召集令状。4
日本料理店 魚ハから左右に分かれて全部の雪を海に投棄する様に命じたんだ。そして、車から閉じ込められた人を救出した後、車を左右に寄せられるだけ寄せて緊急車両が通れる様にも命じたんだ。僕たちは二手に分かれて人々を救出してみんな店内に避難させたんだ。大丈夫な方もいたが、そうでない方々は座敷で休んで頂いたんだ。トラックの人は配達と言ってたが、それ以外の人は車で避難所まで向かってたって言うのだ。車は電動自動車に変わっているが、限度というものがあるのだ。そう、酸素がね。閉じ込められるとどうしてもその辺を気にしなくてはいけない。だから、自重する事なく急ぐ様に言ったんだ。
人々を店内に誘導すると、あったかい雑炊をピール君とモハメド君のペアが次々と運んで行ってた。イヴァン博士も大将の指示の下、大量の野菜と格闘していたよ。その包丁さばきたるや、プロ顔負けなんだ。ついつい見惚れてたら。
「おいおい、今は人命救助が先だろう?此処で油売ってないで現場に戻れ。」
「…………」
元を正せば、此処に流れ着いたのはイヴァン博士であって。僕たちおまけの筈だったのになぁって。苦笑いしつつ、コート着込んで現場に戻ったよ。僕の指示で次々と人は入って行きごった返す様になった。わいわい賑やかになった途端に店の電気が一斉に落ちた。何事かと思って戻ってみれば。
「停電だな。電線が雪の重みに耐えられず断線したのかもしれない。参ったな。竃は薪だからまだどうにかなるんだが。」
「僕が発電機持ってるがそれでどうにか凌げないだろうか?」
「悪いが、頼む。」
「任せて。」
僕は、大将に電気調理器のコードを出してもらって接続したから調理は再開されたんだ。でも、これじゃ暗いままだから、コップの中に油を注いでティッシュペーパーで作った紐状の物をアルミホイルで紐状にしたもので固定して、イヴァン博士から借りたライターで簡易的なライトを作って室内に配布していったんだ。周囲から。
「うわぁ、綺麗。」
って声が漏れたから、お願いだからそれ倒さない様に気をつけてねってお願いしたんだ。
雪が積もってないエリア近くまでどうやら到達したらしく、災害派遣ってでかでかと書いてある布を掲げた日本軍と思われる車が駐車場に入って来たんだ。既に8号線は通行止めってなってたんだが、軍が車に京都方面に向かう車のみなら通れるって分かって知らせに来てくれたんだ。僕たちが雪と格闘したって言うのは先方も良く承知していた。その上で、京都行く人車移動出来ますって言えばお礼を言って車に戻っていって向かって行ったんだ。だけど、8号線結構距離が長いので福井県だけやれば良いって訳ではなくて地理感疎いにも関わらずイヴァン博士と僕に相談しに来たみたいなんだ。
「日本陸軍第8師団所属 長岡 有朋です。階級は少佐であります。お忙しい中自主的に救援活動に従事して下さり有難う御座います。」
「イギリス空軍第3師団所属 中将 エドワード・ジョージ・スペンサーである。こちらに到着して地理に疎い故大してお力になって居らぬがよろしくお願いする。」
「こちらこそ。」
そう言って、僕が上官に当たるから敬礼されてしまったよ。僕も返礼を返したんだ。長岡少佐はタブレットを持参して拡大した地図を表示して説明してくれたんだ。
「エルフの女王陛下とルーベルト少佐のご尽力の賜物で、現在、この地域までの除雪作業が終わり、救援物資の運び込みが出来ております。ですが、問題はこれより最北端、7号線のある青森県まで渋滞が続いている事にあります。」
「……………随分と長いな。」
「はい、現在、青森県側に魔導師団を派兵して除雪作業をしながら南下してはいますが、申し訳ありません。力及ばず。」
「つまりは、新潟迄の8号線を我々で道を開けろと言う事だな。」
「すいません、いつもならもっと遅いし、もっと降る量も少ない筈なんですが。今日1日だけでも2m以上の雪なんて尋常なじゃない量が降ってまして。」
「まぁ、朝の時点で既に避難勧告出ていた位だったしな。」
「はい。御一行が種子島から福井に来られてたのは存じあげてました。ニュースをご覧になって予見して駆けつけるとはと我々も心から感服した次第です。」
目的は違うがまぁ、知らぬが仏と言うものであろう。
「あい分かった。福井から新潟県間の8号線が終われば報告しよう。そちらの連絡先を教えて頂きたい。」
「はっ!こちらになります。」
僕と長岡少佐はお互いの連絡先を交換したんだ。最後に少し気になった事を。
「一つだけ確認取りたい。先程、ルーベルト少佐と言われてたが。」
「ああ、内示が出たのは今朝の話です。千里眼による情報提供の功績が非常に高く、本当ならば5階級特進だったんですが、『僕なんかがエドワード王子と同じ階級など、余りにも畏れ多い』と仰せで、少佐であればと。」
「ならば本来であれば大佐に昇進してたと言う事だな。全く、慎み深いのも大概にするが良い!あの者の能力にしては余りにも評価が低いとは前々から思ってはいたが、そうか。自分から固辞するのか。そう言う所まで。」
