恋愛のやり直し。4
ルーちゃんと勅使河原先生と別れて学校に戻って。宿泊棟に戻って。外箱を先生に預かって貰って宿泊する部屋に戻ったらね。同室の子達。ニヤニヤしててさ。取り囲まれた。
一体、何が起こったか正直分からず後ずさりしたんだけど。
「今さっき校門で倒れたの。イヴァン博士だよね?凄いイケメンだったよね!」
「うんうん。」
「……………ひょっとして、一部始終全部…………」
「みんな知ってるよ。いやはや、ロマンチックだったよねぇ。」
「そうそう。望月さん、良いなぁ。あんな素敵な彼氏いて。超絶有名人だからみんな話したいなぁって思ってたのになぁ。でも、今まで従軍してて私達みたいに遊んでた訳じゃないじゃん?」
「そこなんだよね。私達も正直、どうして良いか分からなかったからみんなで相談してたんだよ。そこにあの救急車でしょう。これだぁ!って私達そう思ったんだ。ねえねえ、出会い、どんな感じだったん?」
「いや、聞いてもゴシップネタサイトと大して変わらないよ?」
「いやいや。そこは嘘か本当か分からない怪しいサイトよりも直接本人に聞いた方が。ねぇ。」
「うんうん、教えて教えて。」
イヴァン、ひょっとしてこうなると分かってて来てくれたのかなって思ったよ。消灯時間は残念ながらこの後直ぐに来てしまったけれど、パジャマトークは暗い部屋の中で大いに盛り上がった。
翌朝になって、イヴァンがかけたiPadという名前の魔法ははっきりとした効果を現したんだ。私に同年代の友達ができるって言う。素敵な効果だったんだ。同じ部屋ではないけれど、その子。岡山県の倉敷キャンパスから来てた。同学年で名前は中林 雲雀さんって言った。イジメが原因で学校に行けず、ご両親が理解ある人だったから無理に行く必要ないって言われて救われたって言ってた。でもね、同時に凄く心配もしていて。ただご両親は認知症になったお爺ちゃんとお婆ちゃんの介護が大変だったのもあってなかなか旅行に連れ出せない。それ故に、外に出る機会を設けたくてこの学校を探してくれて高校入学からずっと自分の心と向き合いながら学校に通ってるんだって言ってたよ。ひばりって名前はお母さんが付けてくれたそうなんだ。地元は風光明媚な場所で山の中に家があって、直ぐ近くに海水浴場跡地がある様な場所なんだって。今は落下防止の為に壁が張り巡らされたが、空に飛んでる鳥の様に自由に生きていけますように。そんな願いが込められたんだって言ってたんだ。
何となくだが、凄く親近感が湧いてね。仲良くなるの早かったよ。彼女に使い方教えてもらって、ゲームアプリをインストールして一緒に遊び始めたら、ゲームがきっかけで友達がどんどん増えた。授業は習ってない所が殆どでついていくのが大変だったが、先生と友達が助けてくれたお陰もあってどうにかなった。
3日目は山に登った。縄文杉、デカかったよ。ただ、年々弱ってきてるから保護活動してるそうなんだ。理由は天変地異。浮遊大陸になったから土の豊富な養分が不足する様になったんだそうだ。事情を聞いて看過出来ないと思った私はエルフの種族神聖魔法を唱えて森に生き返ってもらった。浮遊してる部分に新たな呪詛を書き足した。本来陸の状態だったら得られた筈の養分を本来あった場所から得られる様にしたんだ。
山の中にいたから途中、雨に降られたが、無事頂上まで登れた。鞄に入れてても電子機器であるiPadは濡れて壊れてしまうので学校に置いてきていた。そして、学校に着いた途端、既に事件が起きていた。
私のiPad。無くなってた。泣きながら部屋中探しても見つからず、堪りかねた部屋の仲間達が先生に通報。先生方も私が頂いた経緯を知ってるだけに急遽、持ち物検査が行われて。私がスクーリングに参加した前日から参加してた先輩の持ち物から発見されたんだ。経緯説明の為に保護者が呼ばれたが、幸太郎さんがあげた張本人がまだそこに滞在してるからって言うのでイヴァンが召喚されることになりそれに付き添うって形で千里眼持ちのルーちゃんが
「こんな下らない理由で僕の力を使う羽目になるとは思わなかったよ。」
ってぼやきながら車椅子引いてきたんだ。超絶イケメン有名人二人来たからみんなミーハーになってたが、呼び出された理由が私のiPadだと聞いて騒然となった。ルーちゃんの千里眼は全てを見通す事を先日の戦いで知ってるからか。全校生徒が恐怖に打ち震えた。確かに保護者よりも強力だった。
何せ、口は詭弁だが記憶は雄弁に語るをこの大人数で使う気満々だったからだ。
酸素マスクして先日に比べると幾分調子は落ち着いてるが絶賛点滴継続中のイヴァンは。
「おいおい、子供相手にやり過ぎるなよ。」
って注意してくれてたが、怒り心頭のルーちゃんは止まる気配すら見せなかった。まず、今日学校にいた全員が集められた。そして、ルーちゃんは集められた人全員に死刑宣告を言い渡したんだ。
「君たちには悪いと思うけど、僕の女王陛下に不敬を働く様な不埒者を許す気は無くてね。死をもって贖って貰うつもりだから。口は詭弁だが、君たちの記憶は雄弁に語るから地獄に片足突っ込んだ事を後悔して頂くよ。『リピート!』『コンデション チェンジ!』」
ルーちゃんは条件変更をかけて関係ない人の記憶がどんどん除去されていった。そして、中頃まで来た時点で5人の高校生に固定されてその子達の頭と胸の部分に魔法陣が描かれて。嘗てのイヴァンみたく強制的に書き足してるからか、その子達全員、苦しみに悶えながら吐いていた。他の関係のない方々が一斉に距離を取った。ルーちゃんが死刑宣告の理由を話し出した。
