表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハンゲツ王国ものがたり  作者: 立菓
22/40

記憶を辿って

 ジョンとオズワルドがベンチに座ってからすぐ、トーコは駆け足でこちらに来るのが見えた。


「オズワルドさんっ! お父様っ! 遅くなって、ごめんなさい!」


 トーコがベンチの前まで来ると、息を切らしそうにして謝った。

 頭にティアラを付けたままだったからから、少しだけズレている。トーコは呼吸を落ち着かせようとしている間に、手でティアラを定位置に持ってこうとした。


 その時、オズワルドの視線を感じて、トーコはすぐに彼の方を見た。

 オズワルドはトーコと目が合うと、微笑みながらサラリと言葉を発した。


「……似合っている」


「へ……? そう? まあ、正装だと全身が重かったから、ティアラだけは部屋に置いておきたかったけど、時間が無かったかなぁ……」




 普段とは違うトーコの姿を見て、オズワルドは王宮の近衛兵だった頃を、自然と思い出したのだった。


 彼が近衛兵になったきっかけは、伯父の剣術教室に、偶然オスカーが訪れたことである。オズワルドは他の生徒よりも群を抜いて、剣の使い方が上手かったそうだ。

 それだけでは無い。元々体力がある上、誰よりも冷静で素早い判断ができるからであった。

 

 それらの理由があって、彼は十五歳の若さで、近衛兵になることを、オスカーから勧められた。



 しかし、オズワルドは王宮の生活に、なかなか慣れることができなかった。彼は元々、にぎやかな場所は非常に苦手であったからだ。


 また、他の近衛兵と比べて圧倒的に若かったからか、特務として国王陛下専任の護衛を頼まれた時期もあったためか、皮肉にも周りからは嫉妬の対象となっていた。

 それ故、常にヒソヒソ話しながら遠巻きに見られたり、避けられたりして、完全に孤立していたのだった……。


 彼の心が休まるのは、一人になれる時くらいだったから、普段は周りの目を気にしすぎて、毎日何となくピリピリとしていた。



 そんなオズワルドだったが、気にかけていた人物が一人居た。

 慣れないティアラを頭に付け、長い丈のチュニカを着て、今にも泣きそうな顔で、王族が集まる食事会にヨロヨロと向かう幼い少女を、オズワルドは王宮の廊下ろうかで、繰り返し見かけたのだった。


 その少女の姿が、いまだに悲しい過去を引きずり、感情を殺すように過ごしていた()()()()()()()()()()


(声をかけてみたいが、彼女とは親しい関係じゃねーからな……)


 周りの人々が経験したことの無いような特殊な悩みを、彼女も抱えている気がして、どうしても目が離せなかった。



 時は流れ、ある日……。オズワルトは気にかけていた少女を、馬小屋の前で見かけた。

 その時、彼女は珍しく楽しそうに、馬の頭に優しく触れていたところだった。


(なんだ……、ちゃーんと笑えるじゃねーかっ!)




 それから、山岳警団に転職して数年が経ち、オズワルトは偶然、彼女と再会することになった。

 彼女の家に招かれた時、彼女は、昔に王宮の馬小屋で見かけた時と同じ笑顔を見せてくれた。思わず胸が高鳴って、何だか甘いような気持ちになったのだった。


綺麗きれいになったな……。あと、淡い思慕なんかじゃねーみたいだ、コレは――)


 その時、自分は彼女にかれているのだと、オズワルドは気が付いたのだった。


 体がボロボロになろうが、それでも構わないっ! 彼女のためなら何だってしたいと、強く思わずにはいられなかった。




 だから今、()()()()()、自分を夫として迎えてくれることとなり、オズワルドは本当に満たされる心情であった。


「俺の横に座って、少し休め」


「うん、ありがとう。……お父様っ! 報告が遅くなって、本当にごめんなさい……」


「いいんだよ、トーコ。本当に良かったね。……オズワルドくん、これからもトーコのことを頼むよ」


「もちろんです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