第2話 ニュースは簡単に
翌月曜日。学校に行きたくは無かったが、心音に引き摺られるようにして学校に連れていかれるのも嫌だったので、心音の隣を歩いて学校に向かう。
心音と別れて教室に向かうと、何やら男子は男子で、女子は女子で纏まって話していた。何事かと思い俺も男子の輪に混ざると、聞き覚えのある名前が聞こえてきた。
「水瀬さん、ストーカーされてたってマジ?」
「らしいぜ。昨日それで追いかけられて、誰かが捕まえてくれた事で解決したんだと」
いや、俺じゃん。それ。昨日の今日で噂が広まっているかと思うと、流石学年一の美少女だ。なんで広まったのかは知らないが。
「ねぇ、なんでそれが広まってるの?」
「ん? 晴斗か。いや、昨日うちの近くにパトカーが来てさ。なんだろと思って外見たら怪しい男と水瀬さんがそれぞれ別のパトカーに乗って行ったわけ。だからそうだと思ったわけよ」
「へぇ……」
「ん? 晴斗なんか知ってんの?」
男子に一斉に詰め寄られ、俺は少したじろぎながら知らないと答える。知ってるどころか、助けたのは俺だなんて言ったら面倒になるに決まっている。俺は面倒事に進んで関わりにいきたくはない。
「ちぇっ、つまんねーの。まぁいいや。助けたのって誰なんだろうなぁ、英雄だもんな。我らが水瀬さんを救ったんだから」
「ぶっ!」
想像とは違う方向で面倒そうだった。俺が思わず吹き出してしまうと、ジロっと睨まれる。
「なんだよ晴斗。英雄に決まってるだろ?」
「悪い、何でもない」
「そうか?」
そう言うと、男子たちはまた水瀬さんについて語り出したので、俺は今度は女子の集団に向かう。日頃の行いのおかげで特に何も言われることなく混ざることが出来た。
「おはよー晴斗。ねぇ知ってる? 先生捕まったらしいよ」
「おはよ。先生って、どの?」
ほとんど分かっているのだが、一応聞いてみる。ちょうど昨日先生を警察に突き出したばっかりなのですが。
「担任のアイツ。ちょっとハゲてて女子に向ける視線がキモかったから元から嫌だったんだけど、犯罪に手を出すとは思わなかったよねぇ」
「あぁ……担任ね、担任……」
「どしたの晴斗? 晴斗も担任キモイって言ってたじゃん」
「いやゴメン。突然の有名化になんだか頭痛くなってきただけ」
「???」
女子が頭の上にハテナを浮かべる中、俺は一人項垂れる。なんでこんな簡単に色々広まっているのだろうか。幸いまだ俺だと言うことはバレていないが、もしバレてしまうと俺の平和な学校生活が終わってしまう。
俺は少し不安に思いながら自分の席に向かい、気を紛らわすために予習を始めた。その様子を見たクラスメイトが、「晴斗が狂った」だなんて深刻そうに言い始めた。失礼な。俺だって真面目に勉強することはできるのに。
☆
昼休みになり、寂しく一人で弁当を食べていると、突然教室がザワついた。特に男子。何故か全員揃って後ろを向いているので、俺もそれに混ざって後ろを向く。
後ろのドアの方を見ると、今話題の学年一の美少女、水瀬雪菜がキョロキョロと教室を見渡していた。俺と目が合うと、普段の水瀬さんにしてはらしくなくアワアワと動き、そして逃げるように去ってしまった。
俺はよく分からないままぼっち飯に戻るのだった。
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