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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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怒れる聖女の裁きの鉄槌 1

 今日は昼までゆっくりとした時間を過ごして、昼からは支度をしなければならない。

 ホテルのスタッフさんが色々手配してくれてて、香油を塗られて全身マッサージすると気持ち良いんだわ。これが。バスローブ着て、ぼけ〜と惚けて。

 プロの美容師さんの手にかかれば、あれよあれよと言う間に自分が自分じゃなくなるという感覚かな?全くの別人のようになるから不思議だ。イヴァンはイギリスと通話を楽しんでる。今、ルーちゃんも私同様支度の真っ最中らしい。本人は


「絶対無理っ!」


 って言ってるらしいけど、きっと対面したら私の方が落ち込みそうな勢いだ。しかも、本人に自覚が無いってのがまた。

 今日は闇オークション開催前に会場で落ち合って宝玉の中で対面して頂く予定だ。既に宝玉の中で今頃、幸太郎さんとアレクサが親子の会話を楽しんで、将来の事とか、色々な事を話してくれてると思う。今朝、幸太郎さん、みんながいる前で


「俺ぁ、戦場カメラマン。辞める事にしたんだ。俺が身を引いたばかりにヤク中になってるこいつの人生、どうにかして立ち直らせたいんだ。」


 そう言われてた。リンちゃんに諭されたって言ってたよ。アレクサを手放して以降、俺が不用意に関わってこの子達の人生を狂わせたとしたら。そんな思いから戦場に赴いても子供のいる所には寄らなかった幸太郎さん。でも、被写体は子供が殆どだ。関わるのは辞めたけど、残酷な現実を被写体として収めるのは辞めてない。ジャーナリストが毎年受賞する報道大賞にも毎年と言って良い程ノミネートされてるが、決まって受賞は辞退なさってた。褒められる様な事は何もしていないと自嘲気味で寂しく笑ってた。あれの原因が今回の事だと思うと何だかとてもやるせない。


 何が何でも救いたかったアレクサ。どこに行っても人格も何もかもが受け入れられず、不幸のどん底を歩かねばならなかった。そんな重たい現実が幸太郎さんを押し潰している気がした。何が何でも俺がどうにかしなくちゃと。そう考えている気がした。こんな所を見ると、ああ、血が繋がっていない親子でも似る事あるんだなぁ。そんな思いさえ浮かんできた。これじゃ、まんまイヴァンじゃなかろうかとさえ思える。

 ただ、アレクサ本人は目が覚めて以降、沈黙を守り続けてた。魂がここにあらず。まだ何一つ先の事など考えられない。幸太郎さんの前では大きい幼児だって言ってたけど、宝玉の中で一体どんな話になってるのか、気にはなるけど、聞こえてこない以上、どうしようもない。



 夜になった。貴族と思われる方々が軒並み足を運ばれていた。私もイヴァンにエスコートされてヒルトンホテルに入った。招待状を提示すればすんなり入場出来た。出てくるのはみんな違法品の数々にも関わらず、執事連れて、現金持参で来ているのだ。今日は、私達とエド達以外は全員捕縛対象だ。今回の闇オークションの一部始終は録画され、世界政府がこれを裁く事になっていた。地獄の入り口に足を突っ込んでいる事すら気づかない面々はほぼ全員がエドが引き連れている導師様に釘付けになっていた。


 もうね、完全にモデルじゃないかと思うんだ。ルーちゃん。確かに私よりも遥かに胸は小さいかもしれないけどね、凄いスレンダーで、魅せる着こなしなんだよね。ワインレッドの口紅を付けて、幸せそうに微笑んでいるのがまた。流石にエドが見立てただけあるよ。ティファニーの外箱を彷彿とさせるドレス。本当に素敵だと同性でも思う位だ。


 色々な方々がみんな挙ってエド達に話しかけてた。色素の無い目が私達を見つけると、エドを突いて私達の方向を教えてた。失礼のない様に礼を尽くしてから夫婦共々私達の元に挨拶に来られた。


「女王陛下。ご尊顔を拝し、このエドワード。歓びに堪えません。」


 そう言って、私の左手を取って接吻した。ルーちゃんもすぐ後ろでドレスをつまんでお辞儀をした。練習した訳では無いだろうが、凄く慣れている感が否めない。


「此度は、イギリスの協力。誠に心強い。アメリア姫の為に助力頂いた貴殿達に心からの謝意を。また、再三に渡り病床に伏してるルーベルトの力を借りた事。最愛のお方のご心痛は計り知れぬ。エルフの女王として伏してお詫び申し上げる。」


 私もイヴァンも返礼を返した。場内も注目しているから流石に友達って言う訳にはいかない。ヒソヒソ声でやはりイギリスはエルフの女王の傘下に加わったんだとそう言う声も漏れ聞こえたが、エドは実に堂々とした振る舞いでそんな声を一切無視していた。凄いと思う。同じ立場に立たされたら私、きっと心が折れると思うのに、エドは母国の民の為ならどんな事を言われたとしても耐え忍ぶつもりなんだと思うと本当に頭が下がる思いだ。


「ルーベルト、無理をさせてすみません。例の物は持ってきましたか?」

「はい。こちらにございます。女王陛下。」


 そう言って、ルーちゃんは左手を鳴らすと紫色の座布団に置かれた水晶を発現させて魔法で私の手元まで持って来てくれた。私はそれを受け取って、自ら持つ水晶を取り出して呪詛を唱えて一つにした。水の魔法で水晶2個は完全に同化して、一輪の水晶の薔薇に変わった。場内の人間の感嘆の声が漏れた。私は一輪の薔薇をルーちゃんが出した小さな座布団の上に置いて。


