恋愛のやり直し。3
その日の晩、私は相談する事にした。誰と話そうって考えた時に思い描いた人はやっぱりイヴァンだった。
正直言って、これは賭けだった。今のイヴァンは最初に出会った頃とは違う。私の記憶だけ抜け落ちた状態で私にまた惚れて、情報の補完って形で作られてしまったものだ。
電話の音が鳴る。不安に押し潰されそうだが直ぐに出てくれた。
「もしもし、俺だ。今日からスクーリングだろう?何か困った事があったのか?話してみろよ。」
「あのね、イヴァン。私、友達出来そうにないんだ。どうして良いか、分からないんだ。」
「虐められてるんか?」
「そう言う訳じゃ無いんだ。ここにいるみんな、言い方がちょっとジジくさいけどね、青春を謳歌してるんだ。ゲームだったり、ネットでドラマ見たりとか。今日、初日だったんだけどね。私だけ話しに加われなかったんだ。先生も心配してくれてはいるんだけどどうやって話して良いものか分らないんだ。」
「…なるほどなぁ。んじゃあさ、要は、きっかけさえあればどうにかなるんだな。丁度良かった。実は、個人的に連絡用にタブレット購入してたんだ。俺とお前の2台分。エド達が夫婦で持たされてるんで真似てみたんだ。それさえあれば道開けるからさぁ。騙されたと思ってやってみろ。誓約の腕輪の効果でお前の所には飛んで行けるって教えて貰ったんだ。みんなに迷惑かけるのもあれだから、校門の所まで出て来れるか?」
「分かったよ。イヴァン。校門前に着いたら連絡入れるね。」
「ああ。連絡待ってる。」
電話を切って。改めて思った。イヴァンに話しして良かったなって。スマホの待ち受けにしてた最愛の人に感謝しかない。私は、宿泊棟を抜けて走って校舎を抜けて。闇が広がる校門前迄来た。改めてイヴァンを呼び出すと、今度はイヴァン自体が飛んで来たんだ。ただ、校門を挟んだ外側にいたんだ。イヴァン、ちゃんとご飯食べれて無いみたい。再会した時よりも更に痩せてた。運動厳禁って言うのもあるのかもしれない。すっかり筋肉落ちちゃってるみたいなんだよね。以前は戦士って印象だったが、すっかり本来の博士って風貌に収まっちゃっている様に感じた。目にも薄っすら隈作ってた。まともに眠れてもいないんだ。
「元気そうで良かったよ。顔を見て、心底安心したよ…………」
「イヴァン、大丈夫?何だか、痩せてるし。ちゃんと寝てる?」
「それに関してだが。無理だな。寝ても覚めても思い起こすのは病院で目を覚ました時に見たお前の姿だ。一つ、謝らないとな。追いかけ回して、悪かったよ。俺、カプセルの中で目が覚めた時宝物を見つけたんだ。手を伸ばしてちゃんと言わないとって思ってたんだが、あの後、消えてしまっただろう?言い訳がましいのを承知で言うが、俺物凄く不安になってな。この人居なくなったら俺、生きてる意味無くなるって思ったら何が何でもって思ってしまった。後から考えたら随分俺は怖い思いさせてたんだな。本当に申し訳ない事をしたよ。」
良かった。元々のイヴァンに戻ってる。ただ、点滴ぶら下げて。病院支給の寝間着で出てきてる所を見たらああ、無理が祟って再入院したんだなって。まぁ、それだけじゃ流石に寒いと思ったのか。その上に紳士物のロングコートは羽織ってたよ。
「…その様子。まさかとは思うけど。」
「ああ、大した事ない。正直なところこれは自業自得なんだ。臓器が落ち着いてさえも居ないのにさ、感情の赴くままに動いたらこれだ。今度は気温の変化に対応しきれず、風邪から初めて喘息に罹患して。最悪なのは肺炎だな。なんで、最初から長居するつもりは無いんだ。ただ、これだけは伝えたかったから。だから一人で飛んで来たんだ。」
「…………」
一陣の風が吹いた。ただ、この一言を言いたいが為に、体調を押して迄来てくれていたんだと分かったら涙が止まらなくなった。
「望月 美郷さん。俺は、あなたに惚れました。俺は、何故かあなたの記憶だけ抜け落ちてて何があったのか記録でしか知らないけれど、でも、この気持ちだけは。この感情にだけは嘘つきたくないんだ。他の人のものになるなんてあってはならない。俺はあなただけを幸せにします。だから、俺と結婚して下さい!」
