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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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召集令状。3

俺は、この破天荒な髭の殿下がまさか天皇家にいらっしゃるお方とはつゆ知らず、事の成り行きを見守ってたんだ。大将はさ、その殿下が注文したって言われる舟盛り?って言うんだろうか。それを出してくれたんだ。本当に見事なんだよ。見た事もない魚がズラッと盛り付けされてて。幸太郎なんてめっちゃ目の色変えて撮影してる位なんだ。


「いやぁ、日本が空に浮いてからと言うもの、絶対お目にかかれないと思ってた鯛の舟盛り。この歳になってから見る事になるたぁ、思っても見なかったぜ。」

「そうだろう。そうだろう。元々、海に囲まれた自然豊かな土地だった島国日本が誇った日本の文化だ。これを味わずに戦地に行くなんて選択肢、俺には無かったんだ。この舟盛り、軽く10人前位あるんだ。これをいつもだったらSP達と摘んで晩酌と洒落込みんだが、そのSPはこの事態を知らせる為に京都に返したんだ。んで、俺は雪と戯れてた。って訳なんだ。」

「…………」

「問題児を抱える勇者一行に、問題児が追加で参戦とはまた。」

「ああ、問題児ってイヴァン博士の事だろう?報告書は全部読んでたが、面白いなぁ。本当に。俺もこんな面白い旅を堪能出来るんであればイギリス辺りから混ざっとくんだったと絶賛後悔中だ。」

「辞めてくださいよ。そうでなくても、イヴァン博士相当手がかかるのにそれ以上に手のかかる宮様が来られた日には。僕は日本から宮様を出さなかった日本政府を高く評価しているよ。」

「おいおい、それは無いだろう。」

「……………ご自分の日頃の行いを胸に当てて良く考えてから言ってください。そんな高貴なご身分で、たった一人でここまで来るなんて。SPだって大反対したでしょう!それなのに、それなのに…………」

「まぁまぁ、店の灯りが消えてなかったんでお陰様でどうにかなっただろう?俺だって、それが無けりゃあ、大人しく楠木に回収して貰ってたさ。ってなわけで、悪いけどもう1回スマホ貸して。」

「…………」


この軽妙なやりとりを前にしてなぁ。俺、警戒するのバカらしくなったんだ。エドは渋々スマホ貸してて、宮様は部下であろう人と連絡取って俺たちと奇跡的に合流した事話して安心して頂いた様だ。一旦、舟盛りは回収されて、お子様の順から料理が出されていったんだ。大将は傍でかまどで大量に米を炊きつつ、味噌汁の出汁を一から取りつつ、まず、ピールとモハメドに大きなプレートに即興で作ったサビ抜きの寿司とか饂飩、出汁巻き玉子、唐揚げって言ったお子様セットを作って出してたよ。これにはピール達も嬉しそうに頬張って。


「これ、美味しいね。モハメド。」

「はい、美味しゅうございます。ピール。」


って子供達が泣きながら食べてるんだよな。人に作ってもらうご飯の有り難みを噛み締めながらな。この子達が笑顔を見せるのは本当に久しぶりだった。憎しみが感情を支配してた頃は本当に幸太郎達に辛く当たってたんだ。それも俺が取引に応じたせいで正直、有耶無耶になってた。しばらく見てないから何とも言えないけど、今の現状では一度拗れた関係が修復するなんてあるんだろうか。俺はピールに違和感感じたんだ。

ピールの右目には刀の鍔で作られた眼帯が巻かれてたんだ。俺は気になったから聞いたんだ。


「なぁ、ピール。その右目、どうしたんだ?」

「……………民衆の怒りを目に受けて失明したんだ。僕たち何も知らずに生きてきたけど、本当は民衆を不幸のどん底に叩き落してる土壌の上で胡座をかいてただけだったんだ。僕、民衆に投石されて失明するまで僕が憎しみの余りに自分の仲間傷つけていた事すら気づいてなかった。真実に辿り着いて初めて、これは此処にいないアレスタのせいじゃなくて自業自得だった事に気がついて。ただ、あれから色々あったから謝る機会すら無くて。本当にごめんなさい。僕たち、感情に任せてみんなを傷つけ困らせてました。」

「…………」


ピールとモハメドな。一旦椅子から降りてみんなに頭下げたんだ。そしたらさ。


「もう、頭上げてくれよ。俺は何とも思ってないからさ。」


って幸太郎が言うんだ。どうして良いものか凄く悩んでた人がだよ。ただな、それじゃ答えになってないから。


「んじゃ、その目はもう見えないのか?」


って俺は聞いたんだ。ピールはちゃんと答えてくれたよ。


「それなんだけど、僕の見えなくなった右目は摘出されて、今、別の方の目になったんだ。ちゃんと修復されてるけど、視力は多分弱いんだ。詳しい経緯は勅使河原先生に説明丸投げするけど、摘出された現状のままだと僕も失明しちゃうって言うんで視力補正のかかるAIを急遽取り寄せて貰って右目に入れて貰ったんだ。ハッカーが失明なんてあっちゃいけないからね。お陰様で、眼帯してる状態でも僕は普通に両目で見る程度の視界が得られてるんだ。」


