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深夜の勇気

作者: ロン

 12時を少し回った頃、二人の女性がハンバーガー店に入った。二人はどうやら飲み会帰りで、最終電車が来る30分後までこの店で時間をつぶすことにしたらしい。上気した顔でそれぞれ紅茶とコーヒーを頼んで席に座った。

「あいつを落とすにはどうしたらいいの」

 深夜の店内に二人の声が響く。紅茶を頼んだほう――仮に紅子としよう――の好きな人について話しているらしい。コーヒーを頼んだほう――黒美とする――は実力行使に出てしまえとそそのかしている。紅子の想い人は相当鈍い人らしく、いくらアプローチをかけても気づかないと嘆いている。

「あの鈍感を落とすんだったら、もうお持ち帰りしてもらうしかないって」

 紅子は笑い始めた。あまりに陳腐化した手段だ。自嘲の笑いだろう。ひとしきり笑った後、紅子は決意の表情を見せた。

「でもそれくらいしなきゃ気づかれないよね……。わかった。やってみるわ」

「よしよしやってやれ!応援してるぞ!」

 黒美が紅子の方をたたく。そして紅子はため息を吐いた。

「今日みたいな日にあいつがいれば、『ねむーい』とか言って寄りかかってやるのに」

「もう紅茶飲んじゃったからダメでしょ」

「いやいやまだまだ。カフェイン弱いし」

 たらればを言いながら、管を巻いている。最終電車まであと15分、あの調子だろう。

 自動ドアが開く音がした。店にいたほとんどがつい顔を上げて入口を見る。20代くらいの男性だった。店員や多くの客は何事もなかったように視線をもとに戻したが、紅子だけは違った。目を少し大きく開き、悲鳴を飲み込んだ。え、うそ、どうしよう。そんな声が漏れ出てくるようだった。

 黒美がスマホの時計を示した。最終電車までの時間、持ちこたえればお持ち帰りしてもらえるかも。今日がチャンスとばかりに目が輝いている。

 男性が商品を受け取り、席を探して辺りを見回した。そして紅子と黒美を見つけて声をかける。その二人が今まで自分のことを話していたとは露知らず。明るい声で話しかけに行くのであった。


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短編作品。

短編創作お題出したーより拝借

https://shindanmaker.com/139886

「真夜中のファーストフード店 が舞台で『紅茶』が出てくるラブコメな話を7ツイート以内で書いてみましょう」

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