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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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召集令状。2

 そんな中、山登りから戻って来た私達は郵便受けに2枚の真っ赤な葉書が入っているのを見つけたんだ。何も知らずに自分の宛名が書かれたうらを見た。裏には召集令状って。書かれていたんだ。

 イヴァンの顔が真っ青になって震えだした。次の瞬間、私は家の中に押し込められて玄関には鍵がかけられた。息が止まる様なキスをしたんだ。息が続かなくなって離してと右手で叩いて促したらイヴァンは離してくれたよ。二人して息が荒かった。はぁはぁ言いながら。


「これは世界政府が正式に発行した召集令状。所謂赤紙なんだ。月でも見覚えがあるから分かったんだ。この令状には拘束力があるんだ。召集に応じなかったら指名手配されるんだ。世界にな。ミサト、頼みがある。俺と一緒に逃げてくれ!お前が月でむざむざ殺される未来なんてそんなの御免被る!」

「……………知ってるよ。イヴァン。私、死ぬんだよね。勅使河原先生から聞いてるから知ってるんだ。でもね、私、逃げるつもりはないんだ。」

「どうして!」

「それが、イヴァンが願った事だからだよ。月の民の一般民衆を地球に連れて帰るんだよね?そもそも、戦って来たのは多くの無辜の民を救う筈だったでしょう?思い出して。」

「分かってる。分かってるんだ。でも、俺はこの腕の中の宝物を手放したくない。死なせたくないんだ!俺は一体、どうしたら良いんだ!」

「……………多分ね、現実から目を反らしても解決方法なんて何一つ無いんだよ。二人で立ち向かおうよ。運命に。私を置いて行ったとしてもこれがある限り、私はあなたと共にいる事は辞めるつもりは無いから。」


 そう言って、誓約の腕輪を出して笑ってみせた。だけど、その瞬間、私の首筋に手刀が下されて真っ暗になった。イヴァンの腕に抱かれてはいたが不安しか見えなかった。



 僕は信じられない報告をルーから聞いて衝撃を覚えた。


「そんな馬鹿な。イヴァン博士がミサト様を連れ出して逃げてるって本当なのか?」


 僕が心から敬愛してやまない僕の姫君に笑顔はない。厳しい顔をして首を縦に振った後、言葉を続けた。


「うん、間違いないよ。エド。玄関先にこれ、落ちてたよ。イヴァン博士がビリビリに破いたんだろうね。きっと陛下の事が好きすぎて、耐えられなかったんだ。陛下が亡くなられる未来が。一応、報告したんだよね、勅使河原先生。」

「勿論さ。こんなん突きつけられてまともな判断出来るのは覚悟のある人だけさ。だけど、それが揺さぶられる事態が起きた。イヴァンにとって女王陛下は最早、命の次に大事なんだ。自分の主義主張よりもはるかに。はるかに大事になってしまったんだ。あの女王陛下様は人の心を惹きつけて離さない。年齢以上に落ち着いてて、しかも、ちゃんとした指導力だってあるんだ。あの若さでだ。だから僕たちには命令が下った。24時間以内に彼等を捕らえよってな。その時間までなら今回の件は不問に処すってお達しだ。事情は察するに余りあるって言われたよ。」

「全く最後の最後まで自由人だったな。イヴァン博士。イギリスでも相当手を焼いたが。24時間の猶予か。勝算があるのか?ルー。」

「勿論。今晩の天気予報と日本地図を出してくれるか?」

「分かったわ。」


 そう言って、リンちゃんは手早く日本の全国地図を。ピール君はパソコンから今晩の天気予報を入手して微笑んだ。千里眼で現在の位置を紐解くと。


「現在は大分県を北上する形で車で移動中だよ。でもね。この後、福井県に差し掛かった時に大雪に巻き込まれて移動出来なくなるんだ。天気予報を見てごらんよ。避難勧告出るレベルの豪雪だからそこからは嫌でも徒歩を強いられる。昔のイヴァン博士だと止まらないけどね。天候位じゃ。今のイヴァン博士は喘息抱えてて急激な気温の変化に脆いんだ。復調したばっかりでそんな無茶には耐えられない。僕たちは福井県全域の病院に手配書回して待機するだけの簡単な仕事さ。なんで、先回りしよう。雪がまだ落ち着いてる内に福井空港まで先回りするんだ。」