「はっ、ルーベルト少佐も前回の少尉任官の際にも世界政府が手を焼いておりまして。前回同様、千里眼によるものですが、その時も5階級特進を断ってまして。」
「じゃあ、あの者、ちゃんと受諾してさえいれば僕と同じ中将って訳か。だが、あの者は慎み深いから責めて給金だけは本来の大尉の給金だったと言う訳か。なるほどなぁ。あの者の性格は良く存じてる。本人に承諾など求めてたらいつまで経っても過小評価のままである。強引に中将の位を与えてしまえば良い。長岡殿、教えて頂きありがとう。ルーベルトの件は此方に任せて作業に戻るが良い。」
「それでは、失礼致します。」
そう言って、敬礼してから作業に戻って行ったよ。僕はため息混じりに世界政府の上層部に電話だ。案の定、世界政府も日本陥落って窮地から救ったルーベルトの千里眼の事は高く評価してるのに本人が。って困ってたので強引に本来の中将にする様に打診したらあっさり認められたんだ。ただ、身分的なもので中将になった僕と本来の実力でなったルーの格差が大きいので、僕も奮起しないとなぁって思ったんだ。
福井県全域の国道7号線が一時的に片道開通して、私達はエドに呼び出されたんだ。どうやら、担当区域決まったそうで。
「新潟県全域まで…………」
「…………」
「日本国軍が魔導師団を青森県にある7号線から除雪作業中との事だが、何分にも範囲が広い。まぁ、僕たちの割り振りも石川、富山、新潟だから広範囲だ。それまでに休憩と、此処みたいに自主的に炊き出し出してる店への支援を急がねばならぬ。道路の方は雪が積もらぬ様加工はしてるか?」
「それに関しては僕が抜かりなく。ただ、気になるのが雪の量が多くて既に被害が出てる場所に救援が来てるかどうかって所と、国道以外の一般道にも被害が出てる可能性がある事なんだよね。国道通してはいおしまいってならないのが。」
「その辺は流石に実力で中将まで至るだけの事はあるな。」
「えっ?」
「僕から指示を出す。ミサト様達はこのまま北上し、拠点を作りつつ、閉じ込められた人員の救助に当たるが良い。僕とルーは福井県の災害本部に赴いた後に道路状況と被害確認、及び救出後に石川県の災害本部に向かうとする。ミサト様、指揮の方はお願いします。」
「やれやれ、楽はさせて貰えぬと見た。イヴァンに丸投げはダメなのか?」
「ええ、今後はイヴァン博士には参謀の役でお願いすれば良いでしょう。月の戦に向けて練習するつもりですれば良いかと存じます。」
「…まぁ、女王然としてるよりも私は一人の人間でいる方が好むが、そなたが言うのはもっとも。無事、新潟迄辿り着いてみせよう。」
私は休憩を終わらせて出ることにしたんだ。
ミサト様は暖かい飲物を召し上がった後に先陣を切って外に出られた。みんなも手を振って。僕たちはそれを送り出したんだ。途端に僕たちは飛ばされて。行った所はシドニーの自宅さ。ルーの奴。釣れたよ。案の定、ご立腹だ。
「エド、さっきの中将って何!?」
「ああ、少佐では今までの功績に対して低すぎると具申したまでの事だ。僕は、王に即位すれば最高位の将軍職迄行くだろうね。実力で登っていないって点が至極残念だが。その時にね、僕は自分の権限で側近選べるんだ。但しそれには条件がつく。少将以上ってのが。僕は寝ても覚めてもそなたを側に侍らせていたいからね。将軍職打診されたらその時は断れば良い。だけど、僕の手元に置いておきたいからね。死ぬまで、綺麗な奥さんを手元で愛でる権利だと思えば実に容易い。」
そう言って、不謹慎だが、僕はちょっとだけつまみ食いを。キスしてちょっと刺激与えただけでたまらなく色っぽいんだ。だけど、人命が最優先なのは百も承知なので。
「いけない子だね。この先欲しかったら仕事。ちゃんと終わらせてからだよ。」
「……………いじわる。」
でも、ルーを可愛がる手は止めてあげないんだ。体はもっとってわかりやすく訴えているんだけどね。本当に可愛い。ここ数ヶ月ですっかり良い女になったと思うんだ。僕もすっかり快楽の虜さ。世界一美しい女性と結婚出来た幸運。それに勝るご褒美はあり得ないんだ。
「さぁ、こう言う特典付いてるから大人しく中将におなり。僕だけのルシール。戦後が楽しみだよ。公務の時も、軍務の時も、ベットの中でもずっと一緒だ。僕の側から離れる事一切許さない。」
「…分かったよ。エドが僕を望んでくれる限りずっと側にいるよ。約束。」
「ああ、約束だ。ルー。本当に愛おしい。」
そこからは、ちゃんと切り上げて。キスしてから福井県の災害本部に直接飛んだんだ。もちろん、ちゃんと身だしなみ整えたのは言うまでもない。ルーの千里眼はこんな事案でも先方様には大変喜ばれ、僕、本当に素敵な奥さん娶ったんだと思ったらさ。鼻が高かったよ。結局、僕たちの方が早く3県めぐり終えたけど、ミサト様達の事が気になったから新潟県の国道8号線と7号線の境界から南下を始める事にしたんだ。




