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異世界日本記  作者: はくあんせいぼ
第一章 賢神イヴァン
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それぞれの思惑。3

 俺はどうやら一番怒らせちゃいけない人を怒らせていた様だ。預言に従ってアメリアさんを乗せたのがまずいのは知ってたが、まさか、二人しか入れない筈の小部屋から強引に引きずり出される程強烈な怒りが向けられるとは思ってもみなかった。ただ、運が良かったのはミサトが気持ち良さそうに眠っていた点だろう。俺はルーからリンちゃんが作ってくれたサンドウィッチを渡された。顎でミサトに差しあげろと申している。もちろん、指示には従った。


 超絶美人が怒ると凄まじい。そんな見本だ。絶対零度の微笑みを讃えながら。


「イヴァン博士にお話があります。お疲れの所申し訳ありませんが、僕と一緒にご足労願えませんか?」


 本当に背筋が凍る。このお方のお怒りを鎮めなければ、絶対に殺される。そんな気がしてくるから不思議だ。俺は無言で首を縦に振る位しか出来なかった。本当に女って怖えええ。



「リピート!」


 今回集まったのは俺、ルー、エド、アーク、リンちゃんの精鋭部隊の5名だ。アメリアさんを乗せた件で頭に来たルーに問答無用で魔法をかけられた。この呪文はイギリスの先の皇太子殿下の悪事を暴く際に全世界対象として使われたが、皇太子の場合は全世界に悪事をばら撒かれたが、俺の場合は人数分に加えてこのメンバー以外が亡くなった場合。この場合だとミサトとその他大勢の場合で検証する為に開かれた様で、同時に7画面開かれてみんなが検証していた。俺は一切の言い訳を阻まれ、ルーの魔力に充てられてその場で気分が悪くなった。あの皇太子殿下の立場に立たされるとは誰が考える?しかも仲間内でだ。リンちゃんは俺の体調を慮って背中をさすってくれた。リンちゃんもまさか思い出してた事をルー達に見られるとは思いもよらなかった様で、恐縮しきりだ。


「イヴァン博士。事情を知らずに勝手に頭に来て申し訳ありませんでした……………」


 どうも検証が終わった様で、俺は魔法から解放された。俺はルーからヒールウォーターを。エドからヒールを受けた。ルーが申し訳無さそうに説明を始めた。


「戦闘要員の主要6名とその他の方で預言を検証させて頂きました。イヴァン博士の仰っていた事は真実で起こりうる複数パターンがある預言であると断言します。僕の体にはさして変化がある訳では無いですが、こんな早い段階で妊娠なんて分かる事が無いから僕、凄い嬉しかったです。本当に無茶してごめんなさい。吐き気大丈夫ですか?」

「……………」


 俺は首を縦に振る。話す余力は無かったが、基本、間違った事が嫌いで素直で騙されやすいから。今回だってそうだ。悪いのは他ならぬ俺だ。乗せないって選択肢もあったのに、結局は誰も失いたくない我儘を押し通した格好だ。実働部隊だけあって実力も文句が無い。今まで力を隠してただけで、あの魔王様よりも強くないか?って思いさえ出てきた。


「少し顔色が優れぬ。そこのベットに横になってくれ。」

「力仕事なら俺だな!こんな大事な事を自分だけで決めるからこうなるんだ。おまえ、一人じゃねぇんだからさぁ。ちゃんと相談しろよな?」

「……………すまん。」

「でだ。ルー。結果はどうであった?」

「うんとね、今回、アメリアさんが身代わりになる対象はここにいる5名だよ。陛下が亡くなられた場合が最悪だ。アメリアさんの身代わりになる前にイヴァン博士が後を追うからね。神々はお怒りになり、月を地球にぶつけて滅ぼしてしまうんだ。星ごとね。アークさんが身代わりになった場合も最悪だ。魔剣シルフィードの餌食になったら未来を変える事が出来なくなる。そんな訳で陛下と同様の滅亡が待ってる。ここからは滅亡こそないが、下半身不随がもれなく付いてくる未来。僕、エド、リンちゃんだね。だけど、僕の場合は下半身不随だけじゃなくてここにいる子供を失う未来だ。これだけは絶対に看過出来ないって思ってしまったんだ。アメリアさんには悪いと思うけど……………」


 そう言って、ルーが愛おしそうにいるかどうかすら分からない自分のお腹をさすった。魔力を込めてどうやら感度を上げている様子だ。命の鼓動を感じたのか。


「本当に生きてる。僕の魔力を通してなら分かるよ。エド。」

「誠か!?」


 ルーはエドの手を取って、自分のお腹に当てて魔力を込めた。エドの手にも微かに新たな命が芽生えつつあるのが分かった様で。感無量の表情で。


「でかしたぞ!ルー!ここに居るのは正真正銘の僕たちの子供達なのだな!」

「はい。エド。でも、正式発表はお願いですから早まらないで下さいね。僕も天にも登る気持ちだけど、普通、検査して分かって落ち着いた時点で発表するものですから。」

「そうであったな。でも、そうなるとルーは一時母国に帰した方が……………」

「いや、ルーの戦力があるから死者が奇跡的に1人で済むんだ。現時点での戦線離脱は勘弁して欲しい。」

「……………あい分かった。別の方法を探そう。それで異存は無いな?ルー。」

「勿論。嬉しいなぁ。僕たち、賭けに勝ったんだ。この子達は何があっても守らないといけないね。」

「無論だ。」


 いやぁ、見てて心が温かくなったさ。俺たち夫婦は神様にならない限り子供には恵まれないって聞いているから我が事の様に嬉しい。だけど、いつまでも喜んでいる場合ではない。俺の預言に関する情報がまだ残ってるんだ。このままやり過ごせるかと思ってたんだが。残念ながらそうとはいかず。