 夜になって、俺たちは車を乗り捨てなければならない事態に陥った。本当に思いつきで行動するもんじゃないと俺は思わず頭を抱えてしまったよ。豪雪で交通渋滞が起きて、身動き取れなくなったんだ。車は邪魔にならない場所を選んで辛うじて駐車場に乗り捨てる事が出来た。だが、後先の事を考えると鍵をつけたまま乗り捨てた方が良いだろう。俺はたまたま閉店作業中の店員さんに事情を話して快く置かせて頂いたが、念の為に連絡先をと聞かれたので、迷惑を承知で幸太郎のスマホの番号を教えておいた。そして、ここで足止めを食らった理由を聞いて愕然とした。


「今夜の豪雪でさ、既に何軒かの屋根押しつぶされて福井県全域避難指示が出てるんだ。福井県より北の地方も同様だ。なんで、閉店時間まで来てないけど早仕舞いする事にしたんだ。救助依頼出しとくから、あったまっていくかい?隣の彼女。凄く寒そうにしてるし。」

「……………すいません、お言葉に甘えます。」


 こうして、俺たちはお言葉に甘えて暖を取る事にした。屋久島からこちらに向かってた時から思っちゃ居たんだが、南の気温と北との気温差激しすぎないか。薄着のミサトも俺もすっかり寒さに震えていたよ。


 店主さんは日本料理店を営んでいた。真っ先に出してくれたのはあの幻の鯛のあら汁だった。箸をつけようとしたミサトの手が止まる。


「あのぉ、海の魚って幻の魚ですよね。何で見ず知らずの私達にこの様な高級品を提供して頂けるんでしょうか?」

「ああ、それはな。今日の予約がこの雪のせいで強制的にキャンセルになっちまったからなんだ。この日の為に貴重な魚を仕入れてたのになぁ。俺の店は大損害確定だが、ゴミに捨てるよりか美味しく食べて貰った方が魚も喜ぶんだ。遠慮せず食べて行くと良い。」

「んじゃ、お言葉に甘えていただきます。…これ、めっちゃ美味い!」

「そうだろうそうだろう。しっかり食べて行きな。」


 こうして、俺たちは美味しい料理に舌鼓を打ってたんだ。この幸運を羨ましがった全員がこの後乗り込んで来るとも知らず。



「日本料理店 魚八に二人ともいるんだって。あんまりにも寒そうにしてたから避難指示出てるのに大将の出した幻の海の魚料理に舌鼓打ってるんだって!」

「えええええええっ!」

「散々心配かけておいて何?それ。狡すぎない?」

「とりあえず、みんな、美味しい料理が食べたいのであろう?」


 僕が聞いたら、みんなの首が一斉に縦に振られたんで……………


「やれやれ。僕たちは観光に来た訳では無いのだがな。まぁ、僕も幻の魚料理って気になっていたんだ。交渉に応じて貰えそうなら御馳走出して貰うとしよう。ただな、避難指示出てる場所ってのが。ルー、屋根に降り積もっている雪を排除して屋根に積もらない様に出来そうか?」

「それだったら問題無いよ。精霊達に手伝って貰うとするよ。ついでにシールドかけておけば持ちこたえるんじゃない?僕の魔法で今後除雪しなくても大丈夫な様にするから。まず先にみんなを飛ばしてしまうね。」


 そう言って、一斉に僕たちを送ってくれたんだが。そりゃあ、そうなるか。その場にいた3人。すっかり固まって、イヴァン博士に至っては警戒感丸出しだったからね。だけど、みんな御馳走食べたいって顔に書いてあるもんで本当に非常識極まりない交渉を始める事にした。