「イギリスが受ける恩恵は人族最後の楽園という名の遥かなる未来の希望の砦である。その礎を築きし人族最後の王と麗しき姫君に心からの敬意を表したものである。受け取るが良い。」


 エドは、両手で恭しく受け取った。場内もあれは預言かとざわざわ騒いでいた。先の王は預言者だったんだ。今度の王も預言するのかとまぁ、口さが無い事だ。エドが後ろにいるルーちゃんに水晶の薔薇を差し出すと、ルーちゃんはまるで本物の薔薇の匂いを嗅ぐ素振りを見せつつ、水晶の薔薇を一瞬で本物の薔薇の花束に変えていた。ティファニーブルーの紙に包まれ、白いリボンに美しく咲き誇る白い薔薇が3輪。まぁ、多分予め用意していたんだと思うけど、本当に素敵で尚且つ芸が細かいよ。ルーちゃん。この手品の様なやり取りは衆目の注目を集める効果が高かった様だ。盛大な拍手まで頂いちゃったよ。係の案内を受けてパートナーがそれぞれエスコートをして。特別に作られた席に着座した。私達の周りには既にすり替わったリンちゃんとマークさん達5名が側にいたから安心していられた。



 カメラは始まる前に私達の席の机の前のフラワーアレンジメントの中に濡れない様な形で仕込まれ、既に録画が開始されていた。このカメラの操作は子供2人組が遠隔操作でやってくれていた。場内の拍手が起こり、闇オークションが始まった。最初は名画の贋作が本物の様な説明を受け、次々と競り落とされていた。それが終われば次に来たのは人身売買だ。髪の毛が競りにかけられた。つまり、その髪の毛の持ち主毎の競りだった様だ。髪の毛の人間の人種、性別、生娘かどうかとか。ことごとく人権を無視した代物で、中には我々の同胞も捕らえられて髪の毛を切られ、夜伽にどうですかみたいな説明が為されればどんどん高価で競り落とされた。競り落とされた人の未来はきっと地獄だ。競り落とされた人は早速、別室で引き取られて行ってるみたいだ。人が少しずつ少なくなる中で焦りが募る。だが、ルーちゃんが私の左手を掴んで首を横に振ってこう囁いた。


「今は耐えなければなりません。女王陛下。我々に揺さぶりをかけてアメリア姫を競り落とされない様に持っていくつもりです。ご心痛は分かりますが、このルーベルトの忠言。お聞き届け下さいます様に。」

「……………そなたにはいつも助けられる。私にはそなたがかけがえのない宝である。これからも親友として私を支えて欲しい。エドワード、頼みの綱はオークションに参加した事のあるそなただけです。あの様な尊きお方を下賤に落とすわけにはいかぬ。アメリア姫を何としても競り落とせ。」

「はっ!王命承ります。」


 まぁ、TPOってやつね。自分でもびっくりするほど口がよく回るよ。私はこっそり外側の扉という扉全てに封印魔法を施した。アリの子1匹逃してなるかと。口元がニヤリと笑みを浮かべた。ルーちゃんも追随した。ここにシールドとリフレクトをこっそりかけて安全対策を施してくれた。途中、


「陛下。ご報告があります。剣聖殿が売春婦連れて西側アジトに突撃して現在、交戦中です。如何なさいましょう?」

「……………聞いてましたね、イヴァン。援軍は必要ですか?」

「いえ、あの者は剣才に関しては他の追随を許しません。一人でも問題なく制圧出来ると考えます。ただ、売春婦連れて歩いているのは恐らくこのまま置けばマフィアの束縛から逃れられず、我々の庇護を求めての事と推察します。」

「分かりました。急で申し訳ありませんが、接触後、直ちにイギリスに飛ばすが良い。あの者達が必要としてるのは安心して暮らせる安住の地だとそう心得よ。」

「王命賜ります。女王陛下。」

「剣聖殿の事はエドワード。そなたに一任します。自宅は例の場所を提供すれば良いでしょう。」


 まぁ、例の場所って言っただけで嘗てイヴァンとリンちゃんと3人で保護された郊外のボロ家と分かるところがエドの凄い所で、スマホで母国に速攻で連絡を入れて指示を出して早々に電話を切った。


「直ぐに手配致しました。」

「エドワード、苦労をかけます。」

「いえ、何なりと仰せください。」


 すると、些か場内が慌ただしくなってきた。男と思われる怒号が突如、響き渡った。ガヤガヤと騒がしい中。


「女王陛下にご報告です。剣聖殿が人形に無事接触を図りまして、直ちにイギリスの空軍基地前に飛ばしました。」

「ご苦労様です。ルーベルト。偉く早いのですが、何かありましたか?」

「はっ!剣聖殿の凄絶な殺気とシルフィードの魔剣の力に怯えて蜘蛛の子を散った様に逃げたとの由にございます。」

「…聞いてましたか?望月。予め派兵してたエージェント達を突入させ、証拠物件を全て抑えるのです。」

「御意!」


 流石リンちゃん。ちゃんとよそ行きの対応してるんだし。リンちゃんもスマホ片手に現地部隊と連絡を取り、突入してアメリア姫の保護を指示した様だ。

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