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旧ニレ村について
少しだけ昔、スギ村の南側かつケヤキ村の隣に、『ニレ村』という、とても小さな村があった。
しかし、キンキラ銀山の採掘が始まった頃からテオドール王の時代まで、イシヅミ町とスギ村の激しい覇権争いに巻き込まれ、暴徒化した人々により、村中が焼け野原となってしまい、ニレ村自体が無くなってしまった。
ただ一人、難を逃れて生き残ったのは、たった五歳の男の子だけ、だったそうだ。
故テオドール王は、亡くなったニレ村の人々に深い祈りを捧げた。
そして、当時の悲しい記憶を皆が忘れないよう、また永遠に、全ての国民が心穏やかに暮らせるよう願いを込め、旧ニレ村の跡地に、白のバラを植えることを考えた。
後代のアイザック王は、補佐官のオスカーと共に尽力し、イシヅミ町とスギ村の紛争を見事に休戦させたそうだ。
さらに、定期的に王宮の庭師を派遣させて、今も旧ニレ村跡地の白いバラを手入れさせているらしい。