イヴァン奪還作戦。1
昼間、イヴァン博士が消息を絶ったと分かった。その為、夕飯時の時間を利用してみんなに集まってもらった。この場には陛下ことミサト様は不在だ。悩んだ末にご飯食べられてなくて栄養失調による魔力枯渇を起こして入院。ドクターストップかけられてるからだ。魔導師のルーに聞けば、まず眠れなければ起きてる日数に応じて魔力がどんどん減っていく。食事を摂らなければ失った魔力が自動で回復しなくなる。陛下が生きてたのは枯渇して日が浅かっただけの話で、後2日そのままだったら命は無かったそうなんだ。
だから、みんなで相談して今回の件はミサト様には伏せる事になったんだ。
ちなみに、エンジンの再開発なんだけど。実は既に昨日完成させてた事が分かったんだ。帰って来たばかりって状態を完全に突かれた形でね。ルーは指示されるまま、ヒルトンホテル迄送って行った事を後悔してた。疑う事を知らないから普通に送ったそうだが、その後、不審者と共にメルツ空港で目撃されたのを最後に消息を絶ってる事が分かってるんだ。リンちゃんのお陰でね。
「今回は対策が完全に後手に回ってしまったわ。本当にごめんなさい。」
そう言って謝ってた。流石にアークさんも。
「リンちゃんが悪いわけじゃ無いだろう?ただ、相手の策略を見抜けなかった。相手の侵入を許してたってだけで。普段なら俺たちに着く筈のエージェント達が治安維持に回されてる時点でどうにもならなかったんだ。そういや、アレクサは?」
「ぼくならここだよ。」
そう言って、みんなが集まって出来てる影からにょっきり姿を見せるから驚いたよ。全く、心臓に悪い。
「ごめん。闇ルート調べてたんだ。帰りが遅くなってごめん。ぼく、ナイトメアだから、固有スキル『夜陰』を使うと、陰なら何処にでも隠れていられるんだ。幸太郎の元から離れるのに使ったのはこれだよ。追っ手からも逃げられるし、潜伏も出来るから凄く便利なんだ。」
「お帰り、アレクサ。何かわかったのか?イヴァン博士の足取り。」
「勿論。斥候のぼくに出来ない事は無いよ。実は此処から数時間行った浮遊大陸に戦闘空母隠してる。月で最初に作られた宇宙空母アジェンダ。その中に拘束されてるよ。潜伏先の浮遊大陸は台湾。その真下の海に着水してる。灯台元暗しとはこの事でね。世界政府も此処に拠点があるなんて知らない筈だよね。」
「ちょっと待って。それ本当なら一大事よ!世界政府の首都、東京の目と鼻じゃない。他に潜伏してる船とかは無いの?」
「現時点ではアジェンダ以外はいないよ。ただ、その近辺の浮遊大陸に宇宙戦艦潜ませてたら、幾らAIが支配している最先端エリア日本でも一溜まりもないんじゃ無いかな。スクランブルかかった日本国軍の強さが分からないから何とも言えないけどね。」
「偵察衛星で捕捉出来ない場所を突かれているとなると、見渡せるのはルーの千里眼のみ。って事か。場所。特定出来そうか?」
「やってみるよ。」
ルーは、世界地図を開いて、振り子を手に握り千里眼を発動させた。ルーの手が勝手に動いて、月からの戦艦を次々と読み上げた。
「台湾にいるのは宇宙空母アジェンダがいるのは間違いない。巧みに日本の領空外に陣取ってるんだ。香港には宇宙戦艦シードル。樺太に2隻。宇宙戦艦マイアミとシカゴ。ハワイに宇宙戦艦ニューデリー。以上だ。これ、無人戦闘機が数え切れない程積まれてるんだ。戦闘機で日本の領空圏を一気に制圧されたら詰みだよ。アジェンダでイヴァン博士が必死に抵抗してる。イヴァン博士の知略で東京を一気に制圧させたいが、これを頑として拒否してる。両手足の全部の指折られても…信念曲げないんだ…………」
最後の方は涙声だ。僕はルーの頭を撫でて。
「これ以上は無理して見なくて良い。よく頑張ったね。ルー。」
「ううん。大丈夫だよ。リンちゃん、直ちに東京に通報してくれる?」
「勿論よ!」
リンちゃんが大至急で日本と連絡を取り始めた。そんな中。
「しかし、まだ隠し玉あったんだな。月の奴ら。」
「ああ、僕も本国に連絡を入れる。ルーも本国に連絡を入れた方が良い。ルーの移籍に合わせて戦闘機かなり持っていかれたから戦える筈だよ。」
「ちょっと待って。僕、まだ何も聞かされてないんだけど!」
「それは当然であろう?今はオーストラリア国民でも結婚して入籍すれば嫌でもイギリス国民だ。」
「……………つまりは僕の知らない所で既に引き抜き工作済んでるんだね。本当に抜け目ないよね。しょうがない。連絡しますか。」
