エド、魔法を習う。
まあ、皇太子の件で受諾させられたその日の内に、僕たちは潜伏していた例の場所に戻ってきた。何でも、ルーが導師である為に、フェロモンの効果がロンドン全域って馬鹿げた広範囲って事で。流石に、都市部ではまずいのは分かった。じゃあ、何処に行こうかって話になって、結局ここに落ち着いた。でも、これでも人がいない可能性が排除できない。という事で、この中でウォーターボールを水滴程度の小ささに形成してその中に水牢を作ってその中で子作りしましょう。って事で。嘘だろうって思った。でこの場合の効果はどんな状態なんだと聞いたら。
「うーん。僕も初めてだから正確には言えないけどね。これでここの水が軟水から硬水に変わる程度かなぁ。いつも飲んでる水がいつもより美味しいって感じる程度だから大丈夫だと思うんだ。」
うーん。水質変える程度ってね簡単に言うけどね。大概だなぁ。って思った。そりゃあね、妊娠出来る期間が100年に1度って言われるのも納得がいったよ。エルフが事に及べばそこの自然形態に魔力に応じて変化を齎すとなればね。普通のエルフだとルー程影響出ないらしいが、そこは流石に精霊王持ち。魔力も強大ならその効果範囲も影響も自然にとっては迷惑レベルだと言うのだ。
でも、一度入ってしまうと中は凄く広々としていた。毎度毎度感心させられるが呼吸も出来るし広さも十分あった。本当に凄いなぁって思ってたら。
「まだ少し時間があるから魔法。学んでみませんか?」
「魔法?僕でも魔法使えるのか?」
「もちろん。天変地異以降に生まれた子供達はみんな魔力をもって生まれているからエドもコツを掴めば使える様になるよ。まず、僕と手と手を取ってくれるか?」
「あ、ああ。」
僕はルーの手を取った。向かい合って手を繋いだ。
「じゃあ、まずは僕が魔力を流してみるね。エドの右手から左手に魔力を通すね。」
ルーの魔力が右手から流れて来た。少し強めに流しているらしく、自分の中で何かがゆらりと。確かな感触を得た。何かがツンツンと触れる感触だ。
「何かわかったかい?」
「ああ、体の中で何かがツンツンしているのが分かるよ。ルーだろう?それ。で、揺らめいたってのは。」
「そう。それはエドの魔力なんだよ。今度は僕の魔力に着いて来てみるかい?」
「そんな事が出来るのか?」
「そうだね。意識して押し出す感覚でやってみると良いよ。左手から流してみて。」
押し出す、押し出すねぇ。随分簡単に言うなぁって思ってた。なかなか上手くいかない。
「どうも、ピンと来ていないみたいだね。大丈夫、僕が強引に流してみるから意識して付いてきて。」
困惑しきりとはこの事で。あっという間に左手までルーの魔力が侵食してた。左手の先端をツンツンと合図をしてからルーが魔力を貫通させた。まるで、決壊したダムみたいで。あっという間に僕の魔力もルーの体の中で流れているのが分かった。
「凄い!僕たちの体をクルクル回ってるのが分かる。」
「へえ。コツを掴むの早いね。エド。普通なら、この訓練初めて1週間位しないと此処までにはならないけど多分、相性が合ってるから抵抗感なくいけたみたいだね。それに、魔法適正も回復系の様だね。」
「そんな事まで分かるのか。ルー。」
「もちろん。僕の得意としているのは妖精魔法だけど、ここだけの話。月に着いたら妖精魔法は一切使えなくなるんだ。これは、以前、僕が小さい頃にジーク様から聞いたんだ。先駆者でさえ使えない。理由は明らかで、そもそも月は人工物で溢れていてね。元から酸素が無く生物自体が生きられない環境下だからだ。後のみんなは近接系なり遠距離系の別の攻撃手段あるけどね。僕はアルビノだったから、室内での訓練は出来ても室外じゃ火傷が絶えないって理由でね。なので、訓練も射撃以外は余りやらせて貰えなかったんだ。だから、その代わりに魔法を勉強しまくって今に至るんだよ。アルビノじゃなかったらもうちょっとまともな軍人になれたかもしれないんだけどね。」
「それでも、そなたの魔法で僕は大いに助かってるよ。ありがとう。ルー。」
「どういたしまして。それじゃ、まず、回復魔法の基本。ヒールを覚えて練習してみる所からだけど、まずは、魔力を自分で練る所から練習しないといけないんだ。僕の魔力に分かりやすく色を付けるからよく見ててね。」
「ああ、分かった。」
ルーは僕の左手を取って手のひらを上にした。次に、ルーの魔力が右手から伝わってきて手のひらの上に黄色く色を付けられたルーの魔力が左手に発現した。最初は小さく。どんどん渦を巻きながら練られた。ひときわ大きく光り輝いた瞬間。
「今だよ。『ヒール!』って言いながら左手の玉を指を鳴らして割ってくれるかい?」
その指示は凄く的確で。僕は言われるがままに詠唱してパチンと言う音と共に指を鳴らして光の玉を割った。するとどうだろう。僕自身が白く淡く光った後、すぐに光が収まった。
