3.戦闘技能訓練にて。
あとがきで、播磨さんの話を要約しますね。
「えー……では、これより戦闘技能訓練を行います」
――星界高校の体育館に、一年生全員が集められた。
みんな小学校を卒業したばかりであるから、なおのことアラサーの俺は目立って仕方がない。事情を知らない生徒の中には、こちらを見て『なんでオッサンが?』と話していた。当人たちは聞こえていないと思っているのだから、ここは俺も気付かない振りをしよう。
とにもかくにも、だ。
ここにいる学生たちはまだ、自分の中に発生した戦闘スキルを扱いきれない者ばかり。年齢こそ差はあるが、俺も立場は同じなのだから気楽にいこう。
そう考えて、担当教員の話に耳を傾けた。すると、
「実際にやってみる前に一度、手本を見せてもらいましょう。――有栖くん」
「はい、わかりました」
意外にも名前を呼ばれたのは、有栖レイラだった。
姿勢正しく座っていた少女は声に応え、恭しい所作で指定の位置へ向かう。そして、あらかじめ用意されていたモンスター型のパネルと向き合った。
他の生徒たちはみな、息を呑んで見守っている。その静寂を――。
「はあああっ!!」
有栖は気合いの一声。
すると突き出した右手から、小さな炎が放たれた。
狙い過たず、その炎弾は見事に的を撃ち抜いて炎上させる。――ワッと歓声が上がり、拍手が沸き起こった。他の教員は消火器で的を処理していたが、担当教員は少女のもとへ歩み寄って何度も頷いている。そして、彼女を称えるように紹介するのだった。
「お見事です、有栖くん。えー……彼女は当校に入学する以前――すなわち、小学生の頃からその才覚を買われ、異局の一員として働いています。みな、参考にするように」
それを聞いた生徒たちは、一斉に「はーい」と声を上げる。
各々の表情を見ると、誰もが無垢な瞳をきらきらと輝かせていた。どうやら有栖レイラという少女は、俗にいう天才というやつなのかもしれない。あるいは、エリート。
だからこそプライドも高いし、対抗意識も強いのだ。
俺は中庭での態度に合点がいって、一人で頷いていた。
「えー……異局に所属といえば、もう一人いたな。――安土くん」
「……へ?」
そうしていると、急に名前を呼ばれる。
そして――。
「キミも、みなの見本になってあげてください」
「………………」
思わぬ角度から、思わぬ指示が飛んできた。
硬直する俺。周囲の少年少女たちは、みな目を輝かせてこちらを見た。
あまりに純粋な光たちを前にして、俺は拒否する選択肢を奪われてしまう。
「や、や――」
……で、結局。
「――やってやろうじゃねぇか!?」
◆
「………………」
「はっはっは! そんなに気を落とすな! 非は、キミの入学経緯を確認しなかった儂にある!」
結果は、推して知るべし。
魔法の発動方法なんか、初心者以下の自分が知るわけがなかった。というか、そもそも先日のダンジョンでのことは奇跡。
しかし、そうなると当然の疑問が浮かんだ。
「……でも、どうして前は使えたんだ?」
それはもちろん、俺が魔法を使えた要因である。
首を傾げていると年老いた教員こと、播磨さんがこう説明してくれた。
「おそらく、杖を所持していたのではないかな?」
「杖、ですか?」
「あぁ、そうだ。アレには持ち主の潜在魔力を高める効果がある。もちろん素養がなければ、発動はしないがな」
「なるほど……?」
要するに、有栖が持っていた増幅器で俺の潜在的な力が拡張された、ということらしい。何やら用語が出てきて頭が痛くなってきた。
ただ、そうなるともう一つの疑問があって……。
「……でも、俺のスキルって【転職】のはずだよな。少なくとも【水流】とか、水関係ではなかったはずだけど」
そもそもとして、魔法の素質はないはずだった。
聞きかじりの知識でしかないのだが、魔法を得意とする者はみんな【火炎】や【雷電】という、属性名のスキルを所持していることが多いという。その点に比べて、俺のスキルは何に使うか分からない意味不明なものだった。
そんな感じで首を傾げていると、播磨さんは笑いながら解説してくれる。
「少し知識が偏っているようだ。まぁ、小難しいから仕方ない……」
「それというと、答えを知っているんですか?」
「うむ。ところでお主は、パソコンに詳しいかな?」
「え……まぁ、人並みに」
俺が答えると、彼は頷いて言った。
「ならば、ハードウェアとソフトウェアと考えるがよい」
「……あぁ、そういうことか」
そして、例え話をされて何となく理解が追い付く。
こちらの表情が晴れたのを見て、播磨さんは禿げ上がった頭を撫でた。
「お主の考えている通りだ。つまるところスキル名はハードウェア、潜在魔力はソフトウェアということになる。魔力というのは誰にでも備わっており、我々はそれをスキルという形で表現しておるのだよ」
「なるほど、分かりやすい」
「これでも世界に変異が起こってから、ずっと研究職をしておったからな。その辺の専門家よりも、鷲の知識は深いぞ?」
そう言うと、彼は大きな声で笑う。
どうやら誰かに物を教えるのが、とかく好きな人物らしい。俺は『それなら』と思って、さらにもう一つ質問した。
「じゃあ、俺の【転職】って何なんですか……?」
「それは知らん」
「あ、はい」
――が、撃沈。
物凄い真顔で回答されてしまうのだった。
しかし、そうなると俺の能力の正体はなんなのか。
結局のところ、最大の謎が解けないままに訓練は終わりを迎えるのだった。
【要約】
『スキル』=ハードウェア。目に見える形や物で、ゲーム機で例えたらコントローラーや本体など、そういった外側のもののこと。転じて『スキル』とは、人が理解できるように、人の言葉で、その人物の才能を表現したもの。
『潜在魔力』=ソフトウェア。目に見えない部分のことで、例えるならゲーム機材の内部構造、内側のもののこと。転じて『潜在魔力』とは、目に見えないものの、人間の中には大なり小なり、程度はあれど存在しているもののことを表す。
以上、説明終わり。
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