もうね、感極まってさ。言葉にならなかったんだ。これが言いたい為に必死になって探し回ってたんだと思うとね。涙が止まらなかったよ。私が出来たのは、首を縦に振るだけだった。イヴァンは私に真新しいiPadの箱を渡してから校門の柵越しに私を抱きしめたんだ。その時、イヴァンの触れる手や顔が物凄く熱い事に気がついてハッとした時にはイヴァンはその場で倒れてた。流石にここの住所がわからないから事務所にいる先生方に事情を話して島の診療所に運んで頂いた。その後、イヴァンは直ぐに気がついたけど、先生と一緒に学校に帰るように言われたんだ。まぁ、学校の先生方も私達の事は良くご存知で。正直怒られるかと思ったが。
「うちの学校の校門。観光地になるかもしれないな。一度関係が壊れそうになっても校門を挟んで告白すれば思いは成就するって。これで売り込めばうちの学校も有名になるだろうなぁ。」
って笑って済まされてしまったよ。勿論、学校のパンフレットにも載せるって言ってたよ。ちょっとそれは違う気もしたが、有名人は辛いね!って言われて済まされる所がまた。真新しいiPadはエド達が持ってる物と型は同じで色がピンクゴールドだった。箱を開けたらちゃんと液晶にも外枠にもカバーが付けられてて、メッセージが添えられてた。
「使い方は、勇気を出して同部屋の子に教えて貰え。健闘を祈ってる。」
って、英語で書かれていた。先生も良い人に恵まれたね。って言ってくれた。その後、イヴァンもやっと言えた安心からか。すっかり寝入っちゃってね。連絡は私からルーちゃんにしたんだ。ルーちゃんは直ぐに駆けつけてくれたよ。勅使河原先生連れてね。だけど、表情から何かを悟ってね。
「やっと心から安心出来たんだろうな。博士。お陰さんでやっとまともに治療させて貰えるよ。ここ最近は本当に酷くてね。ご飯出しても『味がしない。』って突き返されるし、物思いに耽って。いつの間にかいないって思ったら屋上でメンソールのタバコ吸ってるんだし。消灯時間超えても全然寝ないんだ。寝たら妙な夢しか見ないからって言ってね。こんな状態で体調崩すなってのが無理な話でね。」
「イヴァン、夢の話してましたか?フラウディアの話だと彼が見る夢は必ず起こる予知夢なんですが。」
「それなんだが…非常に言いにくい話をするが。博士が戦場に出られなくなった事で運命が変わった。運命はあなたが中心になる様に変わったって仰ってる。終戦後に二人で墓参りするが、その後、襲撃されるそうだ。首謀者にね。そして、狙われるのはあなただ。ミサトさん。首謀者にとってあなたは最早、博士以上の脅威になったんだ。宇宙空母アジェンダをたった一人で剣を手に無力化した。その事実を持ってだそうだ。」
「…じゃあ、殺されるのは…………」
「そうなんだ。ミサトさん。あなた自身がイヴァンの目の前で殺されるんだ。そんな夢。誰が見たいと思う?心からお慕いしてるあなたがだ。だから、無理矢理起き続けてたんだ。今のイヴァン博士には嘗ての自殺願望が無くなってる。それに関しては喜ばしいと思っている。だが、博士が夢の先を見たがらない。ミサトさんが射殺されて以降どうなってしまうか。運命は振り出しに戻った。3人を除いてだ。って仰ってる。」
「何となく分かったよ。3人だけいるんだ。他の人と違う未来だったのが。僕、エド、リンちゃんに関する預言でね、この内の一人が何らかの理由で従軍後に車椅子がないと生活出来なくなるって言われてる。」
「…うーん。車椅子生活ねぇ。みさわに大学病院クラスの医療機器積む必要があるのか。こりゃ、僕にお呼びがかかる筈だ。イヴァン博士の記録は世界政府の最重要機密だからね。まぁ、戦争してんだ。死人が出ないなんてまずあり得ない。あの大会議室が臨時の病院になるスペースとなると真田将軍の許可が必要だ。大変な交渉になる事請け合いだけどやってみるよ。」
「みさわ宇宙に出陣するんですか?」
「お前達勇者一行が世界各地を回ってる時に僕たちがのうのうと遊んでいる訳無いだろ?確かに表向きは人間を遊ばせていたが、ここはAIが支配する国、日本だ。1回出向くだけで月を制圧出来る様に着々と準備していたんだ。秘密裏にだ。既に奇数艦隊の宇宙船化は終わってるんだ。日本だけじゃない。イギリスも王様を守りたいから真っ先にエリザベスを宇宙船化して日本に派兵してる。エリザベスが日本近海にいたのはたまたまなんかじゃないんだ。君たちの到着を待ってやっと情報公開されたんだ。本丸を落とされそうになったんだ。AI達も本気出すんじゃないかな?」
「出撃はいつ頃になりそうなんですか?」
「イヴァン博士の回復待ちだ。いつかはまだ決まってない。ただ、工作員がいないとも言いかねない。だからその辺、決まったら教えるよ。」




