと思ったのか。
シノミの服装は着物。
「よかったら飲みかけだけど……」
学生はそう言いながら男に手渡しその場を去ろうした。
歩き出した学生に男は最後にこう質問した!
「今は江戸じゃろ!」と叫んだ。
「今は令和ですよ」
「ちなみに江戸から四百四十一年、経ってますよ」と少し笑い去って行った……
そこでやっと男は理解したのである。
「わしは……わしは……四百四十一年も寝てしまったわ(泣)……(笑)」そう独り言を言うと慌て家に戻った。
そう、この男の正体は!!
実は神様なのである。男の名前は出雲の神、知ノ実のみことである。
日本では有名な神様の家系に生まれ、今は神様として成人し分霊を頂き、独立、神社を構えていた。
そう、シノミの家というのは神社であり、神様としてここで神様の務めをしていた。
人にみえないが神社のお堂の中には神部屋がありそこで人々の願いを叶えたり、その地域を見守っていた。
「おぅ……そうだ!神界に行ってこの事態を報告し元にもどしてもらおう」早速、シノミは部屋の奥の扉を開けようとするが開かない。
「あれ?扉が開かんぞ……」力いっぱいに扉を開こうとするが開かない。この扉の向こうは神界、すなわち神の街と繋がる入り口である。
数分後……諦めたシノミはポストに貯まっていた神界からの手紙を読んでいた。
「何?何?縁結びの神こと出雲の神、知ノ実のみこと殿
そなたは神様の務めをせず再三の神審議会に出頭しなかった為、そなたの縁結びの力を封印いたします。」
神審議会とは堕落した神様をピックアップし神執行部が判断をして罰を与える所である。
そう手紙には書かれていた。
「……」言葉を失った。
そしてもう一枚の手紙に目を通した。
その時代において己れの力で誰かの縁を結び恋愛を成就させなさい、されば縁結びの力を再び与えます。
と手紙に綴られていた。
「わしは神達に一杯食わされたのじゃな(怒)」
「天女達がいる宴会で呑まされたあの酒が原因か?」
「それで四百四十一年が経ったのだな。」
事の重大さがまだわからないシノミのみことであった。