「驚かせて済まない。実は、我々は此処の二人を保護しに来た筈だったんだが、場所が日本料理店だと言うので他の面々が一斉に食べたがっておる。避難指示出てる地域の方に言うような事では無いのだが、我々にもそなたの料理を振舞って頂きたいのだ。非常識極まりないのは承知の上だ。勿論、此方の二人の食事代も合わせて支払わせて頂くつもりだ。今、ルーがこの場所が潰れない様に処置を施しておる。」


 って言った側からルーが中に入ってきたんだ。そして、非常にまずい事を話し始めたのだ。一人の男性を抱えて。僕はこのお方に見覚えがあった。


「竹田宮様。何だってこんな場所においでなのですか?」

「そう言うあなたはエドワード皇太子殿下じゃありませんか。この度は御即位おめでとうございます。って、そんな事言ってる場合じゃない。日本国軍に災害派兵要請するレベルなんだ。雪が降りすぎて、みんな車に閉じ込められてるんだ。店主、悪いがそいつらの為に炊き出しを用意してくれるか?んで、皇太子殿下。悪いけど、スマホ貸してくれないか?俺のスマホ充電切れてな。」

「それは竹田宮様が故意になさっている事でしょう。まぁ、今はあなたの交渉力に期待しましょう。今、イヴァン博士を24時間以内に保護する様に言われてまして。」

「そんなもん、俺がどうとでもしてやるよ。あー、もしもし。竹田だ。今、そちらに真田将軍はお見えか?緊急事態だ。すぐ変わってくれ。……………おお、真田か、久しいな。実は福井県より北方、豪雪が酷く8号線両方の車線とも車中閉じ込め事案が多発してるんだ。俺の命を最優先でお願いしたい。……………は?月攻略だぁ?そんなって言っちゃまずいのは重々承知だ。だがな、そなた達が安心して戦えるのは誰のお陰だと思ってるんだ?みんな国民の期待のこもった税金で賄われているってのを忘れてしまっちゃ、困る。自衛隊時代で培われた思いを忘れたたぁ言わさねぇ。それを証拠に見てみろ。イヴァン博士達一行、みんなこっちに駆けつけているんだ。災害派兵第1陣として俺の指揮下に入れるから大至急で派兵を急いでくれ。命令だ!世界政府の報告は任せる。人道的支援してくれてる博士を処罰した日には世界政府の名折れであろう?上手く丸め込め!それじゃ、よろしく頼む!」


 そう言って、上手く丸めて頂いたよ。この皇族らしからぬ髭の風貌で破天荒な御気性。僕も大好きなんだ。


「これで良いだろう。ただ、悪いがみんなは手伝って貰わないといけなくなったが。」

「いや、それに関しては問題無いが。みんな此処の料理を楽しみにしていたから。」


 そうなんだ。幻の鯛のあら汁。ってのでみんな此処に押しかけた位だ。お預けになりそうな勢いの話になってたんだが。


「それだったら、俺が予約していた奴を握り寿司にして出してやってくれるか?大将。」

「……………良いのか?」

「良いも何も。俺も此処に来たのはこれ来たから召集前に大将の料理を食べてから行こうと思ってたからなぁ。数日前から予約してたんだ。今日のこの事態はきっと神様の思し召しなんだろうな。まぁ、此処の地方の雪、舐めてた。それに関しては否定しない。」


 そう言って、見せてくれたのは紛れもなく召集令状だったんだ。僕は苦笑いする殿下を前に呆然としてしまったよ。日本の皇族は僕たち以上に歴史が古い。唯一の皇帝って呼び名が与えられる位だ。天変地異前に存続が危ぶまれた天皇家。だが、天変地異で天皇家に死者が出た事で事態が一変して。男性しかなれなかった筈の天皇の位に女性が即位なされた。現在も象徴天皇だが、血統が途絶えるのを良しとせず第二次世界大戦後に皇籍を追われた宮家の復権が認められたんだ。その一つがこの破天荒な殿下がおわす竹田宮家って訳なんだ。

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