未界 過去編
自宅へと着き書斎に入り、早速ラグエルから教えられたことを実践してみる。
まずは、自分へと流れる魔力を感知するために瞑想をした。だが、いくら頑張っても自分に流れる魔力感知できない。完治できるのは、周囲の魔力や、他の力だけだ。
なぜ自分には魔力が流れていないのか少し考えて理解できた。ツァラーは、この世界の人間ではないからだ。
だがここで諦めるツァラーではない。ここで諦めれば今までの努力が無駄になってしまう。
魔力は周囲に満ちているのだ。それを利用すればいい、とツァラーは考えた。
数日が経ち、ツァラーは周囲の魔力への干渉に成功した。
周囲の魔力をツァラーの掌に集められ、ツァラーは頭の中で火球を想像した。するとツァラーの掌から火球が現れた。成功だ。
次から次へと魔法を発動させる。もう慣れたようで、最初からできていたみたいに魔法を発動させている。
ツァラーは興奮したように喜色満面の笑みを浮かべている。
魔法を発見してからすぐに大勢のものたちに発表した。
それから二ヶ月が経ち、ツァラーは今大変に困っている。
なにに困っているかだって!?それは魔法を教えることに、だ!なぜこうなっているのかというと…
公の場で発表したからそれを聞き、魔法を身につけようと思う人たちがいるのは必然。ツァラーに教えてもらおうと、大勢の人がお願いすることは予想がついていた。じゃぁなんで困っているのか。
当然、教えを乞うも者には協力しようと、魔法を教えていたのだが、どうも自分みたいに上手くいく者はいなかった。
これが、『才能の差』か、とツァラーは内心で思った。
そんな考えは、置いておいて真面目に考える。
ラグエルの言っていたことを思い出す。
『発動させるための過程を掴めなきゃ行かないだろうさ』
ラグエルの言っていた過程。ツァラーは考え思い至る。ツァラーと他のものたちの違いに気がついたのだ。
「そうか!自分には魔力がないが、他のものたちには魔力がある。周囲の魔力を操るより幾分か簡単なはずだ!」
早速行動に移る。みんなが集まる広場へと向かうのだ。
広場へとついたと同時に雪が降り始めた。
広場では、魔法を教えてもらおうとやって来た者や、子供達で活気付いている。子供たちは雪が降り始めたことに興奮し、はしゃいでいる。
ツァラーが広場へとやってくるのを見つけると、教えを乞う者たちがツァラーへと話しかけた。
「私たちにも魔法を教えていただけませんか?」
ツァラーはそれに頷き、教えを乞う者たちは顔を見合わせ喜んでいる。
早速ツァラーは魔法の使い方を教えることにした。
「まずは自分の身に宿る魔力を感じるように集中してください。」
広場には、ツァラーの声が響きそれを聞き、皆一斉に集中し始める者たちでいっぱいになった。
それから数時間、魔力を完治できた者たちが出始めた。
その者たちに向けてツァラーは言う。
「魔力を感知できたら、次は掌へと魔力を集めて、頭の中で魔法を想像してください」
思い思いに魔法を想像する者たち。火、水、癒しや物体。あらゆる物が平場へと出現してゆく。
成功だ。
広場では興奮し、奇声を上げる者、歓声を上げる者たちで溢れていたい。
それから一ヶ月。魔法を発見するという前人未到を達成したツァラーの名は、伝染していくように伝わると、同時に、魔法の存在も知れ渡った。
ツァラーは魔法科学の責任者になり、〈賢者〉と呼ばれるようになり、富と名声を得たのだ。
二年後、この国、ラータニアでは国民のほとんどの人たちが、魔法を扱えるようになっていた。
魔法帝国ラータニアは、他国へと戦争を仕掛けていく。その武威を見た者たちから、軍事大国として恐れられ、歴史の1ページに刻まれるのであった。
残り1話で過去編は終了です。
今後は本編や、主要キャラたちの過去編を描くつもりです。