「で、肝心のイヴァン博士ですけど、靄みたいな感じで何も見えなかったんですが、何か隠してませんよね?」

「隠すも何も!預言者は基本、自分の運命は見通せないんだ。爺さんだって例外じゃないんだ!」

「ふーん。じゃあ、嘘か真か確かめて差し上げましょう?」

「ちょっとルー!いい加減にしないかっ!」

「リピート!コンディションチェンジ!」

「!?」


 今まで見えてません。ってすっとぼけてたものが明るみに出てしまった一瞬だった。みんなは結末を見て納得していた。


「隠しても無駄だったな!イヴァン!これ、ジークさんが言ってた預言のまんまじゃねぇか。みんな生き残って終戦を迎えるさ。だけど、生き残る代わりに元凶を取り逃がすんだ。んで、良心の呵責に苛まれたお前は自分一人だけ残ってみんなを地球に返す。一人になった所で元凶にお前は殺される。お前が向かう場所が分かってたが故に凶行に及ぶんだ。」

「身代わりの魔法は時間が経てば経つ程に難しくなる。最長老様は婿殿を助けよとお命じになられたが、この場合、アメリアさんの身代わりが間に合わずイヴァン博士自身が命を落とすんだろうな。この後どうなるか悪いけど、探らせて貰うよ?」

「……………」


 ぐりんぐりんと頭を捏ねくり回される感覚がして再び吐き気に襲われた。頼むから、ゆ、許して!


「ふーん、結果あなたは死ぬことになり、ミッションは失敗してアメリアさんが唯一生き残るのがこのルートな訳だ。でも、これ陛下がどれだけ悲しむか分かってるんでしょうね!イヴァン博士。ひょっとして、最初からこのルートに誘導する為にリンちゃんに持ちかけたんじゃないですか?」


 口で話せないから首を横に振った。


「通りで最高峰の頭脳をちゃんと仲間に入れる様に言い渡される訳だ。で、今度はそいつをスカウトしに行くって訳だ。どんな奴か知ってるのか?エド。」

「……………それが、今向かっている浮遊大陸アルカジーニャにいる数多くのアラブの王族のシークなんだが、ピール皇太子殿下と言われる若干10歳の天才ハッカーなんだよ。他も当たったが皆断られたからこの皇子様にすがるしかないし、血は繋がって無くてもミサトの母上が再婚された場所故に姉上を守る為にも是非にって言われてしまってね。此方としても受諾するしかなかったよ……………」

「ちょっと待て。まさかとは思うが。」

「そう、あの婿殿を守る切り札が僅か10歳のお子様に委ねられる事になったんだ。あのジーク様が婿殿の命と孫娘の幸せを諦めるなんて選択肢は最初から無かった事になるな。」

「いやはや、流石に最長老様だなぁ。念には念をって言う見本を見せて貰ったよ!」

「!?」

「流石にこいつも年貢の納め時じゃあないか?いい加減にしろよって事だ!自業自得だ。諦めろ!」

「……………」


 アークからはボディブローを決められるし、ルーは一向に頭の中をこねくり回すの辞めてくれないしで。もうね、こいつら案じているのか痛めつけたいのかさっぱりだ!ただ、今回の一件で分かった事がある。普段大人しい奴ほど怒らせたら恐ろしい。ルーがその典型ってのは分かった気がした。みんな俺を無視してどうしようとか話ししてるんだし。お願いだからはよ解放しろよ!と思いつつ俺が意識を手放すのはそう時間がかからなかったと思う。



 その後、僕たちはイヴァン博士の聞き取り調査の後本人失神してるの気付かずにやいのやいのと話してて。うるさいなぁと出てきた幸太郎さんに見つかり、食堂に連行されてアメリアさんの前で説教を受けていた。元凶は誰だって事になって。庇おうとしたエドを制止して僕は。


「すいません。僕がやりました。」


 その途端、飛んで来たのは平手打ちだ。僕は生まれて初めて殴られる痛みを感じた。


「お前な?確かに魔法は万能だと認めるよ。だけど、魔法は友人に仕向けて苦しめるものなのか?ジークもお前にそんな使い方をしろと教えてたのか?どっちかと言うと悪用するのを嫌ってたんじゃないのか?そんな状態でイヴァンの事少しでも気にかけたのか?誰一人として気にかけなかったから失神するまで痛めつけてることに気がつかなかったんじゃないのか?こんな状態で責められて誰が心を開くなんて思うんだ!ミサトちゃんがこの事知ったらどれだけ悲しむか。お前たちちったぁ頭を冷やして来い!!」

「本当にすいませんでした。」

「……………謝る相手が違うぞ。目が覚めたらイヴァンに真っ先に謝りに行って来い!良いな?アメリアさん、悪いが、少しイヴァンの様子を見に行きたい。一緒に来て貰って構わないだろうか?」

「かしこまりました。」

「……………」

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