そうして、眼帯を取り外したんだ。自分から。普通に目は開いてたんだが瞼の上には子供には似つかわしくない大きな傷があった。んで、開いた目から明らかに異質なAIが見えたんだ。機械を自らの意思で入れる事を選択した少年は俺が思ってた以上に。暫く見ない内にすっかり成長していたんだ。眼帯作ったと思われるバイソンさんも満足そうな顔してたよ。リンちゃんが涙腺崩壊しそうってのがまた。

そうなると、気になるのは摘出されてピールの目って事になるんだが。と、その前に、魔法使える二人に優先的に料理を出して貰わないとまずいな。って訳で。


「大将、先に妖精魔法使えるこの二人に食事出してもらえないだろうか?」

「あいよ。」

「その前に、陛下とイヴァン博士。荷物返しておきます。陛下は屋久島のご自宅に置かれてたもので、イヴァン博士は僕のシドニーの自宅に置かれてたものです。本当に考え無しで行動するのは如何かと思いますよ。僕は。陛下を危険に晒した件。怒ってるんですからね!」

「……………それに関しては本当に済まなかった。言い訳がましいが、俺もどうかしてた。」

「……………じゃあ。」

「俺、どうにかしてミサトに蔓延る死の未来から守りたいんだ。みんなを危険に晒すのは重々承知してるんだ。でも、俺、戦場出られなくなってしまって……………どうか頼む!こんな俺に力を貸してくれ!」


俺も頭を下げたさ。そりゃあもう、必死さ。俺の頭一つで命よりも尊い人を守れるなら幾らでも頭下げていられたさ。そんな俺にアークはこんな事言い始めたんだ。


「へぇ、お前もやれば出来るじゃあねぇか。感心。感心。」

「アーク?」

「俺さ、ジーク様の預言。結局覆したの、覚えているよな。」

「ああ、勿論。確かに見てくれは遊び人なのにな。中身はまるっきり真面目だからさ。俺も預言聞いててまずあり得ねぇ。って思ってた位だ。あれがどうかしたのか?」

「俺な、此処から話すのは全く夢物語だからさ!笑ってくれて構わねぇが、そもそも預言ってのはな?より良い現実を得る為の指針ってだけであって、100%叶う預言って本当は存在しないんじゃないか。って気がするんだ。だから俺はこう思うんだ。ここのメンバーが誰一人として死なない未来。あっても良いんじゃねぇかってな。そりゃあ、戦争してんだ。俺が言ってる事が単なる夢物語だって分かっちゃいるさ。だけど、俺にはこれがある。これがある限り俺は運命なんかにゃ負けるつもりは毛頭無いんだ。」


そう言って掲げたのはアークの相棒、魔剣シルフィードだ。女神を冠した剣を持ってる限り、負けた姿なんて想像すらつかなかったよ。本当に頼もしい親友だよって俺は思ったんだ。


「……………分かったよ、その話。乗った!」

「おう!お前に頼られるってのは実に気分が良いもんだ!これからもこうあって欲しいもんだ!お前、今まで一切人を頼ろうとしなかっただろう?ちったぁ、心配してる人間の身にもなれや!」

「それに関しちゃ悪かったって、言ってるだろうが!」


そう言いながら、毎度お馴染みの悪ふざけが始まるんだ。そうしたらな。


「おいおい、お前ら。いい加減にしとけよ?そこで大人しく食べてる人の身にもなれや。」

「「すいません。」」


この幸太郎とのやり取り迄がテンプレなんだ。みんなが思わず大爆笑するんだよ。良かった。また元の雰囲気に戻ったんだ。そうこうしている内に俺たちにも料理が運ばれて美味しい寿司と饂飩。出されたんだ。身体はあったまるし美味しいしで。此処は饂飩も蕎麦も手打ちらしくてな。俺、宮様にこれも美味しいから食べてみろって勧められて食べたらめっちゃ美味くて。どうも宮様。本当の目当てはこの十割蕎麦だったそうなんだ。その細身にどんだけ入るんだと言わんばかりに天ぷら蕎麦と盛り蕎麦食べてるからさ。俺もびっくりだ。俺は炊き出しの手伝い。ミサトとルーは魔法による雪掻き出し作業。エド達残りの面々は半分に分かれてそれぞれ救出作業。アメリアさんは症状次第で回復。勅使河原先生も状況に応じて応急処置。子供達は配膳と作業を割り振って作業開始する事にしたんだ。車が悠々埋まる量だ。長話していたかったが、そんな悠長な事を言ってる場合じゃ無かったんだ。

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