「凄いなぁ。エド!初めて魔法詠唱したのに成功させるなんて。今、ちゃんとヒールかかってたよ!」
「ちょっと待って。何故、そなたの魔力で僕がヒールを発動出来るのであろうか?」
「…それはね、エドには内緒で魔力供与してるからだよ。魔力供与出来るのは僕の場合はエドだけなんだ。僕が心からお慕い申し上げているからね。」
「ルー。そなたは僕の琴線に触れてばかりだ。そんな可愛い事を言って。余程、襲って欲しいと見える。」
「ああ、分かってくれるのか?じゃあ、こうしよう。僕に魔力を循環させながら僕を抱いてみてくれるかい?今のエドなら非常に興味を惹かれるんじゃないかな?」
って言うので、半信半疑でやってみた。そして、気がついた。外側だけでなく体の中からも刺激されているんだろうか。何時もの3割り増しも色っぽい事に。くてんと僕の腕の中に収まったルーがどんどん魔性を帯びてきている気がした。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫。実はね、今僕に起きた事がこの後エドに起こるんだ。エルフの女性に支配される状態を疑似的に再現してみたんだ。」
「誠か?」
「うん。エドは魔法に対する免疫が無いから、僕もなるべくエドの意識を保てる様にはするつもりだけど、僕の暴走した魔力に晒される事になるから心配になってね。本来、魔法を覚えるのって自転車に乗れる様になる過程に似てるんだ。最初の内は補助輪無いと乗れないだろう?でも、少しずつ乗れる様になっていくと補助輪取って乗る様になっていくのと一緒なんだ。ここの所、ゴタゴタ続いているからね。せっかくだからエドも戦力アップしても良いと思ったって言うのもあるかな?」
「成る程な。今後の事を考えるなら戦力の一つを選択肢に加えるって言うのも悪くはないな。」
「うん。しかも回復魔法を覚えるとなればかなり強みになると思うんだ。僕も引き続き付き合うから、さっき、僕がさっき教えた通りに少しずつ自分の魔力に変えていってごらん?」
僕はこの後ルーの指導を受けながら練習をして過ごした。ご飯を食べて色々話に花が咲いた。タイミングが掴め出した所でルーは水にヒールウォーターの回復効果を付け、美しい羽と共に精霊も現れて僕はたちまち虜になった。確かに意識はあったけど、支配下に陥ってる僕の体はルーの膨大過ぎる魔力に抗えず、意識を手放しては戻し。を繰り返した。快楽に支配され続けるのが癪だったので、僕はこっそり僕自身の魔力を循環させながら解放の時を待つ事にした。時間が経てば経つ程に僕の魔力が鍛えられているみたいで、最初はすずめの涙程しかなかった僕の魔力も加速度的に増えている様だった。変化が起きたのは2日目の晩になってからだった。まだ、支配下にある筈だったのに驚いた事に自力で支配下を解いてしまってたのだ。見ればまだ側に妖精達がルーの側を飛び回ってた。ルーはポロポロと泣いていた。ルーが故意に魔力を弱めたのは明らかで。ルーは僕にしがみつきながらごめんなさいと謝りだした。僕は腕を背中に回してルーの頭を撫でながら理由を聞いた。すると。
「ごめんなさい、エド。僕、気がついてしまったんだ。僕が好きなのは道具と化したエドじゃなくて慈しみをもって僕にしか見せない優しい目で僕と言う人間をありのままに受け入れてくれる何時ものエドだって分かったから徐々に魔力を弱めたんだ。でも、こんなわがまま言ってたら僕、子供出来ないかもしれない。ごめんなさい。エド。本当にごめんなさい……………」
「…案ずるな。出来なければその時はその時って思えば良いではないか。」
「でも……………」
「奇遇だな。実は僕もなんだ。僕の大事なお人をこんな尊厳を無視した形で抱きたくないって思ったから僕はこっそり魔力を循環させて解放されるその時を待っていたんだ。もちろん、分かってるだろう?」
ルーの頭が縦に振られた。恐らく、僕の意図に気がついてくれたのであろう。
「心配しなくても時間ならまだある。ここからは何時ものようにそなたを愛でるとしよう。だから、もう泣くでない。そなたの気持ちは痛い程伝わった故。」
ここからは僕の意思でただただルーを愛し続けた。気がつけば、妖精達は次々と自らの意思でルーの中に入っていった。多分、妖精達もルーの気持ちを汲み取ってくれたのは一目瞭然で。ルーのフェロモンが落ち着くまで僕は自重するのを辞めた。猛烈に空腹に襲われたらぐったりしているルーにご飯を食べさせてから自分も腹を満たした。僕の腕の中で幸せそうに微笑んでくれるルーを見るだけで僕はただただそこにある幸せを噛み締めていた。
そして、フェロモンが出てこないのを確認してから僕たちは水牢を出てルーは魔法を消した。ずっと水に浸かっていたからどうなるかと思ったが、浸かっている水自体が回復能力が付加されていた水だったからなんともない。ルーは温風を出して乾かしてくれてそこから私服に着替えてローグフェルグに戻ってようやっと戦線復帰を果たす事にした。




