2.休み時間、有栖レイラという少女。
あぁ、なるほど。……ツンデr(粛清
「まさか有栖さんと、同じクラスだとは思わなかった……」
「私だって考えたくなかったですよ」
休み時間になって、俺と有栖は学内の中庭のベンチに腰掛けていた。
天気もそこまで良くないからか、自分たち以外に学生の姿はあまり見えない。これならば、人目を気にすることなく羽を伸ばせると思った。
「……まったく、一生の屈辱です」
「え……?」
そんなわけで大きく伸びをしていると、有栖がそう言う。
どうしたのか、と。こちらが首を傾げていると、少女は極めて不服そうにため息をつくのだった。そして俺を睨みながら、釘をさすように宣言する。
「いいですか。……私が貴方の相手をしてるのは、上司の命令です」
「……お、おん?」
以前にもまして、大きな声を上げながら。
そして人差し指を鼻っ面に突き付けて、怒ったように続けるのだ。
「決して、貴方に命を救われたから、ではありませんからね!?」――と。
有栖の言葉は、人気の少ない中庭に響いた。
いったい何事かと首を傾げる者もいたが、すぐに興味を失った様子。そして肝心の有栖はといえば、感情の高ぶりがあるのか、それらを気にする余裕はなかったらしい。
そんでもって相手が子供であると同時に、感情的になっていると冷静になれるものだ。自分は必ずしも他人の機微に敏感ではないのだが、少女の言いたいことは理解できた。
「あー……オーケー、分かった」
要するに、有栖はプライドが高い。
おそらく獅童さんに指示されたのは事実だろうが、素人ながらに自分を助けた俺という存在が気にくわないのだろう。そして恩返しなどという勘違いをされたら堪らない、と。
幼い少女の中ではいま、そんな感情がない交ぜになっているのだった。
俺も底辺ながら、一応は年上の大人だ。
ここは一歩引いて、相手を尊重した方が良いだろうと考える。
そんなわけで苦しいながらもどうにか笑って、了解したといって頷いた。
「分かったなら良いのです! 調子に乗らないように!!」
「分かったから、落ち着けって……」
「ふん……!」
すると相変わらず鼻息は荒いが、納得したらしい。
少女は「分かればいい」といった様子で、またベンチに腰を下ろした。そっぽを向いているが、ちらりと覗く耳は赤くなっている。
何となくだが有栖自身も、自意識過剰だと気付いているのだろう。
ただ、どうしても気持ちの整理ができなかった。やはりまだ、子供らしい。
「ところで、この学校ではどんな授業をするんだ?」
ともなれば、ここは俺が話題を変えるべきだった。
そのように思い、ふと気になっていた質問を『先輩』に投げる。すると彼女は眉をひそめつつ、こちらを振り返って一つ息をついた。
そして、しばし考えてから言う。
「それでしたら、もうすぐ実技授業が始まります。百聞は一見に如かず、とも言いますし、まずは見て覚えていただきましょう」
「あー、なるほど?」
たしかに、有栖の意見にも一理あった。
休み時間も終わりそうだし、そろそろ移動した方が良いだろう。
「……だったら、行くとするか!」
そう考えて、俺は立ち上がって大きく背伸びをした。
すると、
「…………ですか」
「え……?」
不意に、少女がなにかを言ったような。
上手く聞き取れなかったので振り返ると、しかし彼女は黙って立ち上がった。
「行きますよ。……遅れないでください」
「……お、おう」
そして、そそくさと先へ行ってしまう。
俺は首を傾げつつ、その後を追うのだった。
◆
有栖レイラは、冬也がついてくるのを認めながら。
前を向いて小さく、一つ息をついた。
「(……どうして――)」
そうして、内心でこう思うのだ。
「(どうして、こんな人が『選ばれた』のですか……)」――と。
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