そして、一人ルーベルトさんが結婚?って意味分からずアメリア姫が仰っていたので。
「イギリスでは同性でも結婚出来るんですよ。法律でね。」
って言っておいた。まぁ、戦時下ではルーは男性で通すらしいから、若干言い訳がましいが。そして、一足早くリンちゃんが。
「50年振りになるわ。さっき日本全土を対象に非常事態宣言が発令されて避難指示が出されたわ。空襲に備えて全国民は地下への避難を開始してるわ。世界政府の命令を伝える。イギリス、日本、オーストラリア空軍全軍に出撃命令が出たわ。イギリスは近くで演習中だった移動飛空要塞エリザベス率いる第三艦隊で樺太にあるマイアミとシカゴを沈没させよ。続いてオーストラリアはハワイにあるニューデリーを沈没させよ。まぁ、オーストラリア空軍は復帰したばかりだから訓練のつもりで構わないそうよ。ハワイに隠せる程度の小型戦艦だから。」
「なんか、馬鹿にされてない?それ。」
「それは練度の差は埋めようが無いからよ。逆にオーストラリア空軍の参戦があったからこそワタシ達がイヴァン博士の救出に専念できるの。これに関しては本当に感謝してるのよ?ルーちゃん。」
「…それだったら良いんだけど。」
「日本は狙われた事もあって4部隊を派兵するわ。第一艦隊飛行空母いずもは樺太。第三艦隊飛行空母いずみは香港。第五艦隊飛行空母みさわは台湾。第七艦隊快速飛行空母ともしびはハワイを強襲予定よ。今回の総指揮はワタシ達と一緒にアジェンダを襲撃する真田信友将軍閣下に繋がってるわ。今、画面を表示させるわね。」
民間人の人は一斉に立ち上がった。軍籍のある僕とルーと世界政府のエージェントのリンちゃんは真田将軍に対して最敬礼を取った。
「まずは、オーストラリア空軍所属のルーベルト少尉。千里眼での遠視。及び通報に日本全土の国民を代表して心から感謝申し上げる。ありがとう。世界の実に半数が住む人類の箱舟、日本がこの様な事態に陥るのは天変地異以後では初めてである。勿論、イヴァン博士が人質にされている現状も把握しておる。」
「この度は我々の落ち度でこの様な事になり誠に申し訳ありません。」
僕は伏してお詫びを申し上げた。真田将軍は手で僕に元に戻る様指示を出した。
「いや、構わぬ。今回の事は我々にはむしろ好機。実は、日本から飛行機が度々拿捕される事案が多発しててな。拿捕された飛行機が無人戦闘機になったのなら成る程、相手もなかなかの智慧者と思っておった所よ。戦場を知らぬ若者が多い中、儂は天変地異以前からの軍人でな。今回の経験は日本を守る兵士達には良い勉強の機会を与えられたとそう思っておるのだ。だが、案じられるのはイヴァン博士の状態だ。報告を聞いたがこれは誠か?ルーベルト少尉。」
「はい、非常に残念ながら事実です。現在のイヴァン博士がどの位置にいるか。宇宙空母アジェンダの見取り図で示す事は可能か?」
「はい、此方の機関室に軟禁されています。機関室自体が非常に煩いので拷問も秘密裏に行われた様です。」
「ふむ。機関室となると最奥地になる。精鋭部隊を編成せねばそこまで辿り着くのは容易い事ではない。ならば、こうしよう。そちらが台湾に密かに着くのは何時頃であるか?」
「今すぐ出発して台湾に到着予定は2300になります。」
「宜しい、それまでに精鋭部隊を編成して派兵の準備をする様に命じる。エドワード中将。」
「命令承ります。ですが、恐れながら僕はまだ大佐の筈なんですが…………」
「まぁ、何事にも真剣に取り組まれておられるエドワード中将らしいな。皇太子殿下になられたのに合わせて階級が上がったのだ。公示を見てなかったであろう?今日、話したヘインズも既に貴殿の部下だが、いつまでも大佐って言うから揶揄ったそうだぞ。中将の命令は既に完遂されて儂の手元よ。本当に面白い部下に恵まれたものよ。いつか会えたら酒でも馳走して語り明かしたいものよ。さて、無駄話が過ぎた。貴殿達の飛空挺で落ち合うとしよう。では。」
僕たちは改めて敬礼をした。真田将軍も返礼の後に通信が切れた。途端に。
「凄いな!エド。昇進おめでとう!」
ってみんなに祝福を受けた。でも、お祝いしてる場合じゃないので。
「ありがとう。寝耳に水だったからびっくりしたよ。たちの悪いサプライズだよ。でも、急いでここを発たないと。直ちに出発の準備、取りかかってくれ!」
「おう!」
こうして、僕たちは大急ぎで支度をして飛空挺と勝手に命名したものを発進させた。目指すのは、台湾。イヴァン博士を助け出す。日本国民を守る。この目的の為に戦士達と集う為だ。