「本当に呆れてものが言えないよ。君たち、罪を擦る為に陛下の持ち物を盗んでその子の持ち物に忍ばせたんだね。理由は至極簡単。君たちの悪業は以前からの様だね。出会いは3年前からだね。そして、首謀者は君だね。」
そう言って、ルーちゃんは一人の男の子に黒い縄の刺青を施した。その子の悲鳴が響き渡って騒然となった。イヴァンも
「やり過ぎだ!辞めるんだ、ルーっ!」
って止めたが、いじめられっ子だったルーちゃんが止まる筈が無かったんだ。
「僕はね、いじめられっ子だったからね。こういう手合いを許す気には到底なれないのさ。まぁ、日本全国に流して差し上げるから大人しく裁きを受けるんだね。君たちの出会いは高校1年生の時。出会いはここだったね。5人は意気投合してたのを良い事に同室の子一人に同様の手口で盗んだ持ち物を入れ込んで罪を被せてるね。その子は無実を訴えたが誰も信じなかったんだ。その子の母親以外はね。結局、その子は自殺してる。誰も信じてくれない社会に絶望してね。君たちはこの事に味を占めたが立て続けに事を起こせば足がつくと思ったんだろうね。2年生の時には同じ日程にならなかった事もあって何事もなく進級して。相談して首謀者さんの親のコネを使って同じ日に集まれる様に圧力をかけた。でも、今度同室になったこの子は勇敢だったんだ。陛下の持ち物が欲しくなった君たちはその子に陛下のiPadを盗む様に命令したが彼は敢然と拒否したんだ。ただ、顔を殴れば足がつく。だから見えない位置を殴ってるんだ。それでもこの子は痛みに耐えながら最後まで拒否したんだ。僕はこんな状態になっても自分の意思を貫いたこの子を心から尊敬するよ。」
そして、ルーちゃんの左手が鳴らされれば服が可視化されて痛々しい傷が露わになった。先生達も愕然となった。怪我を直そうとしたが。
「陛下、御心優しいからそうやって直ぐ手を差し伸べようとなさいますが、これは立派な犯罪なんです。証拠としてこの子の傷を撮影してからじゃないとダメですからね。君、悪いけど痛いのもうちょっとだけ我慢して。」
すると、この子は首を縦に振って承諾してくれたんだ。
「そして、痺れを切らせてとうとう自分の手で盗んだんだ。陛下の留守を良い事にね。陛下はイヴァン博士から頂いたこのiPadを凄く大事になさってた。しかも、イヴァン博士からの依頼で取り寄せた以上、当然だが世界政府が関与してるんだ。イヴァン博士は世界政府が最重要人物として保護してるから極力、ご希望に添えるものを提供するんだ。その一つに、パスワードが毎回変わる。イヴァン博士がパスワードを発行しない限り、陛下のiPadは基本使えない様になってるんだ。今回の件みたいな事も想定の範囲内だったからね。そして、パスワードが割り出せなかった君たちはそれを壊してからその子の持ち物に混ぜたんだ。君たちはこれからAIに裁かれて晴れて国外追放になるだろうね。そのまま海に落とされれば待っているのは魔物の餌だ。器物破損と傷害罪と窃盗と殺人罪を犯してる人間を養ってあげる程日本は豊かじゃないからね。謝って済むなんて万が一にも考えない方が良いよ。君たちが喧嘩を売ったのは世界政府そのものだ。その意味を考えながら生きていくんだ。僕がかけた魔法は、悪事を重ねれば重ねる程寿命が削られるんだ。生きたければ悔い改めて善行積むんだな。今回、世界政府によって僕は首謀者全員の逮捕を命じられてる。悪いけど、君も重要参考人だから付いて来て頂くよ。」
「…………」
加害者だった少年の無実が証明され、彼はルーちゃんの指示を承諾した。ルーちゃんが左手の指を鳴らせばエージェント達が駆けつけ、ルーちゃんの指示の下次々と立たされて真犯人達と一緒に来る様に言われた少年も手に持ってた壊れたiPadをイヴァンに差し出してから。
「本当に申し訳ありませんでした。」
そう言って、頭を下げていた。イヴァンはそんな少年の頭を撫でて、優しく語りかけた。
「お前が謝る事なんて何一つ無い。暴力に屈しなかった君は尊敬に値する。だけど、命に関わる事だったんだから今度からちゃんと相談するんだ。信用できる大人にな。」
「でも、俺にそんな事言われても。俺、両親が7回変わってる。みんながみんな。お金目的で養子縁組組むんだけど、僕のお金は全てAIが管理して何一つ自由にならないと分かると棄てられるからそんな人間。心当たりが全くないんだ。」
「……………お前も辛い人生歩いて来たんだな。古くて申し訳ないが、俺の父親と敬愛してやまないお人に頂いた名刺なんだ。俺が小さい頃にな。この人ならちゃんと話しを聞いて力になってくれるから俺から紹介されたと言って尋ねてみると良い。」
「ありがとう…ございます…………」
御守りだった筈の古びた名刺を渡されて、その少年は改めてお礼を言ってた。その子がエージェントに付き添われて。ルーちゃんの手で種子島に移送されて行き、残りの生徒たちも先生方も解放された。私も申し訳無さに沈んでいたが、そんな私を車椅子の上に抱き寄せていつの間にか酸素マスク取ってて気がついたらキスしてたよ。私が承諾したのが嬉しかったからかイヴァンのキスは深追いしてて。そんな私達を隠す為にルーちゃんは魔法を唱えて周囲の時間を止めてくれた。




